August 17, 2015
サントリー オールフリーのキャンペーンHP
「佐野研二郎デザイン」として、現在行なわれいる、サントリーオールフリーのトートバックプレゼントキャンペーンで問題が生じている。
もともと30種類あったものから、「佐野氏側から8種類の賞品を取り下げを要請し、発送を中止した」というもの。「第三者のデザインをトレース」と事務所HPには書かれてあるが、要するに引用したわけである。
ポイントは「佐野研二郎デザイン」とサントリーのWebサイトに書かれてあるが、実際は佐野氏がデザインしていなかった。デザイン自体が、第三者のデザイナーのものを引用していた、という2つ。
佐野氏がデザインしたものと思って商品を購入し、応募しようとしていた消費者が一番残念な思いをしているのではないだろうか。そして、佐野氏がデザインしていたと思っていたサントリーや広告会社も被害者かもしれない。
スタッフにコンセプトを投げ、デザインさせたものの、「まさかそんなことをするとは、微塵も思わなかった」佐野氏も、ある意味(内部的には)被害者かもしれないが、「佐野研二郎デザイン」と銘打ってプレゼントされる賞品である以上、対外的には引用したデザインを自分の作品としてビジネスをしていたわけだから、チェックが甘かったと言わざるを得ない。
デジタル時代の著作権の意識。そしてパクリとオマージュ。
問題は「一流と評価されているアートディレクターの事務所のデザイナーでさえ、著作権の意識がまるでなかった」ということ。
よそから取ってきた画像を引用し、「佐野研二郎デザイン」として、一流企業である「サントリーの仕事」として提案する。これ、普通だったらビビってできません。そういう意識すらないから、堂々とできるわけです。
本案件について、「どういう発想でデザインしたのか」「素材はどこから手に入れたか、撮影したのか」、広告会社やクライアントへ提案する以前に、そういうやりとりがなかったなら「佐野君、丸投げしすぎやん」と思うし、そこで虚偽の発言をしていたら、スタッフの罪は重い。
今の時代、ネットから無限の情報を得ることができるし、まったくの無から何かを生み出す方が難しい情報化社会。だからこそ、先人が作ってきたものには、リスペクトとオマージュが必要です。
有名無名問わず、誰かが制作したものをそのまま引用することは、一番やってはいけないこと。それも仕事ならなおさらです。
今、必要なのは、デザイン学校や写真学校でまず「著作権」をきちんと教えること。能力はともかく、Macやデジカメがあれば、学校に行かなくてもデザイナーやフォトグラファーになれる時代ですが、「表現を生業とする」職業については、各種専門学校や大学、デザインや写真関連団体も、「著作権」の意識を今まで以上に教えていくべきだと思う。
写真の著作権と二次利用
最近、写真データの二次利用についても、色々問題が発生しています。
例えば、雑誌を電子書籍化した際のコンテンツの二次使用料の支払い。雑誌で撮り下ろした写真をそのまま、企業のカタログに使い、クリエイターに二次使用料が払われない、もしくは微々たる金額しか提案されないケース。
また、あるカタログのために撮影したものが、そのビジュアルの評判が良く、予定していない媒体(例えばビルボードやWeb展開)に発展したのに、ちゃんとした二次使用料が支払われないケース。
これはクリエイターサイドだけでなく、企業、広告会社、出版社等にも、検証してほしい問題です。
嗅覚と触覚が必要なコンテンツ以外はデジタルデータ化され、ネットで流通する時代。それが当たり前の世代がどんどん社会に出てきている今、早急に著作権という意識を根付かせないと、これから先、このような問題がさらに増えていく気がします。
米国のデザイナー、ベン・ザラコーさんがデザインしたものと、サントリー オールフリーのキャンペーン商品を比べたサイトから引用。
EDITOR PROFILE
Web Magazine「SHOOTING」編集長。株式会社ツナガリ代表。もと月刊「COMMERCIAL PHOTO」編集長。 Editor、Producer、Photo Director。 フォトグラファー、ヘアメイクのマネージメントもしています。
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