April 16, 2013
宮原夢画写真展「散華 sange」、渡邉肇「文楽っ?人間・人形 映写展」、腰塚光晃プロデュース「THE KIMONO NEW LOOK『Elly & Oby』」。
今年前半、まだ1/3しか経っていないが、自分が観て気になったこの3つの個展について。
「散華」とは、仏を供養するために華を散布する儀式。池坊の家元で花について学び、作品を制作した宮原さん。
日本の伝統芸能である人形劇の人形浄瑠璃=文楽と、人形遣いの吉田簑助師(人間国宝)、桐竹勘十郎師の動きに焦点をあてた渡邉さん。
日本発信のファッションフォトを考えた場合、その源流となる「着物(プロダクト)から制作する」という発想で『Elly & Oby』を立ち上げた腰塚さん。
自分と世代が近い三氏の個展やプロデュースした仕事を俯瞰してみると、そこには「和の心」「日本文化」というキーワードが浮かんでくる。
ルーツというか、日本文化を意識するのは、ある種「必然的な流れ」かもしれない。
ファッションフォトの分野で言うと、日本では本当の意味でのハイファッションを撮るのは、モデル、服等、色々障壁があって、中々難しいのが現状です。
私がごちゃごちゃ言うよりも、腰塚さんから届いたメッセージをここに掲載しますので、読んでください。
そもそも自分はHI FASHIONを撮るために写真家になった。
それは、セレブやメジャーなブランド撮ることじゃなく、世界のどこにもない新しい女性像を見たことない写真で表現することだった。
日本にいる中で、真のHI FASHIONを撮る機会にはなかなか巡り会えず、その答えを10年以上ずっと模索してきました。
その答えが「着物」なんです。
江戸にさかのぼれば、万人が着物を来てそれこそ世界のどこにもないスタイルが沢山あったんです。花魁とか歌舞伎ものはその頂点にいたはずです。
なのに、日本人はそのほとんどを捨て、西洋に憧れ、一気に洋服に変えてしまった。
そして、多くにのファッションピープルはいまだにパリコレに憧れ、そこを頂点ということにしている。
本当は世界で一番最初にモードが生まれたのは、江戸初期に着物の柄を民衆が流行として追ったことで、パリのモードはそこから100年後なんです。
今シーズンのプラダは着物がテーマです。むしろ西洋の人が「日本の美」をフューチャーしているのに、日本人がそこに目を向けず、外に気が行き過ぎている。
昭和に入り、着物の着付けは大きくいえばひとつのスタイルに固定されています。本当はもっと自由で、気易く、かっこいいHI FASHIONのはずなのです。
だから、自分たちの着物ブランド『Elly & Oby』で江戸の続きをやって国内外に発信していきます。
そして、自分の撮る写真は、写真がなかった時代の美人画に代わるもので、自分とっての「HI FASHION」なんです。
腰塚光晃
THE KIMONO NEW LOOK「Elly & Oby」情報
http://old.shooting-mag.jp/news/event/00494.html
April 02, 2013
伊島薫写真展「You are beautiful」と、玉川竜写真展「absolutely anonymous by Ryu Tamagawa」。先週この2つの展覧会を観た。
伊島さんの「You are beautiful」は、8000万画素の超高解像度デジタルバックIQ180で裸体を分割撮影。それを縦位置で繋げ、2.40m x 9.36mという巨大サイズの作品として展示。雑誌サイズや20〜30インチのPCモニタでは表現できない巨大かつ高精細な写真に圧倒された。
設営中のスナップ(伊島さんFacebookより)
玉川さんの作品は、全て一発撮り。モデルのポージングはある程度、演出していると思われるが、ロケでの光のあたる時間、場所、角度。モデルが吐き出す予測不可能なタバコの煙の形...。
伊島さんも玉川さんも沢山カットは撮っているかもしれないが、共通しているのは一発撮りという点。
(玉川さん展覧会作品から)
伊島さんの写真も、圧倒されたのは単に大きいからではなく、瞳の奥の写り込み、吹き出物、脇のヘア、整っていない足の親指の爪...、ありのままの「リアルな体」だからだった。これがレタッチされた写真なら、「大きく伸ばされたキレイな写真」というだけで、それほど印象に残らなかったと思う。
現在、世の中に出回っている広告、雑誌、アーティスト写真は、多かれ少なかれほとんどレタッチされている。制作者側も見る側も、「キレイに見える整った写真」を「普通」に受け入れている。
デジタルカメラやレタッチソフトの進化によって、誰でも簡単に写真が撮れ、修正や合成ができる時代。作品に関してのポイントは「シャッターに集中」した「ノーレタッチ」又は「やりすぎない修正」にとどめた写真だと思う。
「感じた瞬間を切り取る」という写真を撮る行為、本来の役割に原点回帰していくのではないか。私個人は、部分ごとに彩度やトーンが調整された整った風景写真や、ツルツルで質感のないポートレイトよりは、リアルフォトに惹かれる。
「デジタルカメラ+インクジェットプリンタ」VS「銀塩フィルム+印画紙」と言うツール的な軸ではなく、(気持ちの問題も含めて)「リアル」にこだわるのかどうかが、これからの作品制作のポイントだと思う。
EDITOR PROFILE
Web Magazine「SHOOTING」編集長。株式会社ツナガリ代表。もと月刊「COMMERCIAL PHOTO」編集長。 Editor、Producer、Photo Director。 フォトグラファー、ヘアメイクのマネージメントもしています。
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