- Photographer
Munetaka Tokuyama
- 2011.08.23
ここ1ヶ月半、パリ、ロンドン、ベルリン、大阪<実家>、香港、東京、ニューヨーク<自宅>と移動を常にしておりました。都市ごとに色んな人物に会うきっかけあり感じる事、思う事多々ありました。その件に付いては別の機会に書きます。
今回は海外雑誌について。
いきなりですが皆さん、海外雑誌の撮影をやりましょう。<そう簡単に言わないで!>と思う方が多いと思いますが、実は海外雑誌にも色々あり、全く不可能な事ではありません。有名海外誌以外で聞いた事もない雑誌、NY,PARIS,LONDON以外の都市から出ている雑誌、海外で作られているWeb Magazine、世界中にあまり流通していない雑誌。実際、雑誌によりますが、時には国内雑誌よりも難易度でいうと簡単に実現すると私は思います。
ファッション撮影に関して、海外にある多くの雑誌はサブミッションという形態で作品を受け付けています。雑誌によって色々進行の順序はありますが、簡単に言いますと頼まれてもいない内に勝手に撮ってきて、それを雑誌に送って掲載してもらうのです。勿論、先に雑誌からのテーマの提示、使ってほしいブランドの指定等がある場合もあります。
ただ、知っておかなければいけない事実として、これらの海外雑誌のほとんどは、撮影にかかった費用はランチでさえも払われる事はありません。送った所で掲載してくれるとは限りません。掲載すると約束した後に雑誌自体がなくなる事もしばしば。掲載されたからといって見本誌すら送られない事もしばしば。このような条件の元に撮影を行ないます。逆に言えば金銭でのつながりがないから、自分のスタイルを存分に出せる場であるとも言えます。海外誌をみて海外フォトグラファーの作風が日本のフォトグラファーのそれよりもが色濃く出るのはそこが原因の一つであると私は思います。そして、海外で活動する若手を含め、上記のような環境の中自分のポケットマネーで撮影を続けるため、ほとんど食えない状態でぎりぎり活動しているフォトグラファーが本当に多いと言う事実もあります。
こんな実情ではありますが、面白い事にこれらの雑誌の仕事をする場合、海外とのやり取りのため一度も雑誌側の人間と会わずに進行し、終了する事がほとんどです。私自身も数年間続けた雑誌で一度も会わないまま廃刊になった経験もあります。全てE-Mailでのやり取りで進行し、そして終わる。何が一番面白いかと言うと、撮影が発生するまでに「苦労してきれいにプリントした立派なポートフォリオを見せる機会なんてない」事です。海外雑誌を撮影するのに、美しい完璧な印刷のポートファリオはおろか極端に言えば今までのキャリア、経験すら必要ない場合があります。正直寂しくも感じます。
したがって海外雑誌を撮影するのに、海外にいる必要は全く皆無な世の中になっているのです。日本で撮影しそれを掲載してもらう事に全く問題も障害もない。極端に言うと東京にいる必要もない。大阪でも沖縄でも北海道でも撮影できる環境を作り上げれば良い。そしてもしかすると洋服を借りる事が海外よりも容易であるならば日本で撮影した方が、海外在住の人間よりも容易であるかもしれないと言う逆転現象が起こってもおかしくはない。基本的にやる事は作品取りのプロセスと同じなのですから。
日本の洋書を扱う書店には、驚く事にNYでも見た事がない海外雑誌を置いている事もあります。まず、お近くの洋書取り扱う書店で気になる海外誌を購入しましょう。<立ち読みは駄目!> そして彼らにコンタクトを取り、サブミッションを受け付けるか? その場合のプロセスを聞き出しましょう。そこからは自分の写真次第。ここで大事な事は勿論、写真のクオリティは最低限持っている事が条件。時に自分の写真を客観的に見られないフォトグラファーもいると思います。自分の写真を客観的に見て、それらが気になった海外誌の中に入っても見劣りしないレベルを持っているか? それを自分自身が現実的に分からなければ時間の無駄です。何でも良いと言う訳ではないのです。
逆に日本の雑誌の良さは、ほとんどの場合撮影にかかる費用が最低限でも出していただける、というところです。その分、雑誌にも費用を払う"対価"としての写真を求める事は当たり前ではないかと思う所もあります。それを含めてもこれは海外の現実と比べたらとてもありがたく、世界では珍しい。今は分かりませんが、日本では雑誌のみで結構稼いでいたフォトグラファーが沢山いたと聞いた事があります。しかし海外では雑誌のみでお金を稼ぐのはとても少ないと言っても良い。
もう一つ、日本の雑誌ではある一定の年代を超えたフォトグラファーが、「雑誌でファッションを撮る」というのを見ないな? と思う事が多々あります。正直、自分がフォトグラファーになる前にこんなフォトグラファーになりたいと憧れた世代やもっと上の大御所世代の写真を見る機会が、クレジットが乗らない広告、昔の作品以外では余りない。これはとても寂しい事です。海外では正直言ってこれらの世代がファッション写真の世界でも圧倒的に強い。その世代が熟したファッション誌で撮るというチャンスや土壌が日本にはないのかな? ならば! そういった先輩の方々も、海外雑誌を撮るのがいいのではないでしょうか? 私は心の底から先輩方の"今"の写真が見たい。と一ファンとして思っています。
私自身、NYに来たときはいつか海外雑誌を一つでも出来たら区切りになる。そしたら日本に帰ろう。ってな事を下積み時代、常に思っていました。しかしそれは既に10年も前の話。今は海外雑誌をやる事が"スゴイ事!"ではなくなっています。そして"スゴイ!"と自らが感じるだけ、自分からは遠い物になってしまいます。当たり前のようにやってしまえばいいのです。正直、これらの海外誌は海外ロケなんてするバジェットはない。そこを逆に使い日本の独特なロケーションで撮影してみて下さい。きっと重宝されます。海外雑誌で見たようなお洒落なロケーション探して、欧米の物まねのような写真撮るのは意味がありません。日本っぽく日本の匂いがする作品を送ればきっと目にとまるでしょう。
海外雑誌をいつかやる為に海外に行く! なんて思っていると実際来た後に埋もれるのではないかと感じます。自分の今ある環境、撮る写真を自分が冷静に理解すれば、それは実はとても強烈な武器になります。それを国外で使うともっと強くなる場合もある。そこで足りない物を感じれば海外に実際出る。と言う選択肢もありだと私は思います。
次回は誰かフォトグラファーのエージェントにショートインタビューしようかな? 海外のエージェントに聞きたい事や質問があれば、twitterで受け付けますよ。気軽にどうぞ。@munetakanyc
全く話は変わりますが、掲載写真はNYの駅構内の広告です。地下鉄構内で見かける広告には何時も何かしらの落書きがされております。子供達が学校帰りにいたずらするんでしょうね。私はこれらを見るのが大好きです。勿論良い事ではないですが、ふと見かけてプッと笑わせてくれる。そんな瞬間がとても好き。
僕自身が撮影したNYの広告写真にも、美人モデルさんの口元にちょび髭を書かれた事もあります。それを見つけたときはちょっとうれしかったな...。落書きされてこそ自分の写真がNYの景色の一部になったような感覚すら覚えます。その写真を撮っておかなかった事を、今死ぬ程後悔しています。皆さんも後悔しないように生きましょう!
<注>落書きは私が書いた訳ではありません。
ジャスティンティンバーレイク主演の新しい映画の広告。素晴らしいメイクですね。
ネクタイの形に首元を切り取り、前に張られていた写真をネクタイのデザインにした良い仕事。グッドアイデア!
新しいアメリカドラマの広告。よく見る手法です。髭、眉毛等。王道ですね。肩に乗ったお猿さんがとてもかわいい。
Munetaka Tokuyama - Photographer
大阪出身NY在住。
現在アメリカ、ヨーロッパ、日本、香港のレップと契約し国問わずワールドワイドに広告、雑誌中心に活動中。アメリカにて受賞歴多数。Clients_NIKE,REEBOK,CANON
etc.躍動感ある写真では多分世界中で誰にも負けませんし負けてません。
WEB : munetakatokuyama.com
BLOG: munetakatokuyama.blogspot.com
TWITTER: twitter.com/#!/munetakanyc
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