竹之内祐幸作品展「The Fourth Wall /第四の壁」が、PGIで開催されている。

紹介文
幼少期に感じた孤独感や疎外感から他者との間に壁を作っていた、という作者は、カメラを手にすることによって、自分自身から解放され、写真を撮る行為によって無心になり、花や草木、昆虫や小動物、身の回りの何気無い日常を一つ一つ丁寧に見つめていきます。作者の柔らかい視線と鋭い観察眼は、被写体の魅力を十分に引き出し、全てのものが等価で、そこに存在することの美しさを炙り出しています。

本展は、大学在学中から近年まで撮りためた作品の中から、新作を中心に約35点を展示。会場では11月下旬にT&M Projectsより刊行予定の同名タイトルの写真集を、展覧会に合わせ先行販売している。

ステートメント
小さい頃、誰もいない家の玄関から自分の部屋までのたった数歩の距離が怖くて、おもちゃやマンガをところどころに置いていた。それでも家にいるのが怖くて、親が帰ってくる時間まで近所をぐるぐるとひとりで遊んでいた。その辺の草や小さな虫達が、マンガの世界みたいに喋り出したらいいのにと思っていた。

家族旅行で写真を撮ると、上手だねと褒められて嬉しかった。写真は、大きなものも小さなものも、手のひらにおさめることができて面白いと思ったし、人見知りの僕でもカメラを持つとなぜか心強く思えた。写真を撮っていると、自分の中の苛立ちや残酷さ、孤独感がだんだん静まってくるのがわかった。そして、「自分」について考えながら写真を撮っていたつもりでも、気がつくと僕は写真を撮っている時だけ、「自分」について考えなくて済むことに気づいた。もしかしたら僕は、他者に対しての「自分」から解放されたくて写真を撮っているのかもしれない。それが本当の自由だとしたら、写真は僕にとって他者と自分の壁を超えるものになると思った。

行き先を決めずに、とにかくどこかに行って写真を撮ることを繰り返していた。いろんなところを歩いているつもりが、自然と足が土手や川や住宅街など、自分が生まれ育った環境に近い景色に向かうことが多かった。汗だくになりながらカメラを持って歩き回っているうち、季節は一週間で大きく変わることを知ったり、綺麗な景色をファインダーで覗きながら、いつでも答えは目の前にあるんだと気づいた。たまに人間を怖れないカラスや、小さな生き物に出会えることもあった。彼らはきっと自然界では「外れた」存在なのだろうけど、僕も彼らのように、世界から外れたところにいるのかもしれない。そして小さかった頃の僕と少しも変わらぬ視線で彼らを見つめながら、その時は気づかなかった気持ちや、僕と同じように生きづらかった人たちのサインを思い出していた。

竹之内祐幸
1982年東京生まれ。2008年に日本大学芸術学部写真学科を卒業し、同年第31回キヤノン写真新世紀佳作受賞。2009年、塩竈フォトフェスティバル特別賞受賞。
主な個展に「SEASONS」Foil Gallery (東京・2010年)、「鴉」フォト・ギャラリー・インターナショナル (P.G.I.) (東京・2015年)、「Things will get better over time」Gallery Trax (山梨) / Studio Staff Only (東京) (2017年)写真集に『The Fourth Wall / 第四の壁』 T&M Project (2017年11月下旬刊行予定), 『Things will get better over time』 FUJITA (2017)

展示会風景


©Hiroyuki Takenouchi, Courtesy of PGI


 

展示会情報

PGI
http://www.pgi.ac

ギャラリー名
PGI
住所
東京都港区東麻布2-3-4 3F
開館時間
11:00〜19:00(月〜金)
11:00〜18:00(土)
日・祝日休館
アクセス
都営大江戸線 赤羽橋駅 徒歩5分