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作品詳細

「1:1」

伊藤之一

「1:1」/伊藤之一

作家プロフィール

伊藤之一

伊藤之一

1966年愛知県生まれ
1991年日本大学芸術学部写真学科卒
2000年博報堂プロダクツを経て、伊藤写真事務所設立
2003年写真展「入り口」(銀座ニコンサロン)開催
2003年写真集「入り口」出版(WALLより)
以後、「ヘソ」「電車カメラ」「雨がアスファルト」「凸」などの写真集を出版している。
高岡一弥氏、高橋睦朗氏との共著本に「百人一首」(pie books)がある。

Yukikazu Ito

1966 Born in aichi-prefecture.
1991 Graduated in Nihon university, photography of art.
2000 Active as photographer of Ito photo office inc.
Puburication
"Entrance" "Navel " "Tetsuo" " Train-Camera" "Reflection"
"Rain-asfarut" "Totsu" (by WALL)

作品仕様

作品名「1:1」
作家名伊藤之一
エディションOpen Edition
サインあり
技法ピエゾグラフ
作品本体サイズA4
お届け期間3週間以内
品番YI004-16001133
作品本体価格-
額装込み30,000円(税別)

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テーマを決めたら 凄まじい集中力で撮影にのめり込む。 そして、誰にも真似できない視点で いつも新鮮な驚きを提案してくれる。 - 伊藤之一

広告写真の仕事をしながらも、
精力的に写真集を制作し、作品を発表し続けている伊藤之一さん。
そんな伊藤さんに、テーマの見つけ方や
どのような気持ちで作品撮りに取り組まれているのかを聞いた。

伊藤さんはもともと広告写真の制作会社にいらしたわけですが、
最初に作品撮りをするようになったきっかけを教えて下さい。
たまたま長期の撮影で缶詰になったスタジオが、東京湾に近かったということもあって、撮影前や撮影が終わった後に見る東京湾の色に惹かれて撮り始めたのがきっかけです。
普段東京で生活をしていて、東京で広告制作に携わる中、その一番の周辺というか、一番自然に近い雰囲気がするのが東京湾だったんですね。今思えば、自分の中でリフレッシュも兼ねていた気がします。
それと20年程前、たまたま先輩が退職するということがあり、その先輩が「広告の仕事だけって寂しいよな」って、ボツリと話すんです(笑)。「まだ会社にいる人間に言われても」的な部分はあったのですが、その言葉も記憶に残っていますね。
それで2000年頃から、東京湾を様々な場所から撮り始め、写真集「入り口」として発表したのが2003年です。会社は2000年に辞めていたので、「入り口」の撮影に入っていた頃は、すでにフリーで活動していました。
人によっては山を撮りに行く方もいるでしょう。でも僕の場合、自分の生活と全く関係のないところで撮るというのはリアリティを感じなかったので、それで東京湾を選んだというか、気がついたらブラブラしていた、という感じです。
写真を販売するにあたって色々なシリーズから作品を出して頂きましたが、
振り返ってみていかがですか?
今回販売するにあたり、ここでは出していないものも含めて改めて見直してみました。写真集として発表した最初の作品が「入り口」(東京湾の風景)だったわけですが、全体を俯瞰する中で「自分のベースってここにあるんだなあ」と感じましたね。
山手線の窓から長時間露光で全駅を撮影した「電車カメラ」もユニークです。
この写真集を制作するために、山手線を500周くらいして撮りました(笑)。これはリコーのGRデジタルで撮影しています。コンセプトを一言で言うと「街の色化」です。様々な特徴がある街を色にして、特性をあぶり出すというか。電車の窓にカメラを押し付けて街をスキャンしていく、という感じです。自分が持っているその街の印象を、色で提案するという試みです。
ここに出している3作品は、新宿、浜松町、鶯谷駅の前後で撮影したものです。昼、夜、バラバラの時間帯で多数撮影しています。その中で新宿は、夜のネオンといか、繁華街のイメージで、ここでは雨の日に撮影したものを選びました。新宿のワサワサした感じが滲み出ていると思います。
浜松町は東京タワーが写っています。ビルの隙間から現れる東京タワーを露光する形になるので、東京タワーが3本写ることになります。鶯谷は、大人の色香といいますか(笑)、妖しげな鶯谷のほのあたたかい感じが出ていると思います。
写真は飾って楽しむのがまず第一義としてあると思いますが、どなたかゲストが来られた際に「これは何ですか?」という質問から始まって、そこで会話が膨らむということもありますよね。
自分でイメージを膨らませる楽しみもありますが、作家がどういう意図で撮られたのかを知って楽しむ。
プリントを買うという行為は、作者の思いも含めてという意味もありますね。
そう考えると「プリントを買う」という行為は作家やその作品との濃厚なコミュニケーションですよね。
その時撮った思いは一生変わる事はないので、消費されていく情報とは、ある意味対極にあると言えます。自宅にせよ職場にせよ、写真を飾ってある空間が、「癒し」や「プチ・パワースポット」になれば幸いです。
「雨がアスファルト」シリーズを撮るきっかけは何だったのですか?
このシリーズの前に晴天の奥多摩で、川が光り輝く様を 高速シャッターと超望遠の組み合わせで定着させた「ハレ」という写真集を出しました。そんな「水もの」を撮影していた時に「水はどこからやってくるのか?」という疑問から、頭の上から雨が降ってくる、という単純なところに行き着き、「雨が地表に到達する、まさに着水する瞬間を捉えてみたい」というところからスタートしました。またおこがましいのですが、千住博さんの、滝の絵に憧れている部分もあります。
着水する瞬間をストロボで捉えたものや長時間露光したものなど、撮り方は様々ですが、
「都会の雨」を感じさせますね。
そうですね。「自分が生活を営んでいるところで」というのが基本的にあるので、都内で撮影しています。何度も何度も同じ場所に撮りに行ったり...。何度でも、いつでも撮れるという場所がいいんでしょうね。そういうことの方が好きなんです。そうすると自然に、自分の生活圏内で撮影することが増えます。
最近は家の回りの面白い色や形を撮っているのですが、色に関しては敏感なんだろうな、ということは自分でも思いますね。常に色を意識しつつ、その時々の形が加わって、或は光が関与して、作品が変化してきている気がします。
最新作が「凸(トツ)」シリーズになります。
これはたまたま伊豆の海でロケがあったのですが、自分ではその時から岩場が気になっていて、それから撮影を始めました。伊豆や犬吠、城ヶ島や江ノ島等、場所は様々です。これもただ岩場を撮るということではなく、「別の惑星に到達したような」思いで撮っています。岩場の日常から別の場所へシフトしていくというか...。
今の時代、世界中もう見た事のないものなんて無いのではないか、風景も撮られ尽くしているのではないか、という意見もありますが、自分の視点さえ持っていれば、まだまだ新しいものは発見・提示できる、ということですね。
ことさら新しいということを意識したり、調べたりしているわけではありません。長時間露光もよくある手法です。ある被写体に対して「自分がどういう立ち位置をとりたいか」それを常に考えています。それが高速シャッターなのか、ノーファインダーなのか、超望遠なのか、コンパクトカメラなのか...。技術的なことや手法は後からついてくるものです。
そういう意味では根っこは広告写真にあるのかも知れません。広告の仕事では1つのキャンペーンや1つの企画に対して、最良の撮り方を考えていくので、作品撮りでも自分のスタイルを決めてしまうというよりは、表現したいものによって方法論を模索します。ある意味、体質として定着しているのかも知れませんね。