- Photographer
伊藤之一
- 2017.09.19
何時もの事だが今年も夏の過ぎ方はとりわけ早足だった。晴れに恵まれなかった事もあるだろう。
僅かばかりの晴れとタイミングが合えば良いけれど、その日に限ってストロボと一日を過ごしたり。
そんな中の晴れ間は格別で、湖畔のボートで静かな水の音や鳥たちの羽の羽ばたきの音がスローモーションのようにゆっくりと入ってきて、静かにシャッターを押させる。

夏ほど思い出を大切にしたくなる季節はないだろうと勝手に決め込んでいて、今年もご多分に漏れず思い出があった。期せずして人生初のヘビメタバンドの撮影をしたこと。
写真を撮り続けると色々な出会いがあると、それはもういつも感謝の気持ち。でも彼らを撮るとは思いもよらぬ出来事で、ジャケットまで撮影させていただき、今までにないお友達ができた感じさえする。
自分たちの音楽にストレートな彼らの気持ち良さ。全身に爆音を感じながらの撮影はカメラストラップにさえその振動が伝わってビリビリと震える。

風の強い夏の終わりの頃、久しぶりに海に。
ドーンという音とともに波が砕け、夏が散る感じがした。日が傾き月が現れる頃、いつになく新しい季節の到来をハッキリと感じることができたのは、全身に響く波の音のせいかもしれないと思った。
今年もあと数カ月、様々な光の姿に会えそうだ。少し気がはやいが来年に向けての作品発表の準備にそろそろ取り掛かろうかと、そんな気持ちになりながら海を後にした。
伊藤之一 - Photographer
1966年愛知県生まれ。1991年日本大学芸術学部写真学科卒業 2000年博報堂フォトクリエイティブを経て、伊藤写真事務所設立。広告写真制作を主軸に、自主制作を継続的に発表している。主な写真展に「入り口」銀座ニコンサロン「雨が、アスファルト」エプサイト「隠れ里へ the invisible scene」RING CUBEがある。主な写真集に「入り口」「雨が、アスファルト」「ハレ」「電車カメラ」(ともにWALL刊)がある。今夏より「1:1」のタイトルで光の誘いをテーマに連続展を行なっている。
- 2017.09.19光遊カメラ vol.12 光の音
- 2017.01.10光遊カメラ vol.11 二つの光
- 2016.08.23光遊カメラ vol.10 30秒の呼吸。
- 2016.02.08光遊カメラ vol.9 撮る撮るの毎日。
- 2015.07.24光遊カメラ vol.8 あちこちと週一。
- 2015.02.27光遊カメラ vol.7 光色めく
- 2014.11.04光遊カメラ vol.6 色抜ける。
- 2014.06.30光遊カメラ vol.5 1:1フレームの光
- 2014.03.26光遊カメラ vol.4 光の知らせ。
- 2013.11.11光遊カメラ vol.3 気持ちも変える光
- 2013.10.04光遊カメラ vol.2 光の効能
- 2013.07.12光遊カメラ vol.1 光の記憶