先月、仕事を機に念願叶って広島県の熊野町に行く事が出来ました。
熊野は約180年以上前から筆作りが盛んな地域で、今や国内生産90%以上の化粧筆が熊野で作られているだけでなく、世界中のアーティストや化粧品メーカーにも「KUMANO」ブランドとして確立しているほど。メイクさんなら誰でも一度は手にした事がある、と言っても過言ではないブラシなのです。

数ある熊野筆の工房の中で、今回ご縁あって瑞穂(MIZUHO)ブラシさんの工房へ伺うことが出来ました! 1980年に設立された瑞穂さんは、原料選びから完成品まで一貫してこだわりを持って生産されています。

数々のOEMを受け持つ瑞穂さんだけど、工房は意外とアットホーム! 全ての工程はほぼ手作業で行なわれていて、各セクションの専門家が「分業体制」で手際よく作業しています。そして職場はほとんどが女性なのも驚き~!
ここで製造されたブラシが世に出て行くのか、と思うと何か感激!!

熊野筆

見学させて頂いた筆作りの工程は、

①選毛 ー 選び抜いた毛を均等に揃えていきます。ここで、筆によっては種類の違う毛を混毛したりもします。

熊野筆

②逆毛・すれ毛取り ー 小刀で逆毛・すれ毛を丁寧に抜き取ります。熟練の担当者が指先の感覚のみで肌触りの悪い毛を選別して抜き取る作業。まさに職人技!! この工程を一回だけでなく何回も繰り返す事で質の良い筆になっていくのだそうです。

熊野筆

③山出し ー 「コマ」と呼ばれる中が球面になった木の筒の中に毛を入れて、毛先を山型に整え、形状を作ります。私も初め驚いたんだけど、熊野筆は毛先を一切切りません!! 形状は全てこの「コマ」を用いるので、繊細な毛先は自然のまま!極上の柔らかい毛先はこうして出来るのですっ!!

熊野筆

しかも、この「コマ」は原木の切りだしから行なうそう!! 筆によってボリュームやカーブ、細さも違う為、その都度オリジナルの「コマ」を作って調整していく。瑞穂さんには軽く数百個はある「コマ」がズラーーーリと管理されています。

原木を切り抜くのもまた、職人技の見せ所!! 日本刀のような刃物で、一つ一つ刳り貫いて行きます。凄いなー、とただひたすら感心!

熊野筆

④穂先と金具をつける ー 山出しされた穂首の1本1本の毛丈や形状を確認しながら、針金の様な物で毛束をまとめます。この時にも、ひとつひとつ指先で選毛を繰り返します。

熊野筆

熊野筆

束ねられた穂首が可愛い~~~~~♡ これだけでも芸術品ですね!!!

熊野筆

そして、金具に穂首を挿入をして接着剤で固定します。だんだんブラシっぽくなってきた!!

熊野筆

⑤軸付け・検品 ー 金具に固定した毛を洗浄した後、穂先を十分に乾燥させて軸(ハンドル)を取り付けます。毛抜けや毛切れのチェックを最終段階でも入念に行ない、仕上げます。

熊野筆

これが大きい流れなれど、それぞれの作業の緻密さと細やかさが光る職人技に終始驚きっ放し!! こんな長い工程を経て国内外に出荷されていくんだね~~~。

熊野筆

化粧筆の毛も山羊、馬、ポニー、リス、コリンスキー等様々な動物毛が使用されていて、主に中国、中央アジア、ロシアから輸入されている。でも現在、色々な社会的背景や事情により動物毛の値段が上昇してるのと同時に、なかなか出回らなくなっている毛もあるんだとか。今後は動物毛だけに頼らず、ファイバー(人口毛)の品質改良にも力を注ぐ動きになっているそうです。

そんな中で瑞穂さんは新しい取り組みにも積極的にチャレンジ!!
化粧筆のノウハウを活かして、こだわりの穂先で女性の「美肌」作りを実現する「SUVE]という新ブランドを立ち上げています。
「BRUSHING SKIN CARE」をコンセプトに、洗顔筆やボディブラシ、リンパドレナージュブラシ等、女性の美のライフスタイルに寄り添うアイテムを提案しています。山羊毛やリス毛を用いたスキンケア用のブラシは、一度本物の毛の気持ちよさを実感したら虜になる事間違いなし!!

熊野筆

左のリンパドレナージュブラシは、プロのセラピストが監修していて自分の手でもドレナージュ効果を再現しやすくしてくれる素敵な発想のブラシ!! 特別な知識がなくてもこのブラシ2本で簡単にリンパのホームケアが出来ちゃう、私もお気に入りのアイテム。
右のボディブラシは、体を洗う用途にはもちろん、ドライのまま漢風摩擦のブラシとしても使えちゃう!! 贅沢にも山羊毛の穂首が6つもついてるから肌をふんわり包み込んでくれる様な滑り心地でリラクゼーション効果大~~♡

化粧筆とライフスタイルが一体になった新発想のブラシ作り。化粧筆の新しい形が新鮮で面白い!

今回の訪問で熊野の化粧筆の歴史と技術、そして筆を取り巻く現状問題や今後の課題・新しい可能性など、本当に沢山のお話を聞かせて頂きました!!
なかなか会えない生産者とエンドユーザだけに、とっても貴重な体験で沢山勉強になりました!!
普段当たり前のように使っていた化粧筆の1本1本に込められた想い・奥深さを改めて感じながら筆を握って行きたいです!

最後に今回ご案内して頂いた瑞穂ブラシの尺田さんと一緒に。

熊野筆

国内のみならず海外でも積極的にPRを進めている瑞穂ブラシ。伝統と歴史を背負いながら新しい可能性にも視野をどんどん広げている瑞穂さんの動きに今後も注目して行きたいと思います☆
日本の職人魂でどんどん世界を驚かせて欲しいです!!

http://www.mizuho-brush.com