- Photographer
藤森星児
- 2016.09.25
こんにちは。
今回は"個性"について書かせていただきたいと思います。
たとえば自宅から撮影のスタジオに行くという間にも結構この言葉に遭遇することが多いです。
自宅のドアを開けて外に出ようとすると、ドアが開かないことが度々あります。
それは私の自宅が築110年のビルで、ドアが壊れているから開かないわけでなく、ドアが何かに当たって向こう側に開くことができないのです。
その何かはと言うと、、、人です。。。
特に月曜日に多いのですが日曜日の夜に飲みすぎた?人が、ドアの前で寝ているのです。。。しかも気持ちよさそうに。。。、
できれば起こしたくないな、と思うくらいに気持ちよさそうに寝ているのですが、このままだとどうにも仕事に行くことができないので起こすことになります。
"Excuse me?""Excuse me?"と丁寧に起こして起きてくれるパターン1。
"Excuse me!!?"と大きな声であまり丁寧でなく起こして起きてくれるパターン2。
パーターン1、パターン2を経て、禁じ手"ドアでグイグイ押す攻撃"を最終的にくりだしてようやく起きてくれるパターン3があります。
そのパターン3までたどり着くと、相手もかなりの個性の持ち主(大ボス)が多く、起きた後も寝た状態で芋虫のように50cmくらい移動してドアが開くだけのスペースを確保し、そのまま寝続けたりします。まずそのどこでも心地の良い環境を作れてしまう環境適応能力に感心し、そしてその後にかけた私の言葉"Could you please move overちょっとどいてくれる???" に対して指だけで、俺の上を跨いで行ってくれ、と伝えそのまま寝ているという態度をとられ、肘の内側のビリっ!とくるところをブツけたような衝撃を受けながら寝ている人を跨いで撮影に行くことがあります。そうすると大体6%くらいの体力を持ってかれています。
ですがこの6%で物事に動じない人間の素晴らしさを学ぶんですよね。。。
New Yorkに住んでいると、街全体の個性がどんどんなくなってきているな、と思うことがたくさんあります。以前はエリアによってそれぞれの個性があったのが、どんどん同じような、味のない、平坦な、小綺麗な、どこの国にもありそうな街になってきました。
私の自宅はBrooklynのWilliamsburgというところにあり、僕が引っ越した10年前あたりは、まだまだアップカミングなアーティストやミュージシャン、写真業界やその他のクリエイティブな人たちが家賃の安いロフトなどにスタジオ兼自宅を構え、これからのクリエイティブなシーンを作っていく人たちでごった返した勢いのある街でした。
ですが、そんな街も再開発でその個性をなくしてきています。街にあふれたアーティスト達がWall街で働くビジネスマンになり、グラフィティーで覆われた古いロフトはピカピカの高層マンションになり、昔から地元の食えないアーティスト達の胃袋を支えたリーズナブルなレストランも、ファンシーなレストランやバー、高級ブティックになり、週末になるとメイン通りのBedford avenueは観光客でまっすぐ歩くのも困難なほど混み合っています。
だからと言って私は"昔のNYはよかったね~。。。もっと刺激的だった。。。" なんてこれっぽっちも思っていないのです。
安全になったし、便利になった。街が綺麗になってなにが悪い!!朝から尿の匂いを嗅ぐのはこりごりだ!!
これが私たちの世代のNew Yorkなんだからそれを愛して、これからももっとよくしていけばいいんです。
これからの世代は刺激を与えられるものとして待ってはいけない気がします。刺激は自分から求めて探す世代。外からもらう刺激だけじゃなくて、求めて探した刺激がまた心地いいんですよ。。。
New Yorkで写真家としてお仕事をさせていただいていると、広告やブランドのイメージ撮影など皆が求めるものがどんどん似て来ているように思います。
インターネット、ソーシャルネットワークがここまで日常化した現在、個性的というよりもよりももっとも数の多い人が共感を持てる写真が求められ、それが数字で価値表現ができるようになった。
いとも簡単にレファレンスのイメージが手に入るようになり、アイデアの盗み合いが激しくなって、人の真似をすることが悪いことでなくなってきた。むしろ真似したほうが早いし、お金も安くつく。それで問題が発生したら後で考えよう、などの考え方も恥ずかしいものではなくなって、むしろ賢いとされるようになってきた。何かが人気になれば他の多くもそれに似たようになっていく、しかもものすごいスピードで。。。なんてカッコよく書きましたが、実は私はそんなことはあまり気にしていなくて、当たり前ですが、撮った瞬間に自分が興奮できるかできないかが大事なことであって、これからもそれだけを探していこうと思っています。
よくNew Yorkで「写真で生き残ろうと思ったら個性的にならないといけない。なぜなら世界中から個性に溢れるフォトグラファーが集まっているから。」などど見たり聞いたりしますが、そもそもそんなにたくさんの個性が集まっている中で、そんなことばっかり考えてたら息も続きません。僕は無理ですね。。。だけど、自分しかわからない興奮を探すことに集中したら長く走れるんです。写真人生なんて陸上で例えたら(中学高校と陸上部で800Mをやっていました)短距離走じゃなくてマラソン + ハードルといったとこでしょうか。(すごいな、こう書くと。。。)持久力が全てだと思います。自分が個性的であるかないかなんて他人しかわからないんだから自分が気にしてもしょうがないと考えてます。
藤森星児 - Photographer
SEIJI FUJIMORI
2006年渡米。ニューヨーク在住。V magazine, V man, GLAMOUR(Germany), MarieClaire(Spain), Rolling Stone(Russia), Tank(UK), GRAZIA(Mexico), Black Book(US), BLACK(New Zealand), ARISE(UK), VISION(China), Ponytail(UK), A4(Poland), FASHION(Canada) などのマガジンのほか Diane von Furstenberg, PRABAL GURUNG, Rebecca Minkoff, Outdoor Voices, Jones New York, Magaschoni, C Wonder, Amazon Fashion, などの広告をクライアントに持つ。2011年New YorkベースのプリントマガジンThe GROUND (www.thegroundmag.com)を立ち上げる。
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