何時もの事だが今年も夏の過ぎ方はとりわけ早足だった。晴れに恵まれなかった事もあるだろう。

僅かばかりの晴れとタイミングが合えば良いけれど、その日に限ってストロボと一日を過ごしたり。

そんな中の晴れ間は格別で、湖畔のボートで静かな水の音や鳥たちの羽の羽ばたきの音がスローモーションのようにゆっくりと入ってきて、静かにシャッターを押させる。

夏ほど思い出を大切にしたくなる季節はないだろうと勝手に決め込んでいて、今年もご多分に漏れず思い出があった。期せずして人生初のヘビメタバンドの撮影をしたこと。

写真を撮り続けると色々な出会いがあると、それはもういつも感謝の気持ち。でも彼らを撮るとは思いもよらぬ出来事で、ジャケットまで撮影させていただき、今までにないお友達ができた感じさえする。

自分たちの音楽にストレートな彼らの気持ち良さ。全身に爆音を感じながらの撮影はカメラストラップにさえその振動が伝わってビリビリと震える。

風の強い夏の終わりの頃、久しぶりに海に。

ドーンという音とともに波が砕け、夏が散る感じがした。日が傾き月が現れる頃、いつになく新しい季節の到来をハッキリと感じることができたのは、全身に響く波の音のせいかもしれないと思った。

今年もあと数カ月、様々な光の姿に会えそうだ。少し気がはやいが来年に向けての作品発表の準備にそろそろ取り掛かろうかと、そんな気持ちになりながら海を後にした。