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作品詳細

無題

山本彩乃

無題/山本彩乃

作家プロフィール

山本彩乃

山本彩乃

1980年山梨県生まれ。
東京学芸大学教育学部美術科卒業。
バンタンデザイン研究所、外苑スタジオを経て独立。
雑誌・広告等で活動中。
http://www.secession.jp/

Ayano Yamamoto

Photographer
BORN IN YAMANASHI , JAPAN
TOKYO GAKUGEI UNIVERSITY , JAPAN
VANTAN DESIGN INSTITUTE
WORK AT GAIEN PHOTO STUDIO
FREELANCE PHOTOGRAPHER
IT WORKS THE MAGAZINE AND TO ADVERTISE.

作品仕様

作品名無題
作家名山本彩乃
エディションOpen Edition
サインあり
技法ピエゾグラフ
作品本体サイズA4
お届け期間3週間以内
品番AY005-11000007
作品本体価格49,800円(税別)
額装込み59,800円(税別)

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多重露光は神様がくれた偶然の宝物。 1+1=2にはならない。 その不確実性が面白いし、楽しい。 - 山本彩乃

雑誌や広告で活動中の山本彩乃さん。
作品を販売するにあたり、
普段からライフワークの一つとして取り組んでいる
多重露光の作品を中心に話を聞いた。

多重露光で作品を作ろうと思ったきっかけは何だったのですか。
大学の時に写真を始めたのですが、当時はポジフィルムを使っていました。ポジは露出を慎重に決めないと、適正で撮れないじゃないですか。私はそういう「適正露光=正解」のような図式があまり好きではなかったんです。仕事でもないですし(笑)、学生の作品撮りなので、敢えてプラス2段とか、マイナス2段とか、けっこう両幅(ハイライトからシャドウ部までのラチチュード)一杯に振って遊びで撮っていました。
それをラボに出してマウント仕上げにしてもらううと、映写して見られるじゃないですか。学校の授業で、自分達の作品をプロジェクターで見る機会があって、ふとした時に、すごく明るいポジを2枚、偶然重ねて光りにかざしたら、すごくキレイだったんです。それが逆光の作品です。
これは夕暮れ時に自転車が置いてあった場所の写真と、お花畑の花を真ん中に大きく寄って撮った写真の2枚を重ねています。明るい写真どうしを重ねたら、ちょうど適正露光くらいの明るさになって、面白かったんです。
ネガフィルムでもやってみました。カメラに多重露光の機能が付いているので、最初はそれで撮っていたのですが、今撮った同じ位置でしか重ねられないという、もどかしいことになってきて...。でもその時私は、「魚が空を飛んでいる写真」を撮りたかったんです。でもそれって、水族館と外というまったく違う場所じゃないですか。「だったら先に同じ場所で1本撮ってしまえばいいんだ!」と思い、水族館だけでペンギンや魚だけを撮って(笑)、パトローネのベロを残して巻き戻し、適当なところで空や雲を重ね撮りしていました。
作品イメージはどんな時に浮かぶのですか。
例えば飛行機で空を飛んでいる時に、「雲がモコモコしていて触りたい!」って思ったことないですか? でも絶対無理じゃないですか。だから写真で、現実と現実を合わせた「非現実の世界」がリアルに感じられるのって面白いなあと思って。自分が見てみたい、体験してみたい、という風景をイメージすることが多いですね。
イメージが浮かんでも実際に作るのは難しそうです。
カメラによっても重ね撮りした写真のずれ方が変わったりするので、それで色々試していました。合わせた時の写真の色や光が想像していたものと違ったり...、数を撮ることで、経験を重ねていきました。たくさん失敗する中に、毎回1~2枚良いのがあるんです。失敗の多さよりも、1~2枚の奇跡がどんどん増えていく感じが楽しかったですね。
「こういうイメージで撮りたい」と思っていても、うまく撮れない時もあって、しばらく多重露光で撮らなくなった時期もあります。自分の作品だし、無理矢理作る必要もないですしね。「撮りたいと思った時に撮ればいい」と。
そんな折、コマーシャル・フォト誌に多重露光の作品を載せているのを見た方から仕事の依頼がきました。それは、まだ出来ていない建物の広告だったのですが、「そこに住めばまわりには素敵な世界がある」ということを、その場所の近隣で撮った多重露光の写真で見せるという企画でした。
場所の告知もしないから、「なんとなくあの辺かな、とわかるような、わからないような素敵な世界を」という依頼でした(笑)。それで、私が一人でその場所に通って、好きに撮ってどんどん渡す、という流れでした。
時間の都合もあり、また私が使っているNikon D300が、たまたまピッタリと多重露光ができる機種(RAW撮影のみ)だったので、デジタルカメラで撮影しました。
自分で意図的にトリミングをすることなく、ただカメラの中で重ねていくだけなので、「なんだ、フィルムでやっている時と同じだな」と感じたんです。
ポジでやったり、ネガでやったり、デジだったりしますが、結局、多重露光のやり方の根本はアナログというか、変わっていないんですね。
ただデジタルは質感がツルッとしてしまうので、私はネガで多重露光した時のざらっとした感じが一番好きかなぁ。あとデジタルカメラの場合は結果が見えてしまいますが、ネガだと現像が上がってプリントするまでわからないので、それが大事だったりします。
結果が見えない方がいい?
そうですね。見えないことの方が、より集中力も高まるし、より「奇跡」を呼べる気がするんです。見えると安心感があって、仕事でする分にはいいのですが、見える事で「作る」という意識が働いてしまいます。それでは違うものになってしまいます。
たくさん失敗すればするほど、その中にうまくいったと思えるカットがあると、喜びもひとしおです。全部成功すると(そんなことはあり得ないのですが)、ありがたみがなくなりますね(笑)。
学生時代に「画像同士をレイヤーで重ねて合成しましょう」という授業もありましたが、全然面白くないし、センスもない(笑)。自分には向いてないと思ったし「カメラに委ねる」という行為が大事なんだと、それで気づいたんです。意図的にやるのが好きじゃないんでしょうね(笑)。
色味の計算はしているのですか。
撮り始めた頃は、金魚と風景を合わせた時に空がピンクになるなんて、思わなかったんです。お花畑を撮りに行っている時が曇りで白っぽい空だったんです。そのため現像が上がってきて驚きました。
でもだんだんと経験を重ねることで、これとこれを足すと、こんな色になるのでは、ということが少しずつわかってきました。でも必ず計算通りにはいきません。1+1=2にはならない。その不確実性が面白いし、楽しいです。
露光は1/2ずつで撮るのですか。
あまり意識していません。一度、「こうすればうまくいく」ということを、データをとって機能的にやってみたことがあるんです。「この露出のこの写真とあれを組み合わせればこうなる」とか...。確実なところを狙ってやってみたのですが、全然楽しくなかった。「こんなんじゃない!」 私が撮りたいものは、現実に見えている世界と世界を合わせたその先の「ミラクル」であって、計算して撮るのはやめました。魚とかペンギンとか雲とか、そういうキーワードだけで撮る方が私には合っている気がします。
きっちりとデータを取れば、ある意味適正露光としての成功率は上がるのでしょうけど、それが写真的に成功しているとは限りません。むしろ意図的にやらない方が良いものが生まれます。
今やレタッチも合成でも何でも出来る時代です。それ故に完成度の高さばかり追い求めて、
大事な何かを失っている気がします。
パソコン上で処理することは、作り込んでいくという作業なので、撮影とは明らかに違ってきます。刹那を切り取って、しかも多重露光の場合は2度の偶然がうまく重ならないといけないので、偶然の二乗ですね(笑)。カメラにまかせるとか、神頼み的なところを信じているので、それが楽しい。根底にあるのは「楽しいかどうか」というのが自分の中のモチベーションです。
空、海、植物、生き物等の自然や生物というのが、大きなくくりのキーワードとしてはあります。たまに人工物が入っていても、それも自然のものと溶かしちゃったりしているのが多いかもしれません。
例えば菜の花とビルの写真。たくさんコンクリートのビルが並んでいるけれど、そういうのが植物やお花で包まれていたら、ハッピーじゃない? と思ったんです。菜の花がビルを埋め尽くしている感じが撮りたくて、この作品が生まれました。
ロケ場所は多摩川の土手。二度目の露光はカメラの天地を逆にして撮っています。曇天で空の部分は白いので、真ん中だけ色がのりました。普通に同じ角度で撮っているものもありますが、面白くなかった。ひっくり返したらどうなんだろう? と、いうのも自分の遊び心の中から生まれたものです(笑)。「お花とビルを合わせたい」という気持ちだけで、あとは現場で実験をしながら楽しく撮っています。