- Photographer
藤森星児
- 2018.02.20
昨年末の"ダウンタウンの絶対に笑ってはいけない"シリーズで、浜田さんの顔の黒塗りが日本でも大きなニュースになっていました。
色々な意見が交わされていましたし、日本でも"ブラックフェイス"がこのように問題になることがあり得るということが、広く出回った事自体はよかったのかなと思います。
以前にニューヨークのスタンドアップコメディーに関して書かせていただいた事があるのですが、私はアメリカのスタンドアップコメディーが大好きで、日本で言うところの2丁目劇場のようなところに見に行ったり、NetflixやHBOなどでもこぞってコメディーを見ています。そんな中、日本のお笑いとアメリカのお笑いの違いを考えていくうちに、自分のいる写真業界とかなり近いものがあるなと思いました。
日本のお笑いとアメリカのお笑いの違いはまず、マーケットの大きさです。日本は日本語で話すわけですし、その時点で日本人だけに観客は絞られます。さらにその中でお笑いに興味がある人たちが観客なわけです。
アメリカは英語で話すので、その時点でマーケットは全世界です。マーケットの大きさが違えば、広告費や制作費、メディアへの露出度も圧倒的に違ってきます。
そしてこれに関係するのですが、日本とアメリカのお笑いの違いの2つ目は"ネタの方向性"です。
日本でのお笑い芸人さんの成功とされるものは、テレビで冠番組を持つことがわかりやすいところですよね。そうなるためにはそのテレビ番組を見てくれる層に対しての笑いを提供しないといけない→無難な事しか言えなくなる→お笑いが一極化する。
大衆ウケをするお笑いというものは決まってくると思いますし、日本では瞬間的に派手なものが好まれます。一発屋と呼ばれる人たちが毎年毎年量産されるのもそのためです。
派手であるということはネタの内容もそうですが、外見も然りで、外見を風変わりにしてそれを笑うパターンがお決まりです。つまり、日本のお笑いの核となっている部分は外見を笑うことではないでしょうか。
もちろんアメリカの笑いに外見を笑うネタも多く存在します。ですが、自分よりも政治力のない、弱い者の外見をネタにして全員で笑うと言うものは見たことがありませんし、こちらであればこの笑いこそが問題になるかもしれません。アメリカではむしろ権力者だったり、自分よりも力のある人間の矛盾などをネタに言葉で笑いをとる方が目立ちます。
例えばあるコメディアンのお笑いのスタイルがメインストリームではないにしても、コアなファンはいるわけです。そしてそのコアなファンの数もインターナショナルですから多いわけです。
かなりマニアックなスタイルのコメディアンがアメリカ大手のNetflixで番組を持っていたりします。このような土壌だからこそかなり個性的な笑いが出てきますし、ちゃんとその筋で面白ければお金も付いてくると言うわけです。
ここで何が言いたいのかと言うと、日本で芸人としてだけの収入を稼ごうとすると、かなりメインストリームに寄った芸などを中心にやっていかないと難しいのではないでしょうか。ダウンタウンさん以降、新しいお笑いで、お笑いの常識を変える人が出てきていないのはテレビ番組が現在のお笑いのメインストリームからの脱去を怖がっている事が大きいのではないでしょうか。
自分たちが長年やってきたお笑いの常識と、お茶の間のギャップが大きくなってきている事に対して、対策を取らない限り視聴者はどんどん離れていく事でしょう。そして日本の芸人さんたちも新しいお笑いの場を日本のテレビ番組だけと思い込まずに、自分から世界に発信して世界のマーケットを狙っていって欲しいです。
日本のお笑いの型にはまっていない、全く新しいお笑いを世界で理解してくれる人が必ずたくさんいると思います。そのためにも世界の文化や宗教、娯楽など、日本と海外の違いを学ぶことから始めると、世界をマーケットにした自分の個性を見つけることの近道になるのではないでしょうか。
藤森星児 - Photographer
SEIJI FUJIMORI
2006年渡米。ニューヨーク在住。V magazine, V man, GLAMOUR(Germany), MarieClaire(Spain), Rolling Stone(Russia), Tank(UK), GRAZIA(Mexico), Black Book(US), BLACK(New Zealand), ARISE(UK), VISION(China), Ponytail(UK), A4(Poland), FASHION(Canada) などのマガジンのほか Diane von Furstenberg, PRABAL GURUNG, Rebecca Minkoff, Outdoor Voices, Jones New York, Magaschoni, C Wonder, Amazon Fashion, などの広告をクライアントに持つ。2011年New YorkベースのプリントマガジンThe GROUND (www.thegroundmag.com)を立ち上げる。
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