先日、あるテレビのドキュメンタリー・旅番組の撮影のためにアイルランドへ行きました。首都のダブリンや絶景の名所として世界的にも有名なモハーの崖などを訪れました。今回は、その時のインプレッションをレポートしたいと思います。

さて、問題です。アイルランドは、どこに位置しているでしょう?

正解はイギリスの西側です。大きさは北海道よりもひと回り大きいくらいの島国となります。イギリスの一部だと思っている方がいらっしゃるかもしれませんが、それは半分正解。アイルランドは、北アイルランドと(南)アイルランドに分かれていて、北側はイギリスの一部になりますが、南側はアイルランド共和国(以下、アイルランド)であり、独立した国家となります。ちなみにイギリスは、イングランド、スコットランド、ウェールズそして北アイルランドの4つが集まってひとつの国家を形成しています。なので、イギリスの正式名称は、Great Britain and Northern Irelandと言います。

イギリスとアイルランドは、距離的にも近いし、どちらも英語が母国語として話されているので、同じような国・文化のイメージがありますが、行ってみてやはり違う国なのだと認識できました。特に根拠はないのですが、私はアイルランドでもイギリスのポンドが通貨として使われているものと勝手に思い込んでいました。しかし、アイルランドではユーロが使われていて、少し意外でした。

民族的にもイギリスはゲルマン民族系のアングロ・サクソン人が主ですが、アイルランドはケルト民族に主なルーツがあるそうです。また、宗教的にもアイルランドでは人口の8~9割がカトリック教徒だそうで、これに対し、イギリスは6~7割がイギリス国教会(プロテスタント)、カトリック教徒は少数派で1割にも満たないそうです。

アイルランドの印象は、ずばり「人々が親切で温かい」こと。とても好印象なイメージを受けました。今回も撮影でたくさんのロケ地を訪れましたが、どこでも人々がとても協力的で、私としてはとてもありがたかったです。

通常、見知らぬ土地で撮影を行なう場合は、まずはその地域のフィルムコミッションに連絡をとることが多いです。アイルランドにも地域ごとにいくつかのフィルムコミッションがあって、それらに連絡を取りました。フィルムコミッションの方々とは、メールでのやり取りが多かったのですが、とても親身になって相談にのってくださり、ひとつ質問をする度にたくさんの回答やアドバイスを頂くことができました。様々な人達を紹介してくださり、その方々からもメールが入り、そのうち誰がどこの誰だかよく分からなくなってしまったほどです。(苦笑)

撮影場所の中でも特に印象深かったのは、ゴールウェイの牡蠣(料理)とモハーの崖という名勝地です。
首都のダブリンも緑豊かで素敵でしたが、どちらかというと地方の方がアイルランドの素朴さをより感じることができ、私は好きです。
西海岸にあるゴールウェイという町は、有数の牡蠣の産地として知られ、毎年9月に国際オイスターフェスティバルが開かれる世界的にも有名な場所です。この地域の牡蠣は、日本で穫れる細長い形をしたものと異なり、丸い形をしています。世界中にはたくさんの牡蠣の産地はありますが、このゴールウェイ産の牡蠣は独特で、世界で一番美味しいと賞賛する人もたくさんいると聞きます。

我々撮影隊は、このゴールウェイから、南に20キロほどのところにあるモランズ・オイスター・コテージというレストランを訪れました。実は、このお店、牡蠣好きの私が事前下見でアイルランドを訪れた際にランチのために立ち寄った場所でした。あまりにも美味しくて素敵なお店だったので、そのことをディレクターに話したら(当初牡蠣関連の撮影の予定はなかったのですが)、急遽、ここでも撮影しましょう、ということになったのです。もちろん、レストランの若旦那もそれを快諾してくださり、撮影はGOとなりました。

お店の人々の協力のおかげもあって、撮影・取材は無事に終了。我々はランチも兼ねて、ここで食事をすることにしました。
クルーもみんな大喜び。ここの牡蠣は天然物で、世界中からわざわざこれを食べるために人々が集まってくるそうです。数多くの有名人も訪れていて、なんと日本の天皇陛下も訪れたことがあるとか。店内にはその時の写真が飾ってありました。
牡蠣は味が濃くて、少し歯ごたえがあります。これまで食べてきた牡蠣と少し違っていましたが、まさに絶品。この他のシーフード・チャウダー、スモーク・サーモンなども頂きましたが、どれもこれもばっちり美味しかったです。
牡蠣やシーフード好きの方には、とてもおすすめです。アイルランドに行くことがありましたら、是非、足を伸ばしてみてください。首都ダブリンからは、車で3~4時間ほどありますが、個人的にはわざわざ行く価値があると思います。
ちなみにアイルランドでは、牡蠣と一緒にギネス(アイルランド産の有名な黒ビール)を飲むのがオツだそうです。

Moran's Oyster Cottage
http://www.moransoystercottage.com/

モハーの崖は、ゴールウェイと同じく西海岸にあります。ここは、海面から100メートル以上もの絶壁の崖が切り立っていて、アイルランドでは、知らない人がいないほど絶景で有名な場所です。また、モハーの崖は、天気が悪いことでも有名でした。そこに撮影に行くことを告げると、多くの人から晴れたらいいね、と言われたほどです。と言うのも、雨や曇りだと霧が出て、景色が奇麗に見えないらしいのです。
撮影日の天気は、風がとても強かったのですが、ラッキーなことに晴れ! 感動的な崖の勇姿を見ることができ、撮影は大成功でした。

Cliffs of Moher
http://www.cliffsofmoher.ie/

モハーの崖が最後のロケ地で、ほぼすべてが順調であったロケ撮影でしたが、最後にちょっとした落とし穴が待っていました。ダブリンに向けて、モハーの崖を出発した矢先、ロケバスのタイヤがパンクしてしまったのです。しかも、だだっ広い草原を走る田舎道の真ん中で...。 結局、そこで6時間ほど足止めを食らい、ダブリンに到着した頃はもう深夜でした...。 でも、今から思えば、撮影終了後のパンクだったことが不幸中の幸いだなと思います。もし、撮影中だったとしたら、すべての香盤がバラバラになってしまっていたことだろうし、とてもゾッとします。貴重な経験となりました。

ともあれ、アイルランドのロケ、とても良かったです。アイルランドに留学していた日本人の知人がいるのですが、彼女はアイルランド大好き♥と、よく言っていたことを思い出しました。その意味も今では分かる気がします。月並みですが、とても素敵な場所だと思いました。その理由は、やはり人です。みんな温かい。今回は、アイルランドの人たちの温かさに支えられて、撮影がうまくいったように思います。


モハーの崖。 崖の縁を歩くことができますが、柵も何も無し。突風は吹いてるし、本気で恐いです。(基本、立ち入り禁止のエリアのようですが、みんな平気で入っています...。)


モランズ・オイスター・コテージの自慢の牡蠣! なんと天然物。この美味しさが伝えられないのが残念。


車がパンクしてしまった時に、近くにいたお馬さん。とっても癒されました〜。


やはり、アイルランドと言えば、ギネス! 仕事終わりの一杯は、最高に美味しかったです。アイルランド最古のパブと言われるダブリンのブレズン・ヘッドにて。