- Photographer
Munetaka Tokuyama
- 2012.02.15
今年のNYは昨年、一昨年のような記録的な「スノーストーム」が直撃したのが嘘みたいに暖冬で、全く寒くない。寒くないと言っても冬なのに体感温度計が壊れてるのか?半袖で歩く猛者も出てきています。しかし暖かい土地や国出身の人には十分寒いようです。日本のように夏はアホみたいにクソ暑く、冬は家の中でも底冷えする場所で育った私は、NYのようなある意味極端な気候には適応出来ていると思います。それってどうでも良い事だけど、このような四季がはっきりしている日本で生まれ育った事はとてもラッキーだな、思う事がある。
っで、今回は外国にて自らが"外国人"である事について。
写真のみに言える事ではなく、外国で生きる際、全てに対して言える事です。当たり前の事ですが私の例で言うと"NYで暮らす"と言う事は、この街では私は"外国人"になると言う事です。"外国人"である"と言う事はやはり"普通"ではない。"当たり前"ではない。と言う事です。
NYのような「人種のるつぼ」と言われるような街でもやはり"外国人"です。時にそれはとてもネガティブにとらえられる事もあったり、何か上手く行かない事があれば"外国人"である事をいい訳にする人も沢山います。しかし、私はその考え方は大きな間違いであると思っています。
私は"外国人"である。と言う事は大きな武器であると思っています。やはり、言葉や環境など不便な事もある。私が渡米したとき、英語も話せず、友人知人0、コネなし、金なし、学なし、写真を志す考えさえもなかった。大阪でチンピラ以下だった自分が、この国で生きて行く為の武器になるものは何もないと思っていた。しかし、外国で生活して行くうちにあれ? これってちょっとした武器ちゃいまんのん? と気づく事が沢山あった。
1、ちょっとだけ特別な情報を持っている。
何かのきっかけで写真を始め、そしてアシスタントを始めた。"外国人"だらけの中で四苦八苦しながら、なんとか現場に入ると不思議な事が多々あった。言葉も話せず仕事のできないサードアシスタントだった私に、ファーストやセカンドの仕事ができて英語を話せる"外国人"アシスタントよりも、クライアントやアートディレクター等、色んな人が話しかけてくれる事があった。
あるセレブリティーの撮影ロケで、あまりのビッグセレブリティーのため誰も近寄る事ができないし話しかける事もない現場で、そのセレブリティーは現場の隅で機材を片付けている私に話しかけてきて、何故か食事中も私だけが話す羽目になった。
その時、少し悟ったのですが、"外国人に囲まれてる!"と思っていた私の方が"外国人"で、その現場ではほんの少しだけ"異端"である。と言う事だ。
話す内容は日本の事 <マンガ、ファッション、街、文化等>。日本の情報は珍しいものでもないし、日本人なんざNYに掃いて捨てるほどいるが、それでもやっぱり少し"異端"で"特別な話題"を持っているのである。これは外国で生きる際、その国の外のどこの国の人にでも言えます。それは言葉で苦労する人間には他国の人間とコミュニケーションを持つ上でとても武器である。<言葉が分からなければピカチューピカチュー、サムライサムライと適当に言っとけば良い。私がそうでした。>
2、人に対する態度や物事に対するや姿勢。
私の世代ですら日本で生まれ育てば、嫌でも年功序列の教育と年長者や先輩を敬うという教育を受けていると思う。私の地元が少々荒れていたため、先輩からのしごきや、今では新聞沙汰になるような仕打ち等当たり前にあり、今でも中学校の先輩なんかには、怖くて地元で顔を合わせたくなかったりします(笑)。しかし、そこで礼儀を憶えました。先輩命令は絶対で、命令されれば全て完璧にこなす。<こなさなければ後で怖い。>という物事をキッチリ遂行する能力を憶えました。
遂行できなくても、できるだけの事はする。と言う意識が芽生えたと思います。育った環境で違うのでしょうが、ゆとり教育になるまでの日本の教育や社会なら、少なからずこういった能力は備わると思います。この能力が「日本人は礼儀正しく、物事をキッチリこなす」と言う印象を、海外で活躍した日本の先人達が世界に作り上げた。
この能力と印象が、私たちの業界で言えば"海外の大物ヘアメイク等のアシスタントに日本人が多い"と言う結果になったと思います。<個人的にはこの日本人アシスタントが多いと言うのは、自慢できる事だと思わない方が良い。"アシスタント"として重宝とは馬鹿にされている。と言うくらいの気概をもたないとアシスタント止まりで消えていく。>
3、日本のファッションやクリエイティブの"平均値"の高さ。
"日本人"は皆同じ格好やメイクをしていて個性がない。と"日本人"がよく言います。とても滑稽な話です。確かにそうであるとも言えますが、この"同じ格好やメイク"の"平均値"は世界でダントツレベルではないか? と私は思っています。多分、外国に行った時に気づく事があると思いますが、外国で見かける日本人ってすぐ分かってしまうのです。アジアの人々、とくに中国、韓国の方々とは身体的差異は大きくない。でも分かる。のです。みんな小洒落ている。この事がやはり日本人はお洒落という認識を海外に作り上げました。<しかし、海外に長く住んでいる人程見分けがつかなくなる...。>
この"平均値"の高さは、この業界ではやはり武器になる。何が良い。何が悪い。という見分けの感覚や能力の"平均値"が高い。ファッションやクリエイティブとは、"選ぶ能力の高さ"がとても重要であると私自身感じます。この能力は物作りや他の業種でも出発点の高さと関係すると思います。人に「皆同じ格好」なんて言われた日にゃ言ってやりましょう。"それでも世界全体ではダントツお洒落な方"だと。
と、適当に思いつくだけでも大きく3つある。真剣に考えれば山ほど出てきますが、もう眠たいので3つにしておきます。上に書いたものは、皮肉にも国内では日本人自ら恥じいていたり気づいていない印象がある。1の場合では当たり前過ぎで気づかない。2は年上とか関係無い! 年功序列意味なし、敬語話せないし話したくない等のいい訳。分かる部分もあります。
しかし、これは自分自身とても大切にしている事ですが、能力の差があっても目上や年長の人にはそれなりの礼儀を持って接する事はとても大事で美しい事です。日本人から礼儀をとれば魅力は半減する。仕事と人間関係は別と考えています。外国で日本人の印象で一番言われるのは「日本人が他者をリスペクトする文化は素晴らしい」と。3はやはり皆同じ格好じゃん。等の否定。しかしこれらは海外に出れば立派な能力や武器になります。もちろん韓国、中国他、全ての国の人も同じくらい違った項目で武器になるものを持っています。日本国内で頑張っている外国人の方々を見てください。違う項目ですが同じように自分たちとは違ったりここは優れている等、面白いと思う事が沢山あると思います。面白いのは海外にて強みと感じるのとは逆に、国内にいればどうでも良い事という事ですね。
ただ上記にあげたこれらの事はあくまでエントリーレベルの話です。ドラゴンボールで例えるとカリン塔に登った位です。実際、生き残るには最終形態フリーザレベルと競わなければやって行けない。でも所詮カリン塔されどカリン塔です。戦闘力5の村人より全然強い。その先修行積んで行けば良い。
時に偏見を持っていたり、信じられない事を平気で言う人間に会う事もありますが、そんな人間は相手にするだけ時間の無駄。唾、っぺ!っぺ! 以上です!
一般的によく聞きますが、海外に出れば負けないように「YES」「NO」をはっきりした方がいい、と。それは確かに思います。しかし、それはそれでやればいい。それが全てその国の人間のような考え方や態度を取れば良いと言う事ではありません。それは単なる真似事。写真もそうです。海外雑誌で見たような写真ばかり撮っていてもそれは模写でしかない。はっきり言って誰にでも出来る。たまにそれが良い事と思っている勘違いさんを見かけますが、正直滑稽です。日本人が外国で外国人に同化すれば、それは自らの武器や強み、魅力を棄てる事です。
外国にいてその国で"外国人"である事は、誰もが簡単に持てる強力な武器です。海外に出る事で、アイデンティティーは武器になり、"外国人"である事はメリットになる。餃子のタレにラー油を足した時にできる"ラー油の浮島"を見て私はいつも惚れ惚れと「ラー油、めっちゃカッコいい!」とつぶやきそうになります。一体私のどの口が、これらのエラそうな事ほざいているか理解できませんが、とにかく私は良くも悪くも"異端"である事で、振り幅が大きい"外国人"でいる事が大好きです。
ほな。
NYの冬の夕方の自然光が好きでよく写真を撮りに行きます。
Munetaka Tokuyama - Photographer
大阪出身NY在住。
現在アメリカ、ヨーロッパ、日本、香港のレップと契約し国問わずワールドワイドに広告、雑誌中心に活動中。アメリカにて受賞歴多数。Clients_NIKE,REEBOK,CANON
etc.躍動感ある写真では多分世界中で誰にも負けませんし負けてません。
WEB : munetakatokuyama.com
BLOG: munetakatokuyama.blogspot.com
TWITTER: twitter.com/#!/munetakanyc
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