- Photographer
Munetaka Tokuyama
- 2015.10.27
いつもこのコラムでは自らの体験や経験をつらつらと語っていました。しかし今回は私が経験し思った事ではなく、第三者の経験も大事だろうと、私の日本のアシスタント高野氏を海外案件の現場に放り込んでみました。
彼の名誉のためにもいいますと、彼は仕事も出来、礼儀正しく、責任感ある良い男です。私の日本帰国直後に出会い、私の写真が好きだと言い、ムービーの現場からスチールの現場に飛び込んで来ました。将来私のように海外に出てやってみたいとも話しています。そんな彼に(ぐへへへへ、いいタイミングで現実というものを教えてやろう。きっと貴様は後悔する!)との意地悪な気持ちと(いつか近い将来のために私が一緒にいてサポート出来るうちに失敗させよう。)と神のような心で、プロデューサーの反対を押し切り連れて行きました。
その私の可愛い可愛い高野ボーイの体験談です。
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この度、トクヤマさんから海外での撮影現場を経験し感じた事を纏めましょう! というお話がありましたので私なりに感じた事を書かせて頂きました。
今回の撮影は、あるスポーツブランドのキャンペーン広告でマニラでの撮影!「日本人いないけど行くか?」と言われたので何も考えず即答で「お願いします!」と簡単に返事をし、クルーとして加われる事になったのですが、これが想像していた以上に苦しい経験になりました。
以前にも2週間程海外撮影に同行した事があり、ある程度アシスタントとして仕事をする自信はあったのですが、それが大きな勘違いだったことです。以前の撮影はモデル、ドライバー以外はすべて日本人クルーでしたので、撮影場所以外は日本での仕事と全く変わらない。それに比べ今回はフォトグラファーと僕以外、皆外国人。
クライアントはシンガポール、代理店はロンドン、プロダクションは上海、アシスタントはフィリピン、それに各企業内でも様々な国の出身者が集まった大きなクルーでした。
考えれば簡単にわかることですが海外の撮影現場に行くということは日本人がいなくて当たり前で、もちろんコミュニケーションは全て英語です。全く英語が出来ない私でも今まで通り仕事を行なえば何とかなると撮影に臨んだのですが玉砕。
まずは機材トラブルで一苦戦。プロデューサーへ対応策が上手く伝えられず。そして3人もいたライトマンへの指示も上手く伝えられず、指示も後手後手に...。
その場でレタッチ、即納品というスピード感ある現場の中で、PC作業中はずっと怖い外国人に両サイドから訳のわからない英語をバババッと投げかけられ、Macも虹色のカーソルがグルグル回りだし完全に頭がショート。
最後の望みのトクヤマさんも撮影に集中していた為まったく間に入ってくれない。(アシスタントとして行っているので当たり前の事なのですが)。
大変恥ずかしい話ですが翌日、撮影プロデューサーにオペレーターを降ろされました。
こんな事はじめてです。
わざわざ高いお金を使い日本からの飛行機チケットとホテルまで用意してもらい、撮影をスムーズに良いものを作るためにチームに加わっているのに、最終的には周りに気を使わせ足を引っ張る羽目に。。日本では出来ている事なのに。そんな事を考えていると悔しくてしょうがない。本気で泣きそうでした。。
完全に考えがあまかったです。
どんな状況であれ上記で記載した事は海外撮影では当たり前で、皆がそれをクリアして撮影に臨んでいます。英語を喋れないなんて言い訳にもならないですし、そんな事誰も助けてくれず置いていかれて終わりです。
今回はアシスタントとしての体験ですが、海外でフォトグラファーとして仕事をすると考えた場合、もっと越えていかなければならない事が山ほどあるはずですし正直考えるだけで嫌になりそうですが、大変魅力がある仕事だとも感じました。
まず単純に多国籍なスタッフとの撮影が楽しい。文化が違う何ヵ国もの人が集まることでどんなモノが出来上がるのだろうというワクワク感。
割と「海外=ユルい」というイメージがありましたが、全くそんな事はなくむしろグイグイです。常にスタッフ同士で会話をし納得するものが出来るまで何度でもやり直すというのを何度も見ました。しかも、いい意味で上下関係なく緊迫した感じでなく皆お互いを尊重してといいますか。
また分業がハッキリしています。撮影初日に会話が出来ないため、ライトマンに許可なくライトを動かした時があったのですが、「これは僕らの仕事だ、指示だけくれればいい。」という様なムッとした顔をされました。日本のムービー現場に近い感覚です。少し戸惑いもありましたが、仕事に対する強い責任感といいますかプロフェッショナルを感じ、だからこそより高いレベルでお互い尊重しあえているのではと考えさせられました。
後日、大変嬉しい事に2回目の撮影に何故かもう一度呼んで頂ける事になり、同じ仕事を任せて頂きました。気を引き締めて前回と同じ失敗はなく終えれたと思ったのですが、帰国日に気持ちが緩んだのかパスポートをホテルに忘れるという失態。帰国日は僕とトクヤマさんだけだったのですがこれがもし大きなクルーだったと思うとゾッとしました(当たり前ですがトクヤマさんには激怒されましたが)。
長々と唯の失敗談になってしまっていそうですが、これが僕が経験した事です。
今回の経験で「英語」の重要度は勿論そうですが「会話」の大切さも分かった気がします。自分の想いがまったく伝えられないストレスを経験しこんなに会話を欲したことはありません。
ならば普段日本という想いを伝えられる環境では自分の想いを今以上にさらに伝えていこう。伝える喜びとチャンスはいくらでもある。とも実感しました。これが他国でも出来たらなお最高のはずです。
私事ですがこの仕事に就いた時からある目標があります。今後もその目標に向かい力を注いでいきたいと思います。
高野和樹
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との事です。上記の様な現場は国の外に出れば普通です。日本の案件で海外に出てもそれは現地でサポートしてくれるコーディネーターやスタッフのお陰で全く困る事もない。それは、現場が違うだけで日本国内で撮影している事と何も違いがないのです。なのでそれは経験に入らない。
経験のない状態で「海外こうであろう。こんな感じであろう」という自分勝手な解釈や想像は全く役に立たない。彼にその事を気づかせるために海外での似て非なる二つの現場を体験させました。とてもリアルな体験であると思うので、私の経験よりももっと現実感があるかもしれません。
彼に最後にいいました。今回彼は一緒に仕事した多くのクルーから厳しく辛い事も感じたかもしれない。が、私にすれば実はとんでもなく優しかったと思います。海外から呼ばれてるスタッフである限り現地のスタッフに大変気を使われて、現地のスタッフが泊まる事もない様なホテルに滞在し、その送り迎え迄してもらえる。ならば、現地でサポートしてくれる人達以上に実力や良い仕事を見せなければならない。それは最低限の事だ。
もしも彼が近い将来海外に出て、現地スタッフとして迎え入れる時、彼は今回の体験で感じた以上のプレッシャーの中で働かなければならない事実を、ちゃんと肝に銘じなければ行けない。誰も助けてはくれないのだから。
さて、今度時間のある時にでも彼のその目標とやらを問いつめてやろうと思います。
複数の国を跨ぐ大きなプロジェクトだったため、クルー関係者も大勢います。
スチール撮影のみなのにスタジオ全体を押さえ、撮影スタジオ以外はクルーの作業オフィスに変身しました。
初日の散々な結果に自己嫌悪に陥りスタジオの端っこの方で何かをしている高野氏。
ちょっと馴れて来たのか腰に手を当てて少しエラそうな高野氏。
Munetaka Tokuyama - Photographer
大阪出身NY在住。
現在アメリカ、ヨーロッパ、日本、香港のレップと契約し国問わずワールドワイドに広告、雑誌中心に活動中。アメリカにて受賞歴多数。Clients_NIKE,REEBOK,CANON
etc.躍動感ある写真では多分世界中で誰にも負けませんし負けてません。
WEB : munetakatokuyama.com
BLOG: munetakatokuyama.blogspot.com
TWITTER: twitter.com/#!/munetakanyc
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