- Photographer
Munetaka Tokuyama
- 2015.07.28
時間が経ったが統括しようと思う。
改めて「01」展にお越し下さいました皆様、ご紹介くださいました各メディア様、素敵なお花や贈り物、メッセージを頂いた皆様に誠に感謝いたします。結果8日間の展示で500名を有に超えるという想像以上の方々に足を運んで頂き、そして多くの方々と再会する事ができました。
私は物事にいつも疑問を持って生きるひねくれた人間です。今回の件で言うと、写真展のあり方にいつも疑問を持っていました。規格内のサイズ、フレームに収まる作品の中での展示はとても完成された写真展の形ではあると思います。しかし、逆を言えばその規格内のサイズや世界に閉じ込められた、制限された中でしか表現できない。絵ならばサイズを気にせず壁いっぱいに好きなだけ思うがままに描きもっと自由な展示ができるが、写真は印刷というフィルター通す必要がある。その為とても制限がかかる。
そんな事を考え「写真展には興味がない」と調子こいて周囲に公言していた私は、ソノアイダ#01という場所に出会い、そして展示機会を頂き、「普通の写真展ではできない事をやろう」と決め、もうその日のうちに展示プランを思いつきました。そのプランを実現する為に、今回の全てを仕切ってくれたデザイナーの松田卓也さんにすぐ相談しに行き、50分の1の模型制作し導きだした内容は空間を一杯に使い、写真点数5枚のみ、一つの作品が横2600cm X 縦2000cm以上の規格外サイズ、そしてそれを壁に貼るのではなく物として存在させる。その為には規格外サイズのパネル、フレームも自ら制作し、ビルボードを印刷する業者を入れ、それを貼る職人さんの力を借りる必要がありました。そしてそれらにかかる想定費用を考えたら、すぐ嫌になり辞めたくなり呑みにいきました。
加えて今回の展示が決まったのは、なんと展示開始のひと月前。時間も人員も何もないながらも「やってしまえ!」と始動すると、不思議な事に手伝ってくれる仲間が一人、一人と現れた。アーティスト、プロダクトデザイナー、建築家、モデル、フォトグラファー、なんでこのメンツが此処で一緒に作業してるんだろう? と私自身が不思議に感じる程でした。そしてそんな仲間が集まってやった作業は、従来の写真展の作業とはほど遠い完全ガテンな現場で木屑とペンキにまみれ汗だくになりながら、黙々とやっている光景は展示期間含めても一番感動する光景でした。
そして全てが完成したのがレセプションの10分前。ここまで仲間に手伝ってもらい誰も来なかったら寂しいな。と思っていたらご挨拶しきれない程本当にたくさんの方々に来て頂き、逆に対応しきれなかった事を今現在も悔やんでいる程でした。ここまでいろんな人間に関わらせ、時間を使わせ、誰も来なかったら清水寺の舞台から飛び降りるつもりでいたのでホッとしました。
展示期間中も本当に充実していました。中には2度3度足を運んでくれた方もいらっしゃいました。同じ建物の中にあるテナントの方々も足を運んでくださり、暖かい言葉を頂いたり、こんなにこの建物に人が来たところを見た事がない。とも言ってくれました。
不思議な事に期間中に展示とは関係のないニュースにも恵まれました。撮影したNIKEのキャンペーンが、カンヌライオンズでGOLD3つ、PX3 ParisでGOLD。そしてまた来年の事ですが面白いオファーも頂きました。
足を運んで頂いた方の中でたまたま知らずに外で私とすれ違い会話を聞いてしまった事もありました。
A(どう思った?)
B(写真展じゃないじゃん。)
A(だよね。)
そうなんです。私がやりたかったのは写真展ではないのです。個展という形のフォトグラファーが写真展という決められたフォーマットから外れて何ができるかの実験なのです。
フォトグラファーという職業は、人がどう言おうと断言できるのは確実に縮小していっている。それは動く事のない事実です。生意気ですが、だからこそ写真やフォトグラファー、カメラマン、写真家(呼び方なんてものはどうでも良い)は規格内、ルールの中に収まるのではなく、もっと決められたサイズ、フレーム、世界の外へ飛び出さなければならないと思っています。写真を撮影したり、レタッチするだけではなく、培ったその技能と能力を使わなければならない。そうであらねば面白くないし未来もない。これからこの世界に進もうと思っている人たちに心から「良い職業だよ!」「こんな事もできるよ」「絶対目指した方が良いよ!」と言えるようにありたい。
今回の展示で、面白い事に多くの方々が声を揃えるように言ったコメントが(トクヤマらしい)(トクヤマらしい展示)(トクヤマらしい答えの出し方)と言ってくれました。良い悪いではなくトクヤマらしい。という言葉がこの展示をやって本当に意味があった。そして普段自分がやらない、興味のない事に対しても、動けば不思議な事件が関係のないところで起こる。偶然ではなく必然なんだと感じました。
「01」展終了間際、最後の最後に来てくれたのは、僕の事も知らず写真の事も全く興味のない方でした。偶然ふらっと入ってきてくれたのが、そういう方だったのが何よりも良い瞬間でうれしくなって呑みに誘って一緒に打ち上げしました。
考えてもいなかったが、自分がこの職業で食わせてもらってやった方が良いであろうTO DOリストの写真展のマスにチェックを入れた。それだけでも自分の人生で、またほかの事にあたれる。
普段、仕事で関わる人々と仕事以外で顔を合わすとなると大抵は酒の席です。それはそれで楽しいのですが、今回の展示ではご家族や友人と共にふらっと現れ、酒の席では見られないような表情やその人の持つ自然な雰囲気、素敵な奥さんや子供達を見る事ができて、前よりも少しその人たちの事を理解し好きになりました。
個展やってよかった。本当にそう思いました。
改めて本当にありがとうございました。
現在、大阪、または関西で「01」展を展示できる場所を探しております。情報くださいませ。
---------------------
撮影したNIKEのキャンペーンが、カンヌライオンズでGOLD3つ、
PX3 ParisでGOLDを受賞。
「01」展制作風景。
Munetaka Tokuyama - Photographer
大阪出身NY在住。
現在アメリカ、ヨーロッパ、日本、香港のレップと契約し国問わずワールドワイドに広告、雑誌中心に活動中。アメリカにて受賞歴多数。Clients_NIKE,REEBOK,CANON
etc.躍動感ある写真では多分世界中で誰にも負けませんし負けてません。
WEB : munetakatokuyama.com
BLOG: munetakatokuyama.blogspot.com
TWITTER: twitter.com/#!/munetakanyc
- 2016.01.13NewYork Real Photo Life vol.21 発信する。という事。
- 2015.10.27NewYork Real Photo Life vol.20 日本のアシスタントを海外撮影に放り込んでみた。
- 2015.07.28NewYork Real Photo Life vol.19 展示に興味のない人間が展示をやると何を思ったか?
- 2015.06.26NewYork Real Photo Life vol.18 人はなぜ写真展をするのか?
- 2015.01.20NewYork Real Photo Life vol.17 新年明けましておめでとうございます&海外活動に対する質問と現実。
- 2014.07.01NewYork Real Photo Life vol.16 ケープタウンは撮影天国。
- 2014.01.14NewYork Real Photo Life vol.15 PARTY 清水幹太氏のコラム「ニューヨーク突撃記」を読んで。
- 2013.10.28NewYork Real Photo Life vol.14 日本から海外の仕事を持続すると言う実験。
- 2013.04.04NewYork Real Photo Life vol.13 NYで雑誌に逢えない日
- 2013.01.15NewYork Real Photo Life vol.12 賞をとりま賞。
- 2012.09.04NewYork Real Photo Life vol.11 価値観の変化と写真の権利
- 2012.07.09NewYork Real Photo Life vol.10 某アメリカ人アシスタント君の悩み。
- 2012.05.21NewYork Real Photo Life vol.9 ローカルと組め。
- 2012.04.04NewYork Real Photo Life vol.8 食える街の多さ。
- 2012.02.15NewYork Real Photo Life vol.7 "外国人"である事の強み
- 2012.01.19NewYork Real Photo Life vol.6 会社始めました。
- 2012.01.10NewYork Real Photo Life vol.5 時間の使い方・場所の考え方
- 2011.11.18NewYork Real Photo Life vol.4 僕が思う「本当の中国」
- 2011.10.17NewYork Real Photo Life vol.3 海外の広告撮影について。
- 2011.08.23NewYork Real Photo Life vol.2 海外雑誌を撮りましょう。
- 2011.06.21NewYork Real Photo Life vol.1 初めまして