- IINO LONDON
ながいまさし
- 2015.07.14
こんにちは。今回は写真とは関係のない話題です。この春にロンドンマラソンに出場しました! 私の長年の夢であったフルマラソンへの挑戦を果たすことができました。その体験について書きたいと思います。お付き合いいただけると幸いです。
2015年4月26日にロンドンマラソンが開催されました。ロンドンマラソンは、世界6大マラソンの一つとして知られ、出走者数は約3万6千人、沿道の観衆は50万人にも上ります。このロンドンマラソンは仮装して走る人が多いことと、チャリティ活動が非常に盛んなことで有名です。
日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、イギリスでは、チャリティのためにマラソンを走ることはとても一般的なことです。通常、出走者はチャリティ団体に属し、様々な方々から寄付を募ることになります。フルマラソンのみならず、自分の体力に合わせて、5キロ走や10キロ走の大会でもチャリティのために走る人々がいます。
以前は、私もマラソン+チャリティのことを知らなかったのですが、数年前に知人が10キロ走にチャリティ枠で出場したのをきっかけに、このような活動の存在を知るようになりました。ちなみに、その方は乳癌の研究のためのチャリティのために走りました。
初めての記念すべきフルマラソン出場ということもあり、私もチャリティ枠で、ロンドンマラソンにエントリーすることを決めました。たくさんのチャリティがあるのですが、ロンドンマラソンの場合、大抵の場合、チャリティの出走者は最低でも2000ポンド(約38〜40万円)の寄付を集める必要があります。軽い気持ちや思いつきでははじめられない額です。
私は、2014年9月頃に、ロンドンマラソンのウェブサイトを通じてエントリーをしました。チャリティ枠で参加する場合、まず自分が所属するチャリティ団体を決める必要があります。ウェブサイトには心臓や脳の病気、癌、貧困、子供の問題など、たくさんのチャリティ団体が紹介され、参加者を募集しています。
私は、数ある中から、世界中の恵まれない子供たちのために活動している「セーブ・ザ・チルドレン」というチャリティ団体を選びました。私も2013年に初めての子供を授かったこともあり、微力ではありますが世界中の子供達のために何かできればという思いがありました。
チャリティ団体を決めた後、参加の申し込みをします。これは単なる申し込みというよりかは、審査のような感じを受けました。つまり、チャリティに参加する意気込みと目標額を集めるためにどのような活動をするかなどを具体的に述べなければなりません。私もいろいろと知恵を絞って自分なりの意気込みと目標額達成のための方法を書きました。
それから数週間ほどが経ち、マラソンのエントリーをしたことを忘れてしまっていた頃、1通のメールが届き、私の申し込みが通ったことを知りました。ここで、実際にロンドンマラソンに出場することがグッと現実的になり、いよいよ気合が入りました。これが10月中旬頃であったと思います。
これからマラソンを走るためのトレーニングと寄付を募るためのチャリティ活動のダブルのチャレンジが幕を明けました。
チャリティについては、職業柄もあって1分ほどの短いプロモーションビデオを作ることにしました。撮影は、同僚のジェレミーと友人でフォトグラファーの福田ユウタさんに手伝ってもらいました。以下にリンクとなりますので、是非、ご覧になっていただけると嬉しいです。
このビデオのリンクをメールに添付して、知人らに送付したりしながら、チャリティを募りました。
しかしながら、チャリティ活動をはじめた当初は、想像していたよりもはるかに人々のリアクションが薄いので、かなりショックで少なからず落ち込みました。もちろん、寄付額も上がりません。「このままでは、絶対に2000ポンドなんて集まらない」と本気で思いました。
今から思えばですが、まだロンドンマラソンまで半年ほどの時間があったので、人々ものんびりしていた状況であったのだと思います。
トレーニングの方は、10月下旬頃から開始しました。ちょうどロンドンマラソンまで半年です。日頃、全く走っていなかったので、まずは週に3〜4回、30分間ほどの時間を走るようにしました。走る習慣を生活の中に取り込むためです。これを数週間続けた後、走る時間を少しずつ伸ばしていきました。
トレーニングをはじめて1〜2ヶ月間ほどは、どんどん走る時間を伸ばすことができました。年が明けて1月頃には、平日の仕事が終わった後に週数回は10キロ、週末の土日のどちらかは20キロを走ることができるようになっていました。とても順調に思っていたのですが、実は体には徐々に疲労が蓄積されていたようです。慢性的にふくらはぎが張って痛い状況が続いていました。それでも、トレーニングのペースを緩めず走り続けました。
2月上旬のとても寒かった週末のある日、この日も20キロを走っていたのですが、10キロちょっと越えた辺りで、急に左脚の付け根(股関節の辺り)に鋭い痛みを感じました。針に刺されたような痛みです。かなりの激痛だったのですが、その時の私にはトレーニングを緩めるという意識は無く、無理してその日の目標の20キロを走り終えました。
この痛みはすぐに引くと勝手に楽観視していたのですが、予想に反して、次に走ろうと思ったときは、痛みが激しくてほぼ走れない状況になってしまいました。おそらく、それまでオーバーペースでトレーニングを続けてきた結果、ついに体が悲鳴をあげたのだと思います。
それから少しの間、トレーニングを休み、その後、ゆっくりとしたペースでトレーニングを開始しました。しかしながら、15キロほどを走ると同じ箇所に痛みが発生するようになってしまいました。そのように痛みが生じてしまった場合は無理をして走るのをやめて数日間は休むようにしました。それ以降、なんとかトレーニングを続けることはできましたが、いつもこの左脚の付け根に不安を感じてのトレーニングとなりました。トレーニング方法はもちろんのこと、ライニングフォームやシューズなどの用具についてもいろいろと見直しをしました。
ロンドンマラソンの1ヶ月前に練習を兼ねて、ハーフマラソンの大会に出場することにしました。初レースです。正直、とても脚の痛みが発生するのではないかと常に不安だったのですが、幸いなことに軽い痛みが少し発生するだけに留まり、無事に目標タイムの2時間を切って完走することができました! これは大きな自信になりました。
チャリティ活動については、この時点で1400ポンドまで集まっていました。あと1ヶ月で、目標の2000ポンドまで達成できるのかは、正直、不安でした。というのも、もうほぼすべての人々に声をかけてしまっていたからです。もちろん、すべての人々がチャリティをしてくれたわけではないですが、これ以上、どうやってチャリティを募ったらいいのだろう、と少し途方に暮れていました。
とは言え、弱音を吐いていてもはじまりません。再度、人々に寄付を呼びかけました。
幸いなことに、チャリティの方はロンドンマラソンまであと数日に迫った4月21日に、目標額の2000ポンドを達成することができました! 嬉しさと同時にある種の責任も感じ、一層身が引き締まる思いがしました。
そして、4月26日、ロンドンマラソン当日となりました。
これまで頑張ってきた成果を試す日がついに来たかと思うととても緊張しました。左脚に大きな不安を抱えての出走となりましたが、大胆にも目標タイムを4時間以内(サブフォー)に設定しました。もし、途中で脚の痛みが生じたら、タイムはすっぱりと諦めて目標を完走に切り替えるつもりでした。チャリティをしてくださった方々のためにも、最低でも完走はしなければならないと強く心に思っていました。大袈裟な言い方かもしれませんが、這ってでもゴールするという意気込みでした。
小雨交じりの肌寒い日でしたが、朝の10時過ぎにいよいよスタートしました。これまで抑えていた気持ちが弾けて一気に解放されたような爽快感を覚えました。自然と走るスピードが上がってしまいます。沿道ではたくさんの人々が応援してくれています。ゼッケンの名前を見て、私の名前を叫んで応援してくれる人もたくさんいました。
でも、前半の作戦はとにかくセーブすることでした。ペースを守り、早く走り過ぎないように心がけ気をつかいました。オーバーペースになると、後半に脚がもたなくなると分かっていたからです。とにかく脚をセーブすること。体に余力を残して走ることを心がけました。
30キロまでは、順調にペースを刻みました。体も軽く、走っていて気持ちよかったです。幸い、左脚の付け根の痛みも生じていませんでした。このままゴールまで走り抜けたいと思いました。
練習では、最長で30キロまで走ったことがありました。そのため、これ以降は未知の世界です。
30キロを過ぎてからは、もうあまり何も考えずに走りました。しばらくは特に何も無かったのですが、さすがに35キロを過ぎた辺りから体に異変を感じはじめました。脚がどんどん鉛のように重くなっていくのです。例えるなら、全身の血液がすべて脚に下がってしまったような感覚です。脚が重くて痛くて辛くなりました。脚が上がらないとはまさにこのことです。
でも、あと少しだと気力を振り絞り、あと残り6キロ、あと残り5キロと1キロ1キロをカウントしながら走りました。
40キロ地点に私の応援のために妻をはじめ何人かの友人が来てくれていることを知っていました。そのため、その応援を楽しみに40キロまで頑張れ!と自分を励ましながら走りました。
40キロ地点で妻や友人が応援してくれた時、本当はすごく疲れていたのですが、私はよいところを見せようとして、疲れを見せずにしっかりと走るように頑張りました。無事にその地点を格好良く(笑)通過することができたのですが、そこからの2.195キロが本当に辛かったです。
もう脚が本当に重くて痛くて、一歩一歩が辛かったです。スピードも落ちてきたせいか、走っても走ってもなかなか前に進みません。
最後の1キロは、大幅にペースダウンしました。それでも歩くことはせずに最後まで何とか走りきろうと思いました。もう体が走ることを拒絶しているのが分かりました。体が、ありとあらゆる方法で、私を止めようとしていることが分かりました。これはある種の体の防御本能でしょう。それでも、とにかく走り続けました。この辺りで倒れてしまっている人を何人か見かけました。あとほんの少しなのに、本当にかわいそうだと思いました。でもここで倒れる人がいるということも理解できます。多くの人々が限界すれすれで走っているのです。
そして、ゴール!!!
ゴールした時は、嬉しさというよりかは、完走を果たすことができたという安堵の気持ちでいっぱいでした。そして、やっと止まることができる、という気持ちでした。
タイムは、何と3時間52分53秒!
目標の4時間以内(サブフォー)を達成することができました。
自分でも初マラソンで3時間台を達成できたのは、とても上出来で自分を褒めてあげたい気持ちになりました。素晴らしいことだと思いました。
この日は応援に駆けつけてくれた友人たちと、ハンバーガーを食べて、ミルクシェイクで乾杯をしました。これは私が、以前から計画していたプランです。ハンバーガーもミルクシェイクも、本当に美味しかったです。皆に祝福されて、完走できたことの嬉しさがこみ上げてきました。
チャリティの方は、その後、更に募金額が増え、最終的には2366ポンドが集まりました。目標額をはるかに上回ることができ、自分としては大成功でした。サポートをしてくださった方々に感謝いたします。
正直、マラソンのトレーニングもチャリティ活動も、想像していた通り、もしくはそれ以上に大変でした。でもそれが故に、このチャレンジがとても素晴らしい思い出となりました。そして、たくさんのことを学ぶことができたと思います。
とりわけ、チャリティ活動については、全くのはじめての経験であったので、とても戸惑いがありました。しかしながら、チャリティを背負って走ったからこそ、たくさんの方々からのサポートを感じることができ、自分一人のためだけではなく、みんなのために走っているという気持ちが強くありました。それが、練習の際も本番の際にもとても励みになりました。こうして無事に完走できたのは、様々な方々のサポートがあったからです。
決して簡単なことではないとは思いますが、私としては、もしこれから初マラソンにチャレンジされる方がいらっしゃるとしたら、是非、チャリティ枠で走ってみられることをおすすめします。チャリティを通じて、人々のサポートを感じて走ることによって大きな力をもらい、そしてたくさんの気づきを得ることができるような気がします。(東京マラソンにもチャリティ枠があるそうです。) 興味がある方は、是非、チャレンジしてみてください。
ゴール直後、メダルを首から下げて笑顔満面のわたし!
(すみません。この日は、レースに集中し過ぎるあまり、あまりご紹介できる写真が残っておりませんでした...)
London Marathon
https://www.virginmoneylondonmarathon.com/en-gb/
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お知らせがあります。
少し急なお知らせですが、実は今回のコラムをもちまして、私のコラムは終了とさせていただきます。次回からは、私のロンドンオフィスの同僚の宇山がこのコラムを担当いたします。
これまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
ながいまさし - IINO LONDON
イイノ・プロダクション ロンドン代表。
通称、まさ。
神奈川県川崎市出身。慶応大学卒業。1998年、イイノ・メディアプロ入社。2006年より、ロンドンをベースに海外から日本、日本から英国・ヨーロッパへの撮影プロデュースを行っている。趣味は、旅行とテニス。自他ともに認める爽やかボーイ?ネコ好き。
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