- Photographer
Munetaka Tokuyama
- 2011.11.18
数年前から度々紀伊国屋NY店に行った時、日本の雑誌をみかけると写真、広告、デザインの業界でも中国アツいぜ! 中国でサクセス! これからは中国! みたいな事を特集された物を見る事が多くなった。私はその数年前から欧米、日本そして香港にエージェントを置いて状況やマーケットの勉強していたので、そういった雑誌の特集を見ては、(っは?)って思う事多々ありました。
そして最近香港から上海のエージェントへ移籍する事になって、数名の先輩方から上海ってどうなの? 的な質問がありました。っで、今回は皆、興味はあるが中々分からない本当の中国について〜。
数年間、香港のエージェントに籍を置き、香港の広告、雑誌も撮影していました。たまたまその現場で香港のアドエージェンシーのデザイナーに <中国本土の仕事とかやんないの?> っと何も考えずに聞いてみた。すると彼の言葉は <上海のレベルは高すぎて香港からでは難しい>。 勿論一個人の意見ではあるが、この意見が <正直上海よりも香港の方がイケテルっしょ!!←馬鹿> と思ってた私にはとても興味深くなり、以前から私に興味を持って会いたいと言われていた上海のレップもあったので <ほな、行ってみよまひょか> みたいな軽いノリで行ってきました。
以前、私が香港での仕事を始める際、日本帰国時の飲みの席で人に <中国やアジアで仕事するのは都落ちのイメージが有る> と言われてビックらこいた。でもその意見も一つの意見。同時に縮小していってる日本のマーケットを目の前に、「まだそんな事言ってるのか?」と私は思いました。
そして今回も中国の現状を「欧米日のパクリ」「偽物のイメージだ」とのご意見いただきました。そのイメージは持って当たり前だと思います。そして私自身もある部分はそう思っています。しかし批判を恐れずに言えば、正直ある一部分では日本も同じだったし、同じである、とも言えます。要は巧いか下手か。そして多いか少ないか。
私自身も面識のある日本の某カメラマンに長くパクられていましたが <今は知らない> 。そういった物は大なり小なり何処の世界にもあるのです。共通の知人にそれを知らされた時は <あのアホンダラ!ガッタガタにイテコマしたろか♡> なんて思っちゃったりしました♡ が、何故か今は何とも思わなくなってしまいました。パクる人間とは土俵が違う。中国のパクリなどの部分に気を取られると、本当に良い部分は見えにくくなります。
それは一つの側面、そして底辺の部分でしかない。特にクリエイティブやスタイルの様に無形の物には著作権はない。だから実際何も言えないのです。そして自らが中国に進出すると考えた時、そのパクリ等の次元の低いのマーケットで勝負しようと思いますか? 答えは誰でもNO。だからそこは大きな問題ではないのです。
随分前、中国とは関係ない話題でしたが、TwitterのTLで「パクリエイティブ」と誰かがつぶやいていました。なんて素敵な言葉♡ でも、中国はそのパクリエイティブが全てではない。いい面を改めて見ると、既に日本を凌駕する部分が多くあると私は悔しいが感じました。
クリエイティブは 欧>米>日>中。と言う具合に真似たり影響されたり、パクったりして来たんじゃないかな? <後にある程真似する国が増える> 文化はまた別ですが。「インスピレーション」と「パクリ」の違いはあやふやで曖昧です。それらを決定的に分けるのはプライドのみ。しかし、国が変われば後生大事に守っていたプライドなんて屁の突っ張りにもならん時がある。でもそのプライドこそが、他国で己の持つ個性を発信出来る源でもあると私は信じています。どの国にいても悪い方に流されたり染まってはいけない。 <ま、プライドにも持つべき物と持つ必要ない物ありますが>。
上海には今、世界中からも色んな企業、才能が <一旗あげまっせ〜> と欲をむき出しで集まって来ています。そしてその人の流れの速度が全てのレベルや意識を急激に押し上げている。そして、我々の写真業界でも、中国から優秀な才能がどんどん出てきているし「外のフォトグラファー起用」となると、日本の空を通り越して、欧米のフォトグラファーを起用します。<実は既に複数の欧米のレップが上海にオフィスを構えたり、どこかと提携しています>。そんな状況で日本在住フォトグラファーが中国で巧くやれる場は多くはない、と感じます。正直、数年前か私は会う人会う人に「中国のクリエイティブは、アジアの美意識を正しく理解出来る日本が主導権を持つべき!」と失礼に、そして生意気に言っていましたが、今はもうそのフェーズは過ぎ去ってしまったのだと感じました。
先発の日本、後発の中国なだけで、今中国は欧米を手本にしてきた日本の良い部分を学んだり <パクったり> その上で日本にない物を工夫して行なっているような印象を受けました。そして外資系アドエージェンシーの乱立によって、クリエイティブの多くは結局外資の優秀な外国人が行なっており、全てを中国人がやっている訳ではなくなっています。
「上海は中国であって中国ではない」。それによって中国は日本とはまた違ったマーケットに成長していくでしょう。どちらかというと欧米的なシステムに。そして今まで日本に入ってきていた少ないアジア案件は、このままもっと先細りして行くのでは? と懸念します。
今回契約した上海のレップも面白かった。最初に彼らが私に言った言葉は <ようこそ上海へ。あなたは正解の地へ来た>。こんな言葉をなんの迷いもなく吐けるのは、世界で今は上海の人間位では? と感心しました。<←彼らはシンガポール人>。彼らは、中国本土は勿論、アジアパシフィック <日本以外> 全体をカバーします。一番面白かったのがレップ内にフォトスタジオ、スチール、ムービーをこなせるプロデューサー。そしてレタッチャー&CGスタジオを擁していること。
今、日本ではフリーランスレタッチャーをレップへ所属させる事があると聞いていますが、正直それは良策とは全く思えません。それでは縮小しているバジェットが無駄に膨らむ一方。それよりもレップが良いレタッチャー集めてレタッチャースタジオを経営してしまう形態をとった方がいいのでは? と個人的に思います。その方が内部のクリエイターとの個人制作環境が出来やすい。
良い事ばかりではなく大変な事も。現場レベルでは大変な事は勿論沢山あります。NYや東京の様に貸しスタジオ、貸し機材が充実していなかったり、唯一ある貸し機材屋さんの親父が偏屈だったりw。私自身の経験ではヘアメイクが撮影に居ないw。や、スタイリストが途中で帰るw。と言う事もありました。その時はモデルが動くだびに出てくるクリップを自分でかくしたり、また服つまんだりしたりもしましたw。もう常に半笑いでした。しかし、こんな事も撮影のシステムが確立された現在の欧米の状況で、エラそうに当たり前に撮影してた私にはとても興味深かった。もしかすると日本の60、70、80年代ってこうやって撮影したのかな? なんて空想しながら撮影しています。そんなシステム確立されてない状況を体験出来るのは、一つの貴重な勉強であると思って楽しんでいます。
っと、私も全ての事を知ってたり分かってる訳ではありませんが、私個人の中国の現状に対する感想、考えです。楽で簡単だと思っていた中国マーケットを目指して火傷するならば、欧米マーケット目指して完膚なきまでぶちのめされた方がが良い。その方が結果は成長しています。では。
上海でのスナップ
Munetaka Tokuyama - Photographer
大阪出身NY在住。
現在アメリカ、ヨーロッパ、日本、香港のレップと契約し国問わずワールドワイドに広告、雑誌中心に活動中。アメリカにて受賞歴多数。Clients_NIKE,REEBOK,CANON
etc.躍動感ある写真では多分世界中で誰にも負けませんし負けてません。
WEB : munetakatokuyama.com
BLOG: munetakatokuyama.blogspot.com
TWITTER: twitter.com/#!/munetakanyc
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