●IQ180デジタルバック

  • CCDセンサーサイズ:53.7x40.4mm
  • ピクセルサイズ:5.2x5.2ミクロン
  • 画素数:8000万画素
  • イメージの画質:16bit
  • イメージバッファー:1 GB advanced high speed RAM
  • ディスプレイ:3.2インチのレティナタイプのマルチタッチスクリーン115万画素。
  • 対応カメラ:フェーズワン645DF、マミヤ645DF、ハッセルブラッドH1、コンタックス645AFなど。
  • タッチした部分を拡大できる「インスタントズーム」を装備。ヒストグラムやハイライト警告表示のフルスクリーン化も可能。USB3.0、Firewire800の接続にも対応。

広告、ビューティで活躍するフォトグラファーの渡邉肇さんに
フェーズワン社の最新型カメラとデジタルバックを使用してもらった。
渡邉さんにそのファーストインプレッションを聞く。

渡邉さんは普段、ハッセルブラッド+フェーズワンP65+という組み合わせで仕事をされています。今回は、本番のビューティカット撮影時に、フェーズワンのカメラボディ(Phase One 645DF)とIQ180(8000万画素)を途中で使って頂きました。ぶっつけ本番に近い状態で慣れていない面も多々あったと思いますが、まず触った印象から聞かせてください。

本番撮影時ということもあり、IQ180の背面液晶は少ししか触っていないのですが、僕が使っているフェーズワンP65+(以下P65)と比べてタッチパネルになったことで、フォーカスチェックがしやすくなったし、ヒストグラムが出るなど、そういう部分は便利になりましたね。
 バック自体は8000万画素あって、P65+のさらに1.3倍ですから、「画素数的にはスゴイ!」としか言いようがないです。スピードに関しては、P65の方が早いかな。IQ180はRAWで1ショット約75MB(P65は約52MB)ある割にはサクサク撮れていたと思いますが、P65のスピードに慣れていることもあるので、もう少し早く切っていけるといいですね。
 フェーズワンのボディとシュナイダーレンズの組み合わせでしたけど、慣れないせいもあって、ピントの山が少しつかみ辛かったかな。絞ってはいたけれどピントの合う層が浅いと言えばいいのかな。僕が使っているカールツァイスのレンズとは違う感触でした。
 ハッセルの場合、機械式カメラのためかシャッターを切ると、強制的にPCにデータを送り込みますが、645DFの場合、シャッターを切ってからReadyサインが出るまで次が切れないんですね。データ容量が大きいためか、少しもどかしい感じがします。
 フォトグラファーとしては「続けて撮りたい!」と思う瞬間があるんですね。そこでシャッターが切れないのはすごいストレスなんです。フィルムにはそれはあり得ませんからね(笑)。電子制御でもとにかくシャッターは切れて、PCに溜めていけるようにしないとカメラに「撮っていいよ」って言われているみたい(笑)。
 マミヤ645ボディにAFとシュナイダーのレンズが売りなので、スピードの問題、シャッターレリーズの問題等がクリアになればかなり魅力的ですね。この撮影の時はMacProの8 coreのマシンを使っていたので、そんなに遅いシステムではないはずです。ケーブルの転送速度がネックならUSB3.0搭載のWinマシンを使うか、MacにUSB3.0が搭載されれば、かなり早くなるのではないかと思います。あるいはThunderboltが標準化されるか、ですね。IQ180もPC接続ではなくメディアに記録するやり方なら、もっと早く動作するかもしれません。

渡邉さんのフェーズワン使用歴は長いですよね。

 そうですね。P65の前はP45、その前はP25、その前はH20だったかな。P45になって2秒間隔くらいでシャッターが切れるようになり、やっと「速くなった」という印象はありましたね。そのスピード感のままP65まできたという感じ。
 当初、ジナーバックを買おうと思って説明を聞きに行ったのだけど、ジナーは光ファイバーを使っていたんですね。配線も複雑でこれが断線したら代替えがないから、その為の予備の予備まで必要になってくる。でもフェーズはFireWire1本接続でシンプルだし、ケーブルもどこでも手に入れやすい。またスリープ機構だと熱がこもらなくて画質がいいということで、ジナーを買いに行ったのに、フェーズを買ってしまった(笑)。

ボデイもレンズも違うので、正確な比較にはなりませんが、実際に使ってみていかがですか。

 ビューティカットの場合は解像力と共に質感描写が大事ですよね。IQ180の場合は画素数としては充分なのですが、カメラそのものを使い慣れていなかったのと、レンズの描写があまり馴染めなかった部分があります。Capture One上で比較した画像を見て頂ければわかりますが、画素数が少ないP65の方が少しシャープな感じがします。これはレンズの描写力や癖、絞りがどのあたりが一番おいしいのか等、知り尽くしたレンズと始めて使ったレンズでの比較でもあるので、公平なジャッジをするのは難しいですね。
 僕はビューファインダーを使うのですが、覗いた時のスクリーンまでの距離感が重要なんです。ハッセルの場合、45度のビューファインダーは感覚的に画面の全部がどうなっているかを把握しつつ、自分のピントを合わせたいところがすごくよくわかるんです。そのため、全体の絵柄を理解しながら目やまつ毛にピンを合わせることができます。でもフェーズボディのアイレベルファインダーの場合、スクリーンから目までの距離が一歩遠いんです。全体の絵柄は把握しやすいのだけど、少し遠い所で起こっている世界を見ている感じ。アイレベルの方が、カメラから顔を外した時に、被写体との高さがわかりやすいという利点はあるのですが、覗いている時の集中力が高まるのは、僕の場合は45度のビューファインダーがベストですね。
 撮影での優先順位は、撮っている時のフィーリングが一番大事で、その次にレンズ特性、そしてデジカメのスピードや画素数になってきます。全部いいにこした事はないのですが、優先順位をつけるとそうなります。IQ180の場合は、スピードとフィーリングにおいて、自分が使っているハッセルとP65のシステムに追いついていない部分はあるのですが、慣れていないところも多々あったので、ぜひ長期間使ってみたいです。
 あと今回は出来なかったSensor+を選択した時の2000万画素の画質にも興味があります。ISO感度が上げられるからという理由ではなく、8000万画素を必要としない撮影で、一眼レフタイプの2000万画素クラスとどう違うのか、質感描写、スピード、その辺は是非テストしてみたいですね。

  • IQ180左:メイク中のRyujiさん。右:フェーズワン645DFとIQ180、シュナイダーレンズでテスト撮影。
  • IQ180左:ライティングはタフニール越しにトレペ付きアンブレラ2灯。右;ハイライトの位置を探りながら撮影。
  • IQ180ハイライトとは別に右サイドからもBOXライトで上半身全体を照らす。
  • IQ180左)IQ180 フェーズワン645DF、IQ180とシュナイダー110mmで撮影。
    右)ハッセルブラッドとP65+、カールツァイス ゾナー150mmで撮影。
  • IQ180IQ180(左)とP65+(右)を同比で表示したもの。画素数的には8000万画素あるIQ180が有利だが、
    P65+の方が若干シャープに見える。質感描写にはレンズの解像力も影響してくる。ただし、これは非常にハイレベルでの話で、
    どちらも描写力は非常に高いレベルにある。