- 2013.11.07
EOS 70D / 南雲暁彦
●主な仕様
- 撮像画面サイズ:約22.5×15.0mm
- カメラ部有効画素:約2,020万画素
- オートフォーカス方式:TTL二次結像位相差検出方式
- フォーカス方式:デュアルピクセル CMOS AF方式/コントラスト検出方式(顔+追尾優先AF、ライブ多点AF、ライブ1点AF)、専用AFセンサーによる位相差検出方式(クイックAF)、手動ピント合わせ(約5倍/10倍拡大確認可能)
- 液晶モニター:TFT式カラー液晶モニター
- 画面サイズ:ワイド3.0型(3:2)/約104万ドット
- 大きさ:約139.0(幅)×104.3(高さ)×78.5(奥行)mm
- 重さ:約675g(本体のみ)
新AF技術「デュアルピクセルCMOS AF」が話題のキヤノン「EOS 70D」。
スチルカメラとして、またムービー撮影はどう進化したのか、フォトグラファーの南雲暁彦さんのインプレッションを紹介しよう。
EOS 10Dからはじまり、もはや7代目となるEOS 70Dが発売された。
ぱっと見が先代60Dと大きな差がなく地味な印象をお持ちかと思うが、革命とも言うべき大きな進化をとげている部分もあるのだ。
道具というのは使い手次第であり、これはプロ機ではないからと侮っていると損をするのではという感じすらあるカメラである。
驚異的に進化したライブビュー時のAF速度
EOSのAPS-Cシリーズでは久々となる画素数アップやファインダー視野率、コマ速のアップなどベーシックな部分にも大幅にスペックアップが計られ、まずはカメラの基本性能を上げつつ、やはりこのカメラの革命とも言える進化はデュアルピクセルCMOS AFによるライブビュー時のAF速度、精度の向上にある。
デジタル一眼にライブビューが搭載され、バリアングルモニター搭載モデルも増えて来ているが、動画にせよ静止画にせよお世辞にも片手でフォーカスをAF任せにしながらサクサクと撮影できるちゃんとしたカメラは無かったと思う。
このデュアルピクセルCMOS AFというのは簡単にいうと、撮影に使用する全有効画素数がすべてAFの為のセンサーにもなっている。ことライブビュー使用においては、もはや「もっと端っこまでセンサーが欲しいんだよね」みたいな話は不要になった。液晶がタッチパネルになっており、タッチフォーカスの機能を使用すれば、どんなに端っこでも触ったところにスッとピントが合う。合焦。
驚くべきはその合焦スピード、動体の追従性にある。しかも素晴らしいのはほとんどどのEFレンズを使用しても従来機に比べると、エっというほどフォーカスが速い。しかも被写体を追いかける。
最近シリーズ化されつつあるステッピングモーター内蔵のSTMレンズはさすがに静音性、スムーズ差において素晴らしいが、元々静かなUSMのレンズでも十分に進化を実感できる。
そこで、実際に動体の撮影を試みた。海でモーターボートを縦横無尽にはしらせ、簡単な動画用の三脚に乗せての撮影である。
※FullHDで撮影し、Web用にリサイズしています。
こういう作例は今までもさんざん撮ってきたが、正直ちょっと酷かとおもっていた。なにしろモーターボートを画面に入るように追いかけ続け、ズボラに回し続けただけである。望遠レンズを使用したのでちょっとしたピンぼけもすぐに解るのだが、フォーカスがまよったり一瞬外れたりということが全くなかった。
ご覧いただけばわかるが属にいうビデオカメラと同じように、フォーカスを合わせ続けてくれる。これは今まで一眼レフ動画の世界に壁として立ち塞がっていたフォーカス問題をかなりのレベルで解消していると言う事だ。
取材やインタビューレベルでは、本当にAFにおまかせでいける性能をもっている。今までのEOSではライブビューAFを使用するとフォーカスが行き過ぎて、戻ってきて、ピピっと合う感じだったが、フォーカスが行き過ぎることはなく、ほとんどの場合一発で被写体に合焦し、しかも合わせ続けることが可能...。
「これは革命的だ!」と感じた。実際に東京ドームで行われたコンサートの裏方という真っ暗に近い戦場のような現場での撮影にも使用してみたが、元々の機動力にプラスして頼りになるAFのおかげで、かなりの歩留まりの良さを体感できた。
ちょっと気をつけたいのは、非常に優秀な顔認識をするAFモードは顔が正面から横を向いている間はスムーズかつ迅速にフォーカスを合わせ続けるが、ぷいっと後ろを向かれてしまうと迷ってしまうことがある。
そう言うときはすぐさまタッチフォーカスで後頭部をタッチしてやればよい。動き回るのが解っている撮影なら最初からそれでもよい。
このAFを手に入れたEOS70Dは60Dで搭載されたバリアングルモニターを別次元で使いこなせるカメラになった。とうとうローアングルもハイアングルも、ストレスなく撮影できる。
最後に、やはり気になる画質だが、僕が画質の評価が一番しやすいと思っている夜景の画像をみていただきたい。
おそらく世界で一番珍しい風景の一つである月光の虹、ルナレインボーの写真だ。
光源は月光のみ、月光に照らされた世界最大の水量を誇るイグアスの滝、そしてそこにかかるダブルレインボー。
これは肉眼でみてもはっきりわかる美しい風景で、ここに立てばだれでもこれを写真におさめたいと思うだろう。実際この世にも珍しい夜景の現場にはアマチュアカメラマンが様々なカメラをもって僕の横で撮っていたが、みな見た目ほど美しく写らず...、僕の持つ70Dの背面液晶をみて目を丸くして帰っていった(まあ、こちらはプロですから、というのもありますが...)。
撮影の条件としては月明かりのみ、水しぶきでびしょびしょというかなり厳しい状況で、この撮影は行なった。三脚を使用しただけで特別なことはしていない。
AFのみならず。画質の部分でもしっかり進化している。夜景は以前からEOSの独壇場だと思っていたが磨きがかかった。ダブルレインボーをしっかり分離し、水面の表情をしっかり表現、奥にのびている欄干の柱一本まで認識できる解像度はすばらしい。2020万画素へアップしたCMOSとDIGIC5+は非常にバランスが良い。
またWIFIの搭載によりスマホからシャッターをきることも可能なったので、蝶の群れにカメラを仕込んで、遠くからシャッターを切ることでこういう撮影も可能になった。アマチュアからプロまで様々なシーンで使えそうなカメラだ。
■EOS 70D
http://cweb.canon.jp/eos/lineup/70d/
南雲暁彦
1970年生まれ。
幼少期、ブラジル・サンパウロで育つ。1993年凸版印刷に入社。
以来、コマーシャルフォトを中心に、セミナー講師、雑誌寄稿等をこなす。
海外ロケを得意とし、世界中をフィールドに撮影を行なう。
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