December 06, 2012
宮本敬文さんが、4年間に渡り操上和美さんを追い続けたドキュメンタリー映画「The Moment. 写真家の欲望」を東京都写真美術館で観た。
70歳を超えても現役バリバリな操上さん。仕事関係者以外は、なかなかお会い出来ない写真家の素顔が垣間見れるという意味でも、貴重な映像だった。
宮本さんは、全篇デジタル一眼レフカメラで撮影されていて、引きの絵は美しい。特に北海道の雪原を疾走している2頭の馬を、操上さんが撮影しているシーンにグッときた。
でも映像美以上に、今回印象に残ったのは、操上さんの言葉。
「光の反射に自分も反射する」
「毎朝、窓を開けて空を見上げる時、自分の美意識が起動する」
「(北海道の)農家で終わるのではなく、写真家になれば、色々な場所に行けると思った」
「写真が好きだからではなく、写真家という職業を選んだ」等々。
「朝起きて空を見た時、それが雨でも曇りでも、その空が美しいと感じるから写真が撮れる。逆に言うと、何も感じなくなったら、シャッターはもう切れない」。
常に光を体で感受している写真家らしい言葉だと思う。
おそらく操上さんの事務所だと思うが、ランダムに配置されたランプが点滅し、そのボタンを押していくという、いわゆる「動体視力」を鍛えるための装置があって、それを操上さんが練習しているシーンが出てくる。写真家にとって、眼は命。年齢を重ねるなか、そういう努力をされていることにも敬服した。
一方、宮本さんのカメラワークもすごい。常に寄っている。これはもう操上さんの奥さんよりも近い間合いに入っていて(笑)、その言葉、仕草、目線、全てを汲み取ろうとしているかのよう。
一眼レフの浅いピントを活かしたボケ感が、全篇に渡って活かされている。顔から、手先の仕草に寄って、また顔に戻る。このピントの移動をピシャリと決めるのは、相当慣れていないと難しいだろうと思う。
(というか、宮本さんがフォローフォーカスで距離を合わせる練習をされているのを、以前から伺っていたので)。
編集は、「アクティブ・シネ・クラブ」でされたそうだが、宮本さんの事務所でも編集できる体制もある。
正直、「眠くなるかな」という予想は裏切られ、最後まで惹き付けられた映画だった。
EDITOR PROFILE
Web Magazine「SHOOTING」編集長。株式会社ツナガリ代表。もと月刊「COMMERCIAL PHOTO」編集長。 Editor、Producer、Photo Director。 フォトグラファー、ヘアメイクのマネージメントもしています。
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