- 2014.02.26
Photographer薄井一議
プロフォトから発売された、新型ストロボ Profoto B1 500 Air TTL(以下B1)。
モノブロック型の筐体にバッテリーを搭載し、最大500Wsで220発のフル発光が可能。Airリモートで、露出やレリーズを制御できる話題の製品。
一方、2013年にボルボV40のAWDモデルとして話題を集めた「ボルボ V40クロスカントリー」は、スタイリッシュなプレミアムコンパクトSUV。
実は、プロフォトとボルボは、共にスウェーデンが発祥の地であり、ロケ撮影、移動の多いフォトグラファーにとって、照明機材とそれを積んで移動する車は重要なアイテムと言える。
今回、自身もボルボユーザーであり、広告写真を中心に活動しているフォトグラファーの薄井一議さんに、B1を使ったボルボ V40クロスカントリーの撮影を依頼。車と照明機材というスウェーデン発の最新製品がどう映るのか、印象を訊いた。
薄井さんは現在、ボルボに乗られているのですね。
そうなんです。ボルボを選んだ理由は、やっぱり「安心感」ですね。
安心感って何かと言うと、足回りとか安全装備という事よりも、まず第一にフォトグラファーとして「機材が載る(積める)」という事です。
例えば、サベージを運ばなければ行けない時もあれば、スタンド、センチュリーを運ばなければいけない時もあるじゃないですか。そういう時に、普通のセダンだと入らない。
そこで、車輌さんを雇わないといけないとか、車を借りないといけないとか...。
というケースで、ボルボだと全部入れられるので、仕事に対して「これも持っていけば、実験的な事ができるかな」とか、「こういうセットも組めるかな」とか、そういう事が自分の範囲内で出来てしまう。それを考えると、「やっぱボルボっていいなあ」と思います。
フォトグラファーは、ボルボに乗っている人がけっこういますよね。やっぱり「走るカメラケース」なんですよ(笑)。
若い頃は、「ボルボには乗らないぜ」と思っていたけれど(笑)、ある意味、若くてバリバリな30〜40代はボルボでとことん撮影して、後は自分の趣味の車に乗ればいいのかなあという所はありますね。
フォトグラファーにとっては、機材を載せられる事が必須条件ですね。
スタンドやペーパー、カポックなど、どうしても長物を積まないといけないですからね。
ドイツ車も日本車もありますが、リアが丸い車種だと、筒ものやサベージが入りそうで入らないんです(笑)。その点、今自分が乗っているボルボは角が垂直気味なので、とことん長いものも入ります。
ただ最新のボルボは、時代の流れもあって、リアも丸くはなってきていますが(笑)。
初めて試乗、撮影したV40クロスカントリーの印象はどうですか。
V40クロスカントリーはAWDですよね。これも「安心感」ですよね。どんな山道での撮影でも、急に雪が降ったとしても、それでも「現場に行かなくちゃいけない」という時の、移動におけるリスクが少しでも低くなる事が、いい仕事に繋がるんだろうと思います。
ただAWDがいいからと言って、普段からものすごく大きな車に乗るのも、僕的にはどうかな? と思う部分もあります。
街中でも取り回しやすいコンパクトさで、足回りもしっかりしていて、それでいてどんな現場でも行けるのはいいなあと思います。
丹沢で撮影しましたが、このような枯れ葉が積もる山中でのロケ等、どんな所でも遅れるわけには行かないですよね。
そうなんです。仕事は都内のスタジオだけでないし、アスファルトの道だとも限りません。東京でさえ、寒波で急に雪が積もりますからね。
運転してみてどうでしたか。
ステアリングが軽いなあと感じました(註:ステアリングの重さは任意に設定が可能)。自分の車が重いだけなのかも(笑)。単純に慣れの問題で、慣れれば取り回しやすそうです。いい驚きでした。
高速道路で渋滞にはまった時に、「アクティブクルーズコントロール」も使いました。
自動で前の車を捉えて、加速、減速してくれるので、これはかなり便利。撮影後に疲れて都内へ戻る際には、最高ですよ。
オートパイロットで飛ぶ飛行機のように、自動運転の未来が見えましたね。
狭い道や駐車の際は、4隅と周囲との距離をセンサーで知らせてくれるし、道路標識を読み込んでくれたり、自車だけでなく周囲の安全まで見てくれている感じは、頼もしい。
V40クロスカントリーって、調べたら全長が4370mmなんですね。ライトセットとか、長いポールやサベージを積まない人、例えば今回のような自然環境の中で風景写真や、自然光に1〜2灯プラスしてのファッションではベストな積載サイズだと思いました。
Profoto B1 ファーストインプレッション
バッテリータイプのモノブロックストロボは、今までどのメーカーにもなかったわけですが、初めて使われていかがでしたか。
近くに電源がない屋外ロケの時は、Pro7bのようなヘッドとジェネが分かれたタイプを使っていました。
その場合、「これを動かして、向こうにセットしたいけれどひと手間かかる。だとしたら、このまま進めた方がいいか...」、頭の中で常にそういう状況判断をしています。
でもB1なら本体だけなのですぐ動かせますし、岩と岩の間に置く事も、隠す事もできる。そういう「トライ&エラーが簡単にできる」のがすごく良かったです。
それとプロフォトのアタッチメントが、全て付けられるのがいいですね。かなりの強みだと思います。
1カット目は、車の室内にライトを仕込んでいます。ヘッドを上に向けてちょうちんライトを使えば、室内を照らす事も簡単にできます。
B1は室内でも使いやすいですが、ロケーションにおいてイマジネーションを膨らませる事ができるなって、思いました。
Airリモートも便利ですよね。
トップライトは高く伸ばしていましたから、手元で出力調整、モデリングのON、OFFがコントロールできるのはいいですね。数灯買って、それぞれに番号を割り当てればすぐに使えます。
今回は車でしたが、ファッションとかでもいいんじゃないですか。アシスタントに持たせて、歩きながら撮れる。今まではジェネも持たないといけないので、相当大変でしたが、それが簡単にできちゃう。
あとヘッドなんですが、ソフトBOXやリフレクターを使わなくても、普通のチューブよりも照射範囲が広いんです。乳白のガラスがついているので、そのままの直射でもけっこういけます。
少人数ロケとは思えないようなライティングですね。
車雑誌の取材撮影と違って、広告写真的なライティングをしています。B1はコンパクトなので、簡単に多灯ライティングが組めます。
例えば直線上にライトを組んでおいて、そこを走りながら撮る事もできりだろうし、セットの組み方が簡単なので、色々な事ができそうです。
連写しないという事もあって、バッテリー交換せずに1日持ちました。
そうでしたね。ファッションのようにシャッターをたくさん切るケースでなければ、かなり持ちますね。
夕方の撮影では、モデリングランプが重宝しました。一緒に持っていったPro7bは、モデリングがタングステンなので、ずっと点けているとバッテリーの消耗が早いですし、ヘッドの温度が上がれば熱対策で点かなくなります。
B1はLEDライトなので1時間以上持ちますし、高熱を出さないので点けっぱなしでも余裕ですね。
携帯性、機動性、操作性、そういう意味からすれば理想に近いストロボですよ。後はもうフォトグラファーの「発想」でしかない。機械に頼るのではなく、その人のアイデア次第で世界は広がるでしょうね。
スチルに関して言えば、自分達の身の回りでできるというか、電源車も必要がなくなる中で、「何をやりたい」という所から逆算して、だったら「B1とアタッチメントはこれを使おう」という計算ができる。
TTLも搭載されて、ここまで機材の方で持ってきてもらっているわけだから、相当特殊な環境や条件でない限り、もはや言い訳ができない所まで照明機材が進化してきていると言う事ですね(笑)。
出力は最大500Wsですが、モノブロックは400Ws位のものも多いので、ロケで使うには事足ります。早いチャージャーを使うと、1時間で80%くらい充電できるんですよね。しかもシガーソケットで出来ちゃうのは安心感あります。これいいですよ。
今まで見た事のない写真が生まれて来るかも知れません。
そうですね。未知な場所、例えばジャングルの奥地とか、大げさな機材では踏み込みにくい所で新しい写真が生み出される可能性が出てきますね。
操作も簡単なので、アマチュアの人にも使いやすいですし、今後はセオリーじゃない部分での「ヒラメキ」とかが重要になってくる事を考えれば、写真とは関係ないジャンルの方が、すごいビジュアルを生み出す可能性も出てきます。
自分もプロとして、「さらに新しいものを作っていかないといけない」、という使命感と同時に、こういう機材を使って「楽しみたい」ですね。
完成作品
- 同じアングルで、ライティングをしていないカット。
- 同じアングルで、ライティングをしていないカット。
メイキング
- 撮影場所は秦野市丹沢のBOSCO。丹沢大山国定公園のほぼ中央、自然の木々や渓流をそのまま生かした約1000haのオートキャンプ場。
- 時折陽が射す曇天。車を配置して普通に撮影するとこのような感じになる。
-
B1が2台とグリッド、予備バッテリー、スタンドと、2セットがちょうど収まるデイバック。かなりコンパクト。
機材を出して、ライトを作っていく。LEDのモデリングをつけながら、ライトの位置を探っていく。
細いラインを出すためのスリットBOXなど、プロフォトのアタッチメントが全て使える。 - 高い位置にセットしたトップライト。出力、モデリングのON、OFF等、手元のAirリモートでコントロールできるので、作業もスピーディで、何より簡単。
- リアからのバックショット撮影風景。モデリングで確認しながらライトの位置を決める。本体をそのまま地面に置いて発光させる事も容易。
- 3~4灯のB1セットなら、すっぽりトランクに収まる。リアシートを倒せば、サベージ等の長ものも入る。
B1 500 Air TTL
●主な特長
・特許申請中の新機能AirTTLにより自動調光可能。
・1回のフル充電で、フル出力での最大220フラッシュの発光可能である、着脱可能、内蔵型バッテリー。
・コードレスでワイヤレスAirシステム搭載によって、ケーブルの長さに制約されず撮影可能。
・最大20フラッシュ/秒の連続発光可能であるQuick Burstモード。
・9 f-stop (2-500Ws)の出力レンジ間で、0.1 f-stopステップでのファインチューニング可能。
・プロフォトの幅広いラインアップのライトシェーピングツールを取付け可能。
- ボルボ V40クロスカントリー T5 AWD
- ●主要諸元
全長×全幅×全高:4370×1800×1470mm/ホイールベース:2645mm/車両重量:1580kg/乗車定員:5名/ハンドル位置:右/駆動方式:電子制御AWDシステム(四輪駆動)/エンジン種類:インタークーラー付ターボチャージャー DOHC 直5 横置き 20V ガソリンエンジン/総排気量:1983cc/最高出力:213ps(157kW)/6000rpm/最大トルク:30.6kg-m(300N・m)/2700-5000rpm/トランスミッション:ギアトロニック(電子制御6速AT)/燃料消費率:12.4km/L[JC08モード]/タイヤサイズ:225/50R17/車両本体価格:359.0万円(価格は消費税込み)
薄井一議 Photographer
1975年 東京生まれの写真家。東京を中心に活動。
1998年 東京工芸大学芸術学部写真学科卒業。
虚と真を写真の中に織り交ぜ、映画的アプローチで作品を作り続けている。写真集に2006年「マカロニキリシタン」(美術出版社)・2011年「Showa88/昭和88年」(Zen foto gallery)がある。「Showa88/昭和88年」は2012年ドイツ カッセルフォトブックアワードにノミネート。
http://tsunagari.co.jp/kazuyoshi_usui/
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