- Photographer
Munetaka Tokuyama
- 2012.05.21
NYは春を通り越して夏の様な気温。今年も相変わらず桜すら拝めていない私にすれば、春に無視された感じがして当コラム拒否してしまいそうな気分です。
私事で全く関係ないのですが、4月23日に長男をゲットしフォトグラファーなんぞひと月休業して流行の育メンやっております。というのも私がアホなのですが、出産予定日ギリギリまで仕事を入れてしまいそれも海外ロケ2連発。そのお陰で一つ目のロケ終えNYに戻り次のロケへ向かう前日の深夜、予定日より10日間早いのに急遽病院に向かう事になりフライトを一日ずらして出産を見守りました。地獄の出産後、戸惑いながら生まれたての我が子を数分触れて、泣く泣く次の国へ向かうという切ない思いを致しました。
お陰で飛行機に乗った数時間は窓の外を見ながら号泣。隣の席のイカついランディバース似のおじさんに心配されましたが。。。つくづくフリーランスは芸の為なら女房も泣かす職業だと感じます。その罪滅ぼし。でも泣きつかれて目的地に着いて美味しい物食べたら元気でました。
ま、そんなしょうもない話でどうでも良い。今回はローカルと組む。と言うお話。
今現在、私は複数の国を跨ぎ活動しており、活動国にオフィスを構える個々のエージェントと契約を結んでおります。しかしこれ迄この体制を作るのに、ちょっとしたいざこざもありました。各国のエージェントの中で自分のテリトリー意識、希望等が重複する所が出てくるのです。以前からアホみたいに欧米のマーケットは繋がってんのに! もう! と言っている私ですが、エージェントの中でもそれは勿論あり、例えばアメリカからフランスを動かしたりフランスから日本を動かしたり出来るもん! と言う自負と自信を持つエージェントもいます。
それはとても良い事だし素晴らしい事です。しかし、現実はとても困難な事と私は実感しております。例えばそのエージェントがそのテリトリーを希望する国にその国の言葉を話し、その国のお国柄を理解する人間を現地に常駐させてるのであれば問題はあまりない。それでもその土地によそ者が事務所を置いても全く機能しない事の方が多いのですが。。。
私自身もアメリカ側がヨーロッパもする! なんて言い出した時もあり、その時は"ま~ま~落ち着いて。"と言って落ち着かせた所速攻で"ヤダ。"ときっぱり袈裟切りに一刀両断しました。人それぞれの考えはあると思いますが、アメリカはヨーロッパに手を出す暇があればアメリカを掘り下げるべき。そっちの方が有効で効果があると思っています。
例えばフランス語も話さない人間が、フランスのクライアントとタフなお金の話や進行の話なんて、お互いがストレスを感じるのが現実だからです。それはもしかしたら日本のマネージメントを日本語出来ない外国人に任せるのと同じ。その国の方法、順序、段取りを熟知していなければ100%エージェントとしてのパフォーマンスを発揮出来ない。そして何よりクライアントに無駄なストレス与えるのは無駄と考えるからです。他国で我がのやり方押し付ける程失礼で傲慢な事はない。
そんな事を思ってい私は、その国に根を張り、その国の時間に営業し、その国にフォーカスしているエージェントとしか契約しない。ローカルとしか契約しない。と言うルールを自分の中の決めごとにしています。それが、私が私のその国のクライアントに提供出来るプロとしてのサービスであると共に、外国人の私がその国の案件を撮影する事でその国のローカルのチャンスを奪っている事に対する最低限の礼儀だと信じているからです。そして実際、お飾りだけでフォトグラファーが所属して何年間も全く仕事をしないエージェントは五万といます。そして私自身がエージェントに「ね~ね~、お隣の国の仕事もとってきてよ~。」なんて事はまず言いません。言った所で機能する可能性が低い。穫りにいくならば自分で穫る方が可能性は高い。
今世の中は、グローバル展開が簡単になり複数の国と仕事をするのは不可能ではない。しかし、それはその国のローカルの人間が協力してくれてやっと成立するものだと思います。インターネットは世界を小さくしましたが、緊急事態が発生した時に瞬発力発揮するのはローカルの人間です。緊急プレゼンに対応するのもローカルです。外国人が理解出来ない文化やその国の方法を理解・対応するのもローカルです。
グローバル展開とは個々のローカルの協力の下にやっと成立するものであり、俺様一人の力でグローバル! なんて言ってる輩はアホです。私もそのアホに近い存在ですが、やればやる程自分をサポートしてくれる各国のエージェントに感謝しますし、彼らのお陰でこんなボンクラでも色んな国で仕事が出来ています。例えば、俺たちNYだぜ~。とかパリからなのよ~。とかロンドンなんだけどさ~。なんて欧米の訳の分からん上から目線を戦略にして、他国に連絡する人も実際知人におります。しかし、その方法では個人的には一緒に仕事は出来ない。どの国と仕事する時でも対等な立場で仕事すべきだと思っているからです。
日本として海外で勝負する場合、例えるとどの国でも自分の得意とする相撲ルールで勝負させてもらおうしても、そうは問屋が卸さない。アウェーのルール。アメリカならアメフト、ロンドンならサッカー、フランスならフェンシング、中国ならカンフー、カナダならカーリング。。。のルールで勝負した上で結果を残さなければいけない。それにはアウェーのルールを知り尽くすチームが必須。言葉が話せないのが理由なだけで、日本人のみで組んだ所で本当の意味でのアウェーでの実績はつめない。色んな国の色んな思想、文化、知識を持つ人間と組みましょう。それが「自分の想像もしていなかった結果」を生み出す事があります。
今回のように緊急事態でフライトを一日ずらし、諸々の調整を瞬発的にしてくれた自分のチームに改めて感謝しました。そして色々気づかせてくれもしました。自分の活動や自分が自由に動けているのは、それを理解しサポートしてくれる各国に散らばる私のチームメイトなんだと。
あ、それとちょっと報告です。つい先日アメリカのThe society of publication designers(http://www.spd.org/)という米雑誌業界の一番大きな賞で、シルバーを頂きました! ちょっと棚からぼたもちでしたが、フォトグラファーのみではなくデザインディレクター、フォトディレクターが一緒に頂ける賞です。アメリカで写真関連の賞はこれまで何度も頂いているのですが、このように一緒に紙面作りに関わった人間が合わせて頂ける賞は初めてです。授賞式もアホみたいに豪華でした。今までの賞とはちょっと違ったうれしさがありました。(案の定カメラ忘れて写真は撮っていません。。。)
私をいつまでもチンピラやボンクラと思い、何やってるか理解してないオカンと、何故か分からないが「はよ大阪に帰ってきて大工修行をせい」と勧めるオトンに、また一つアメリカでなんとかやっていると言ういい訳が出来ました。ま、それでどうせナンボもらえねん? と言う話で終わるのは目に見えているのですが。。。
では。
全く関係ないですが産休中の気分です。
シカゴのオヘヤ空港にて。
ヨーロッパの僕のエージェントの後ろ姿。
もらった賞です。
Munetaka Tokuyama - Photographer
大阪出身NY在住。
現在アメリカ、ヨーロッパ、日本、香港のレップと契約し国問わずワールドワイドに広告、雑誌中心に活動中。アメリカにて受賞歴多数。Clients_NIKE,REEBOK,CANON
etc.躍動感ある写真では多分世界中で誰にも負けませんし負けてません。
WEB : munetakatokuyama.com
BLOG: munetakatokuyama.blogspot.com
TWITTER: twitter.com/#!/munetakanyc
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