- 2013.08.20
RICOH GR / Eiji Yuzawa
●主な仕様
- 有効画素:1620万画素
- 撮像素子:23.7mm×15.7mmサイズCMOS
- レンズ構成:5群7枚(非球面レンズ2枚)
- 焦点距離:18.3mm(35ミリ判換算で約28mm相当)、
- F値:F2.8~F16
- 大きさ:約117.0(幅)×61.0(高)×34.7(厚)mm(操作部材、突起部を除く)
- 重さ:約245g(電池、SDメモリーカード含む)
リコーイメージングから発売された新型「GR」。
センサーが大型化され、今までの「GR DIGITAL(以下GRD)」シリーズを所有しているユーザーも「実際どうなんだろう?」と思っている人も少なくないはず。
そこで実際にGRシリーズのユーザーであるフォトグラファーの湯沢英治さんに、新旧GRの印象、違いを聞いてみた。
正常進化の5代目「GR」
今回、5代目となる「GR」が、大きく変貌を遂げた。一見今まで通りのデザインと変わらないように見える。さすが一貫したデザインコンセプトは素晴らしく、我が国では珍しいと思う。
過去のGRシリーズも「最強のコンパクトカメラ」を目指し、レンズ性能は一眼レフカメラのズームレンズに勝ると言っても過言ではなかった。
5年前、あるアパレルのカタログ広告撮影で、丸の内のビル群でモデルを撮影したことがある。その時某社の一眼レフカメラにF値の明るい、少し値のはる(笑)ズームレンズを使用し撮影をした。
しかし収差の限界から、ビルはかなり内側へと傾き苦い結果となった。その時、サブカメラとして使用していたGR1で撮影した結果、歪みが無くビルは垂直に建ち並び、結局、冊子の表紙はこちらのカットを使用する事になった。
「カメラとは何か」を自分なりに定義すると、自分の仕事からして当然「パートナー」である。では、このパートナーはどうあるべきかと言えば、「良い眼」「眼力」とでも言うべきか、臨場感を正確に伝えてくれる聡明さを持ち合わしている道具、と考えている。
パートナーとしての道具は、「直感」を優先した操作感とグリップの良いフィーリングを持ち、コンデションをサポートしてくれるものである。さらにタフであれば、これほど頼れる存在はない。まして、軽いということは体力の負担まで軽減し、行動範囲を拡大させる。GRは道具として、今までこの部分をきちんとブレないで持ち続けてきた。
では現状「GRD4とGRではどちらが良いのか?」。プライスがUPしたことで、このような質問を数名から受けた。正直に答えれば、「どちらもベストな選択」だと言える。
PCで言えば、プロセッサやハードディスクドライブのスペックをアップすれば、パワフルになりプライスもアップする。車に例えるならば排気量のグレードアップでスピードも安定感も上回る。当然この差異は等価である。
「形状は可能性を生み出す為に進化」する
新しいGRはセンサーがAPS-Cサイズとなり、ボディも少し大きくなり、パワフルになった。GRの動作のスマートなパワフル感は、POWERボタンを押し、レンズが出てモニタに画像が出るスピードだけではない。
撮影後のモニタ表示が、まるでトランプを切るようかのように写真をサクサクとめくれる動作が新鮮だ。
その他にも28mmの単焦点レンズではあるが、クロップモードで35mmとなること。センサーをトリミングすることになるが、GR4の画素の写りと同じだそうだ。その他にまだまだ新たな機能はあるが、自分自身、基本的にシンプルな使い方しかしないため、徐々にトライして行きたい。これで重たい一眼から解放され、身軽になったことは喜ばしい。
センサーの大型化で得たものと失ったもの
正直なところGRがAPS-Cとなり、自分としてはメインにしていた機能が失われてしまった。それは「1cmまで接写出来るマクロ機能」だ。APS-CのGRでは10cmとなってしまった(21mmのワイドコンバーターを使用すると4cm前後まで、マクロ撮影が可能)。
僕の写真集の「BONES」「BAROCCO」は、この1cmマクロによって肉眼では見れないDetailの世界を写し出した。初機から愛用したGRD1、2では1.5cm。GRD3、4では1cm。この機能は革命的だ。「文字」から「景色」までが撮れるのだから。
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01. 「BAROCCO」より。『ヨタカ 口蓋骨』この骨は、成人の親指の爪程の大きさだ。
02. 「BAROCCO」より。『メダイ 頭骨』 まるで氷細工のようなこの骨は、マクロによって気泡までが鮮明に写し出されている。
03. 「BONES」より。『アズマモグラ』 手のひらにのる程の小動物は、接写により、想像以上に迫力ある被写体へと変貌した。
また、JPEGで撮影したものでも、ラムダプリントの全紙でもクリアに写っている。今の自分にとって、GRD4は最後のマクロ機となったため、簡単に外へ持ち出すことが出来なくなった。
現在、3冊目となる写真集に向けての撮影で、本日もGRD4のマクロ機能が活躍をした。このように、GRシリーズとは言え、各種別の機能を持つカメラのため、GRD3、4を所有している方は、手放さずに目的により使い分けると言ったことがベストだと言える。
GRD4とGRの作例比較
三脚を立て同じ位置から撮影。
画角は搭載センサーのアスペクト比を基準に決定。APS-Cは3:2のセンサーなので、その対角線で35mm換算28mm相当。
GRD4は4:3センサーなので同様にその対角線で28mmになるように設計されている。
そのため、APS-CのGRは、やや望遠気味となり28mmの広角感がない。モードは 「プログラム」で、「マクロ」モード「入」にし、「AE-BKT 1/2EV」で3カットのうち、GRD4は適正露出のカットだが、GRはややアンダー気味であるため、ハイキーのカットをセレクトした。
共に同じに拡大をして見比べるとAPS-Cの方に、当然余裕は伺えるが、そもそも「GR」レンズの性能が良過ぎるせいか、A3サイズ以上に大きくしないと差を感じないと正直思う。
「レンズ=眼」「CCD=脳」。自分の想いを伝える為には「聡明」であること(「聡」は耳がよく聞こえること、「明」は目がよく見えること)。これこそが、「GR」の本質だと自分は思っている。
- GRで撮影した作例
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左/都市はひとつひとつがデザインされた「線」の集合体だ。背景の雲が対照的によりビルの線を際立てている。
右/店先のデコレーションに写り込んだビル群だが、まるで、写真をシュレッダーにかけ、コラージュしているようだ。意図して作られたものも、異なる効果を作り出すことがある。
- カラー写真のシルエットはどことなく優しい気がする。
- 直線によって作られた曲線のオブジェ。
湯沢英治 Eiji Yuzawa
1966年 横浜市生まれ。独学で撮影技術を学ぶ。
広告、雑誌の分野で実績を積むかたわら、普遍的な事物をモティーフとした作品を撮り続け、個展も多数開催している。
2008年に写真集『BONES 動物の骨格と機能美』(早川書房)を刊行。スタイリッシュな骨格標本の写真と詳細な解説文によって、アートとサイエンスの融合に成功した稀有な写真集。
まるで生きているような逞しさ、美しさが強烈に感じられ大きな反響を呼んだ。これがアートと生物学双方の観点から話題となって多くの新聞・雑誌で高い評価を得、2009年3月 渋谷ロゴズ・ギャラリーにて「湯沢英治写真展 BONES」を開催。2009年5月 財団法人三宅一生デザイン文化財団21_21 DESIGN SIGHT 第5回企画展 山中俊治ディレクション 「骨」に参加。
また、2011年には2冊目となる写真集『BAROCCO 骨の造形美』(新潮社)を刊行し、ニューヨークの写真誌『pdn』に紹介される。
2010年に「水」の造形美をテーマに撮っており。『シュルレアリスムの水』と題し、不可思議な水の造形を捉えた作品も発表。
また、フランスにて撮影した作品『仏』RICOH(Photographers Gallery)、『仏蘭西 - 巴里の造形と色彩』TAMRON (B011カタログ)もある。
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