- Photographer
Munetaka Tokuyama
- 2016.05.09
なんだかんだで続けていたこのコラムも、今回で最終回になります。
トクヤマ、いつ迄NYほにゃららなんて調子こいたタイトルつけてんだ。バカ。と誰かに言われる前に卒業する事になり、逃げ切った気分です。
最後なので、海外と日本で活動して知った事、感じた事。そしてくそ生意気にもこれから日本の写真を取り巻く業界がこうなれば良いな? こうしたら良いんじゃないかな? なんて事を個人的な意見として書いてみよう。
まず断言出来るのは、海外と日本は個人間で繋がっていても全体では繋がっていない。それに欧米から見たら、全く日本のフォトグラファーは眼中にない。というか、全く知らない。それはどうしようもない事実です。繋がっている風に見えているが現実は全くだ。悔しくないですか? 海外に興味持っていない人間にはどうでも良い話でもあります。フォトグラファーとしての高見を目指すのであれば、海外にでなけりゃ嘘になる。特にファッションフォトグラファーはなおさら。
何かを目指す人間に対して書いています。私が言うのは極論です。でも私はこの極論を大事にしてきました。
「VOGUE」で撮りたい。ではどこの? 目指すべきはイタリアンVOUGE、アメリカンVOUGE、フレンチVOGUEでしょう? 私はNIKEを目指した。どうせ目指すならばグローバルのNIKEだった。目指したから届き、その後いろんな国のNIKEを撮影出来た。しかし残念ながら日本で死に物狂いで頑張っていても、絶対届くとは思えない。それは日本が良い悪いではなく繋がっていないからだ。
高い目標を設定しても実現不可能ではない。でも目指さなければ絶対不可能だ。それを笑い飛ばすバカがいれば逆に笑い飛ばしてやればいい。フォトグラファーとして生きる道を選び、フォトグラファーとして食える事が目標であればそれで良い。しかし、それで良いと実感したところでその先に待つのは緩やかな下降です。
日本のフォトグラファーは危機感を持ち、意識改革をしていく必要がある。日本にいて当たり前で気づいていないと思うが、世界でも稀に見る程の大きなマーケットがある日本にいるから「日本人フォトグラファーには仕事が永遠にある」と思ったら大間違いだ。
LESLIE KEE氏(僕の恩人の一人だからあえて名前を使わせてもらう。)を始めとする日本にいる外国人フォトグラファー達の活躍の増加。これからは彼らに憧れた若い外国人クリエイター達がもっともっと日本で活躍していくだろう。
そしてもう一つの言語を話し、文化を知る彼らはそれを足がかりに活躍の場を日本以外にも広げていくでしょう。私は大賛成だ。それが当たり前だしそれが日本をグローバルな業界に成長させてくれる。そこで弱くなるのは、日本語しか話せない日本という国しか知らない日本人フォトグラファー達だ。日本のマーケットは縮小していっています。さて日本人フォトグラファーはどうする?
けなしているのではなく状況の話をしています。今の多くの日本のフォトグラファーは、RPGゲームに出てくる一つの村でウロウロして同じ台詞を話す村人と同じだ。外の世界に冒険に出ず、同じ街で同じ台詞を繰り返し繰り返ししてる内に冒険者が世界を変え、ゲームは終わる。冒険に出ればモンスターにあったり大けがしたり、話が先に全くすすまなかったり、金が足りなくて強い武器が買えなかったりするだろう。しかし全てが経験値として自分を強くしてくれる。そもそも写真なんてもんで食おうという気合いと勇気あれば、何でもできると思う。
本当の私はこういった事を言うタイプの人間でもなかったし、海外なんてくそくらえ、興味のないタイプの人間です。しかし海外で活動し、経験した事で今、普通のフォトグラファーが見ない光景を見、会わない人々と会い、する事の無い経験をさせて頂いています。
その事が単純に素晴らしい事と実感しているからこんな書かなくても良い事を書くのでしょう。昔程フォトグラファーになりたい人間もいないと聞くし、夢のある職業でもないと思っている人も多いと思います。それはある意味そうなのかもしれない。が、私はこの職業が今だにとてもやりがいがあり、夢のある職と実感しています。
写真一つで世界のどこかに行ったり呼ばれたり、自分の写真を訪れた事のない国の雑誌に買われたり、ごくごく普通の自分が体験してて、「なんじゃこの職業は。マンガみたいや。」と思う時があります。そんな素敵な職業です。
そこで写真を取り巻くこの業界に、くそ生意気にもこうなってくれれば良いな。と思う事。
1. 日本、海外の垣根は個人の意識で壊していくべき。マネージャーや誰かがやってくれる事を期待しても無駄。
2. マネージメント事務所等クリエイターと密接にコミュニケーションとる人間は、もっとクリエイターのケツをたたき海外に無理矢理にでも追い出すべき。
3. マネージメント事務所は海外エージェンシーとの提携、情報交換をはじめるべき。
4. 海外からやって来る若いが才能ある外国人クリエイターを当たり前に日本で仕事ができる土壌をつくりあげていくべき。
5、似た者同士で固まるのではなく、世代やバックグラウンドの違うクリエイターと仕事する事を求めよ。
6. 海外は別世界ではない。出る事を恐れるな。
7. 今持っている少しばかりの安定を守るためだけにチャレンジする事をあきらめるな。
8. 自分に都合のいい嘘と言い訳で足踏みするな。
9. 欲を持ち、それを口に出せ。それは恥ずべき事ではない。
10. トラディショナルを理解した上で今の時代にあった活動をせよ。
11. 人の意見を鵜呑みにせず自分の頭で考え自分独自の答えを導きだす。
12. 自らすすんで井の中の蛙になろうとするな。
海外に出れば出たで苦労もする。
最近、NYで試行錯誤しながら踏ん張る、ある若いフォトグラファーと話しました。その彼は言いました。ある雑誌で書いてあった日本の大御所の写真家も昔NYに来て、ストリートで沢山のポートレートを撮り、それを日本で見せて大物になっていった。だから僕も!と言いました。
素晴らしい事だと思います。しかし、それは何十年も前の話です。それを基準に考えてたらとても危険だ。多くの同じ様に、その話に影響された人もいるだろう。そしてみんな同じ事をする。現に同じ事を言った人に、過去に何人か会いました。昔は海外なんて遠い世界の話だった。その遠い世界の時代に海外に飛び出し、誰もがまだ見た事のない世界の写真を撮った大先輩方の冒険と違い、今はどこでも10万円以内で行ける。そんな事は誰でもできるし特別な事でも何でもない。だから今、それもやりつつ自分ができる考えつく事をすべきだ、と私は思います。
今、私たちが生きて活動している時代は、先に経験者がいない。それほど全てが変わった。そして写真業界は縮小していっている。過去に学ぶのは良いが同じ事をしてもどうしようもない。過去に学びつつ、今生きて、今体験して、今感じる事から答えを出して体現する。そんな事が大事なのではないでしょうか?
あ~あ、またこんな事くそ生意気にかいたら嫌われるな。。。お願いですから同業種の方々これで最後だから怒らないでね。
最後に。もしも、自分の写真が日本で誰にも認められなかったり、どこにも行き場がなくなっても絶望する必要はない。日本なんざ世界にあるたった一つの国でしかない。外の世界にはきっと自分の写真を認めてくれる人や国がある。それはきっと自分が求めれば見つかるもんです。現に私がNYで駆け出しの時、NYでは箸にも棒にもかからなかった私にチャンスをくれたのはドイツ、オランダ、香港でした。きっとあるのです。お互い頑張りましょう。
ありがとうございました!
Munetaka Tokuyama
いろんな国の空港でフライトスケジュールを眺めているとどこにいてもどこかへ一瞬でワープ出来る感覚に陥ります。
空港は不思議。生活感無いのにいろんな国の匂いがする。自分がどこにいるかなんてどうでも良い様に感じる。
新幹線はとても良い。日本の国のサイズを実感出来るから。日本は小さく、本当に美しい国。
Munetaka Tokuyama - Photographer
大阪出身NY在住。
現在アメリカ、ヨーロッパ、日本、香港のレップと契約し国問わずワールドワイドに広告、雑誌中心に活動中。アメリカにて受賞歴多数。Clients_NIKE,REEBOK,CANON
etc.躍動感ある写真では多分世界中で誰にも負けませんし負けてません。
WEB : munetakatokuyama.com
BLOG: munetakatokuyama.blogspot.com
TWITTER: twitter.com/#!/munetakanyc
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