初めまして。

この度は坂田編集長よりお話を頂き「SHOOTING MAGAZINE」でコラムを始めさせていただきますフォトグラファー藤森星児です。

New Yorkベースで活動を始めてちょうど10年が経ちます。『10年住んだらNew Yorker』とこちらでは10年という節目で暗黙の洗礼を受け、誰でもNew Yorkerになってしまいます。
実家の滋賀県以外でこんなにも長く住んだ土地がない自分が、10年という月日をあっという間に過ごしてしまったNew Yorkには、やはりそれなりの魅力があります。
第1回目は、「フォトグラファーとしてNew Yorkの一番好きな所」を書いていきたいと思います。

フォトグラファーとしてのNew Yorkの一番好きな所、それは"実力主義"なところです。

実力主義というとなんだか汗臭い、辛い、しんどい、恐い、友達いない、とんがりすぎ、胃が痛い、2日に一度しか風呂に入ってないといったイメージがありますが、ここにある全てを自分は避けて通ってきました。
自分の言うところの実力主義とは、「公平にチャンスがある」「公平に開くドアは開く」と言うことです。

New Yorkにやってきた当初、恥ずかしながら英語がほとんどダメでした。。。よく行くレストランといえばマクドナルド。なぜかというと『ナンバーワン!』と必要以上な巻き舌でRを発音してネイティヴに首を傾げられるような怪しい『ナンバーワン!』でも、ちゃんとビックマックセットが出てきたからです。もっと英語を頑張ってから来れば良かったのでしょうね。そうすればMacばかり食べているのに激ヤセする必要もなかったでしょう。。。

その頃に出会った日本人の業界人の方から、「日本人ファッションフォトグラファーがNew Yorkで成功するのは難しいね。日本人は物撮りだといいんだけどね。」と、言われたことがあります。そうなんです、自分はファッション写真を生業としているのですが、その当時自分が「ファッションでやってきたい」と人に話すと、よくこういう話を聞きました。言われるたびになんだか胸元がぞわぞわするような落ち着かない気持ちになったことを覚えています。ですがやっぱりそれはそれで統計的に間違ってない事実であって、それに関しては率直な意見でした。

ヘソ曲がりな性格で、無理と言われると無理じゃない、良いと言われると、本当かな〜?なんてまるで第一次反抗期を迎えている自分の3歳になる長男そのマンマな自分なので、日本人ファッションフォトグラファーがNew Yorkで成功するのは難しいと言われると、「じゃあ俺は頑張ってみよう!」となり、先輩のご意見を参考にすることができました。

そんな自分ですが、New Yorkに移住してから2年目に憧れの雑誌「V magazine」の撮影をやることになりました。

V magazine(http://vmagazine.com/)とは、New Yorkベースのファッション、カルチャー誌で編集長のStephen Ganが立ち上げた雑誌です。Stephen Ganはもはやコレクタブルアイテムと化しているVISIONAIRE(これは書くと長くなってしまうのでwebを確認くださいhttp://www.visionaireworld.com/)のファウンダーでもあり、Harper's Bazaarのクリエイティブディレクター、元Paris Vogueの編集長のCarine Roitfeldの雑誌CRのデザインディレクターを務めるなど、New Yorkといわず世界のファッション業界の横綱です。

そのStephenが手がけるV magazineも、New Yorkでは横綱的な雑誌でBruce Webber, Mario Testino、Steven Klein、Inez&Vinoodh、Mario Sorrentiなど、これまた紅白歌合戦のような顔ぶれのレジェンダリーフォトグラファー達が撮影している雑誌です。

しかも始めての撮影がなんと6ページ!!! なんだこの雑誌は!? と度肝を抜かれたことを覚えています。New York在住2年目ではもちろん上手い英語なんて話せません。ですが上手そうな英語を操り始めた頃でした。最初なんてそれでいいんです、十分なんです。
そんな怪しい英語を操る日本人が持ち込んだBookを見て、2週間後にこの撮影の依頼がきました。New Yorkの人は二の足を踏まずに長い脚でぐんぐん前に進んでいきます。