- Photographer
藤森星児
- 2017.07.08
こんにちは。今回もNYのリアルな生活について書かせていただきます。
これはNYに限ったことではないですが、生活をするためにはお金が必要です。
今回は「写真でお金を稼ぐ」という前提でお話をさせていただきたいのですが、お金を稼ぐには仕事が必要です。
以前に書かせていただきましたが、雑誌の撮影だけでNYでは生活できません。いくら表紙だろうが、すごい枚数のページ数だろうが。逆に雑誌の撮影をする度に懐からお金が羽ばたいていきます。何羽も、バタバタと、、結構なスピードで、、、。この飛んで行った鳥が大きくなって戻ってくる為にも籠の中から旅立たせるんですよ。可愛い子には旅をさせないと。。。
「それでじゃあどうやって生活するんだ!」ってことになりますが、僕の場合ですと、ファッションブランドやその他企業のキャンペーンの撮影、デパートやファッションブランドのカタログ撮影、ファッションブランドのウェブサイトの撮影などなどでしょうか。
「じゃあ、どうやってこんな仕事をやるんだ!」ってことになりますね。それは簡単ではありません。全然。難しいのは生活を"安定"させることです。1つや2つのクライアントでは安定しませんね。クライアントはたくさんあったほうがいいですよね。だから難しい。
日本からNYでの生活を夢見て、NYに移住を考えていらっしゃる方々にアドバイスですが、NYのクライアントの仕事が欲しいのであれば、出来るだけ現地のクライアントからお金を稼いで生活してください。最初から現地のクライアントがあるわけありませんが、無いから探すんですよ、本気で。
これらはあくまでもこれからキャリアを作っていきたい若い方達に当てはまりやすいですが、NYのクライアントを欲しいキャリアを積まれた方にも参考になったらと思います。
日本とのクライアントの繋がりをたくさん持っていらっしゃって、最初はそれらの仕事をしながら食いつないで、最終的にNYの撮影をたくさんできたらいいな、という風に考えてらっしゃる方も多いと思いますが、僕の経験上、現地の仕事を得るには早道では無いと思います。NYは生活しているだけで、お金は日本から、だけだと本当の意味でNYで生活していると実感するのは難しいですよね。
例えば英語の問題。元より英語が堪能な方は問題ないですが、先に上げたマネージョブをしたいのであれば、英語のスキルはかなりないと難しいです。それらの生きた、仕事で使える英語ってのは現地の仕事をしないと身につかないのです。
しっかりとした英語での会話やメールのやり取りが出来ない人を、最初から信用してくれるほど甘くないです。英語が完璧なアメリカ人や他国の、さらに写真も上手い人たちと競って仕事をするわけですからね。
次はコネクション。これがとても重要なところです。僕の仕事のほとんどと言っても過言ではないですが、新規で入る仕事は僕のコネクションの中での紹介や推薦から来ています。コネクション、ネットワークは1、2年くらいではさほど大きなものにはなりません。そしてそのコネクションがお金を生むようになるにはさらに時間がかかります。
NYの土壌に蒔いた種を地道に水をやりながら大きな木にしていくんです。土壌がよくなかったり、水をやり忘れたり、木をほったらかしにしていたりすると大きくは育ちませんよね。
その間の"サバイバル"の仕方は人それぞれだと思いますが、出来るだけ、現地の仕事を得るように頑張ることをお勧めします。現地のあまりやりたくない、お金の安い仕事など、自分もたくさんやって来ました。ですが、その仕事をやっていたおかげで、そこから知り合った人たちから、やりたい、お金の良い撮影をもらうこともたくさんあります。
またその撮影を成功させれば、またそこからの推薦や紹介で仕事が広がっていきます。"一緒に成長できる人たちと出会い、一緒に上がっていく"為にもお金のない時代/駆け出しのころに現地の仕事を探してください。
2014年に私の一つの夢の仕事が出来ました。ファッションブランドのDiane Von Furstenbergのキャンペーンの仕事です。
Diane Von FurstenbergはNew Yorkファッション界のクイーン的なデザイナーで、DianeはCFDAの会長であり(CFDAとはアメリカのファッション協議会で、毎年1回アメリカで最も活躍するファッションデザイナーを表彰する最も栄誉のあるCFDAファッションアワードという賞を主催している)、2015年にはTIME magazineのTime 100にIconとして選ばれるほどの女王様です。。。
自分がDianeのキャンペーンの撮影を、こんなに早くできるようになるなんて夢にも思っていなかったですし、さらにさらに、この撮影のスタイリストはこれまたファッション界の横綱、Edward Enninful! 彼は若干18歳の若さで有名なI-D magazineのfashion directorに、その後、Italian vogue, American vogueのcontributing editorに、そして2011年にW magazineのfashion directorに、そして2017年4月よりBritish VogueのEditor in Chiefになった大御所です。。。
まだ写真の世界に入る前から、VogueやI-D magazineなどを見ながら憧れていたこの2人の「生きるレジェンド」との撮影は2年にわたりました。この貴重な経験はその時にDianeのArt directorだった友人が、駄目元で僕のポートフォリオをDianeとEdwardに見せてくれて、そしてこの2人が僕の写真を気に入ってくれて、他の大御所フォトグラファーを押しのけて選考してくれました。
そのアートディレクターとは僕がまだ駆け出しの頃からの知り合いで、お互いに助け合いながらキャリアを積んできた仲でした。
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今度は日本である程度のキャリアがあり、NYへの移住を考えていらっしゃる方々に当てはまることかもしれませんが、"子育て"について。
私には4歳になる男の子が一人おりまして、彼ば2013年にアメリカで生まれました。アメリカと日本の二重国籍です。最近はまぁ英語が達者になってきてたまに発音良すぎて『え!?』と聞き返すこともしばしば。あー、自分もこのスポンジのような脳をもう一度手にいれたい。。。
さて、まず、NYの子育てはお金がかかります! 会社などに属している人たちは会社からの健康保険やその他のサポートが'ありますが、フリーランスで仕事を考えている方は全て自分でまかなっていかないといけません。
リアルな話ですが健康保険も家族3人で、中の上くらいのレベルの健康保険で毎月$1100前後でしょうか。アメリカには国民健康保険のようなものはないので(オバマケアーという制度がありますが、収入によって国からいくらかが補助になるシステム。)毎月の健康保険代はかさみます。
そして教育費。
日本は公立の学校は全国全て同じレベルの教育が受けられますね。なので特別な教育方針を考えてらっしゃらなければ公立の学校でも十分な教育環境が得られると思います。
ですが、アメリカは学校(幼稚園、小学校、中学校、高校含む)によって教科書も違えば教え方も違うんです。ですので公立の学校は学校によってレベルや教育環境が大きく変わってきます。
特にNYはその差が大きいらしく、私立の学校に入れようとしている富裕層以外の人たちは、どの公立学校に入れたいかをリサーチして、その学校の学区に引っ越す人たちも少なくありません。何が公立学校のレベルを上げるかというと、大きく関わっているのがPTAの関わりです。もちろん日本のように行事などを助けたりもしますが、PTAからの"寄付金"によって校舎を立て替えたり、新しい機材や必要な物資を購入したりしています。
そうやって寄付ができる人たちは裕福であり、裕福な人たちがすむエリアには良い公立学校があったりします。貧しい人たちがすむエリアの学校はその逆が言えるでしょう。ですので、お子さん連れでNYに引越しを考えてらっしゃる方は最初にすむエリアもよく考えてから決めた方が良いと思います。
私の息子は今年の9月から公立に入りますが、それまでの2歳から4歳までの公立学校のない間は私立の学校に入れていました。こちらではPre Schoolと呼ばれる学校で、4歳から始まるPre-Kと言われる公立学校にに入れる前に行く学校です。Pre Schoolには入れないければいけないという決まりはないですが、私は妻も日本人なので4歳からの学校が始まる前から英語の環境に入れたいと思い、2年間通わせました。
このPre schoolというのが、学校によりけりですが、高いです。。。
私の息子が入っていた学校は週5日で毎月$2100くらいでした。これらの良い学区の2 bed room(日本で言うところの2LDKくらい)の家賃の平均は$4000くらいでしょうか。これらの他に生活費や交通費、撮影経費などがかかります。NYは子供を持ちながら生活していくには決して安い環境ではありません。
ですがNYの子育て手良い部分はたくさんあります!!
まず、人が子供好きです! 町や電車の中などで子供に向けてニコッとしてくれることはしょっちゅうですし、いくら満員電車でもベビーカーで入っても(折りたたまずに。)率先して場所を作ってくれます。エスカレーターのない階段などでは手を貸してくれ、上まで運んでくれる人はたくさんいます。この優しさに触れて何度感動したことか。。。
公園なども綺麗に整備されていますし、そこら中にたくさんあります。町の歩道も広く歩きやすいです。良い意味で人に気を使いすぎずにのびのびと子育てができる環境だと思います。
これらのインフォメーションが、将来NYに子連れて移住したいと考えてらっしゃる方への少しの目安になればと思います。以上。ダラダラと書かせていただきましたが、NYでサバイブするのは簡単なことではないですが、やはりNYの魅力はそれを超えるものがあります。
藤森星児 - Photographer
SEIJI FUJIMORI
2006年渡米。ニューヨーク在住。V magazine, V man, GLAMOUR(Germany), MarieClaire(Spain), Rolling Stone(Russia), Tank(UK), GRAZIA(Mexico), Black Book(US), BLACK(New Zealand), ARISE(UK), VISION(China), Ponytail(UK), A4(Poland), FASHION(Canada) などのマガジンのほか Diane von Furstenberg, PRABAL GURUNG, Rebecca Minkoff, Outdoor Voices, Jones New York, Magaschoni, C Wonder, Amazon Fashion, などの広告をクライアントに持つ。2011年New YorkベースのプリントマガジンThe GROUND (www.thegroundmag.com)を立ち上げる。
www.seijifujimori.com
https://www.instagram.com/seijifujimori/