石川竜一写真展「OUTREMER/群青」が、アツコバルーで開催される。

「絶景のポリフォニー」「okinawan portraits」など、沖縄のイメージが強い石川さんが、パリやマルセイユ、コルシカ、リヨンで撮影。言葉の通じない異国での写真に注目したい。

2014年11月にアツコバルーでの個展を終えた石川は、翌年2015年2月、パリに向かった。パリの冬、毛皮の帽子をかぶり大きなカメラを首から下げて2ヶ月の間、北駅にあるスタジオを起点に木村伊兵衛賞の授賞式ギリギリまでパリを撮って歩いた。800枚ほどのショットを見せてくれたのだが、何かまだ本人も私たちも納得できないものがあった。行けるところまで行っていない。残念な感じがあった。
本来の約束は2ヶ月で何とか個展ができるだけのものを撮ってくる、だったが、石川のもう一度行きたい。という願いに我々もかけてみることにした。そして2017年再び2月。彼は今度はパリから出てマルセイユ、コルシカ、リヨンも回った。結果としてやっと満足いくものが撮れたと思う。

私の最初の目論見は沖縄という彼にとってのホームランドで、人々と気軽く話し合い友達になって撮らせてもらう、ということが通じない、いや、一言も通じない異国で彼がどのように言葉を介在させずに相手の心を開かせて懐に飛び込むことができるか。そこを挑戦して欲しかったのだ。昔ロベール・ドアノーは話の通じる知っている人でないといいポートレートが撮れない、と言って俳優緒形拳の仕事を断ったことがある(後で説得してオーケーしてくれたが)。私は言葉を介さない交流があるはずだと思っている。いわゆる人間関係の普遍性のことである。それを若いうちに習得して欲しかった。

予算は2倍かかったが石川は予想をはるかに超えるものをつかんできた。ヨーロッパのどん詰まりの大国フランス。1000年も前から民族移動や戦争に揉まれてきた多民族国家の森。言葉のわからない人の中で彼はまるで森にいるようだったという。そこで見た月はカマンベールチーズのようにどろりと溶けていたのだろうか。決してクリアーではないが様々な抑揚を内包した夜の惑星、それが彼のフランスだったのだろうか。
2017年10月 アツコ・バルー
 

展示会風景


 

展示会情報

アツコバルー ATSUKOBAROUH
http://www.atsukobarouh.com/

ギャラリー名
アツコバルー ATSUKOBAROUH
住所
東京都渋谷区松濤1-29-1 
クロスロードビル5F
開館時間
水〜土 14:00〜20:00 / 日〜月 11:00〜18:00 火休
入場料:800円
アクセス
渋谷駅 徒歩10分