冬の到来、ロンドンはいよいよ暗くて寒い季節になってきました。ハイストリートのクリスマス・イルミネーションは華やかですが、それとは裏腹に、この時期の私は、ちょっと油断すると、大好きなパブに立ち寄ることも少なくなり、会社と家の往復、休日も家にこもりがちになってしまう傾向にあります。寒いのが大の苦手なんです(笑)。

でも、これは私だけに限ったことではなく、ロンドンに住んでいる多くの人々の傾向であるようにも思います。この時期になると、やはり天候や日照時間が人々の気持ちに大きな影響を与えているのだなあとつくづく感じます。

そんな訳で、冬の間の私の裏テーマは、「外に出ること」です。 ぽかぽかでぬくぬくの部屋を敢えて飛び出して、アクティブに!日々の生活を盛り上げようと心掛けています。逆にそうでもしないと、ロンドンの暗くて寒くて長〜い冬は乗り切れません!

こんなささやかな思いを胸に秘めつつ、先日、スピタルフィールズ・マーケットを散策してきました。スピタルフィールズ・マーケットは、イースト・ロンドンにあるロンドンっ子に人気のマーケットで、日によって、アンティークや古着、工芸品などのマーケットが出ます。そこで、今回、興味深いものを発見しました。

あるアンティークを扱う露店で、とても古い写真を見つけました。もちろん、モノクロ写真ばかりですが、ほとんどのものが、何と今から100年以上も前に写されたものです。家族写真や記念写真などが大半で、特別な写真ではないのですが、それが妙にリアルで、その頃の人々の普通の生活をそのまま垣間みるような不思議な感じがしました。通常、このような古い写真は、今となっては、美術館や博物館などで作品や資料として見ることが多く、それ以外はあまりお目にかかる機会がないからかもしれません。

また、これらの写真に加えて、手のひらサイズのポートレートの写真カードがたくさんありました。なかなか可愛らしいカードで、老若男女を問わず、実に様々な人たちが写っています。お店の人にこれは何かと聞いてみたところ、これはCabinet Cardと呼ばれていて、19世紀の後半頃にヨーロッパでとても流行した写真カードだと教えてくれました。

調べてみたところ、Cabinet Cardは、1860年頃から段々とポピュラーになり、1890年頃まで多く作られたそうです。当時は、写真技術は発明されていたものの、普通の個人がカメラを持てる時代ではありませんでした。そのため、写真館に行って写真を撮ってもらい、そこでプリントをしてもらうことが多くあったようです。

そんな中で、このCabinet Cardは、手軽に持ち運べたり、人々に差し上げたりできることから、当時の庶民の間で、とても人気になったとのことでした。
しかしながら、20世紀の初頭に入ると、フィルム技術の発達により、個人がカメラを持てる時代となっていきます。それとともにこのCabinet Cardの需要も少なくなり、段々と姿を消していってしまったとのことです。

ロンドンには、スピタルフィールズ・マーケットの他にもたくさんのアンティーク・マーケットがあります。通常、アンティーク・マーケットと言えば、食器や家具などが取り扱われていることが多いですが、よく見てみると、様々なものを見つけることができます。カメラや写真というテーマで、アンティーク・マーケットをめぐってみるのも興味深いのではないでしょうか。思いがけない素敵な掘り出しものに出会えるかもしれません。


Spitalfields Market
Brushfield Street,
Spitalfields

London E1
http://www.spitalfields.co.uk/


スピタルフィールズ・マーケットの様子。ブラブラしているだけでもとても楽しい。


古い写真を見つけた露店。写真の他にアンティークの蓄音機を取り扱っている。


たくさんの古い写真とCabinet Card。値段は様々だが、大抵、数枚のセットを数ポンドで買える。


アンティークの写真アルバムを発見。装飾にとても手が混んでいて、ゴージャス。(写真ではディテールが伝わりにくいのが残念!)


別のカメラの露店。もしかしたら、掘り出し物があるかも!