- 2017.11.27
Photographer「The Professional Voice」vol.6 土屋勝義
東芝の高性能なメモリカード「EXCERIA PRO」。
その魅力を様々なジャンルのフォトグラファーが伝える「EXCERIA Ambassador」へのインタビューシリーズです。
レンタルスタジオでライティングを学び、篠山紀信氏のもとで「一流」を肌で感じとった土屋勝義さん。
広告撮影から雑誌、アマチュアへの指導など幅広く活動する土屋さんが、長年にわたり撮り続けている雑誌「CAPA」の表紙撮影の現場を取材。
「CAPA」の表紙は、表4(裏表紙)の東芝メモリカード広告と連動させ、同じモデルが登場するというスタイルが印象的だ。
EOS学園の講師をはじめ、アマチュアへの指導にも力を入れている土屋さんに、写真への思いからメモリカード、機材へのこだわりを訊いた。
HM:津田千昌 ST:金子美恵子 M:塩地美澄(フリーアナウンサー:スペースクラフト・エンタテインメント)協力:CAPA編集部
Interview:坂田大作(SHOOTING編集長)
写真に興味を持たれたのはいつ頃からですか。
最初のきっかけは、子供の頃に一眼レフカメラを拾ったところから始まります。「拾った」と話すと、すごいですねって皆に言われるのですが(笑)。それで届けたカメラは持ち主が現れず、私のものになりました。僕の父親は写真が趣味ではなかったので、家にカメラがない家庭でした。でも僕は小学生で一眼レフカメラを手にしてしまった。
進学した中学校に写真部があったので、すぐに入部しました。そこは引伸機が6台もあって、シンクも全紙のバットが4つ(現像、停止、定着、水洗)並べられる立派な暗室がありました。
中高一貫校だったため、6年間モノクロ写真を勉強できる環境でした。入部当初はバライタ印画紙しかなかったけれど、途中からRCペーパーが発売されて、乾燥は楽になったね。
土屋勝義さん。
東京工芸大学に進まれたのは必然だったのですか。
通っていた中高一貫校は大学付属の学校だから、普通はそのまま上がっていくのだけど、僕は中学2年の作文に「将来はカメラマンになる!」と書いていたくらいで進路は決めていたので、通っていた学校にも近いし入れてくれるかな〜(笑)と思って、工芸大を受験しました。
結局8年間、中野に通っていました。当時の工芸大の写真学科は2年制だったので、僕としては日芸(日本大学芸術学部)に行くよりも、早く技術を学んで早く社会に出た方がよいのでは、という思いがありました。
高校時代の仲間からは「今も土屋に撮ってもらった写真を持ってるよ」って言われます。1980年代前半は、デジタルカメラはもちろん「写ルンです」もない時代ですから、例えば野球部の試合とかで、ユニフォーム姿の写真をプリントしてあげたら、ものすごく喜ばれた記憶があります。
ほんとは女の子を撮りたかったのだけど、男子校だから(笑)。汗臭いスポーツの写真を撮るしかないわけです。でも写真をプレゼントするとすごく喜んでくれた。それが嬉しかった。「写真って人を喜ばせることができるんだ」って。それが僕の原点です。大学では、商業写真の勉強をしていました。ブツ撮りとかポートレートとか。当時はバブル時代だからコマーシャル写真が面白くて、漠然とですがそういう道に進もうかと考えていました。
「CAPA」表紙を撮影中の土屋さん。
卒業後は企業の写真部や制作会社に就職するのではなく、レンタルスタジオへ就職されたのですね。
実は大手広告会社系列の写真部に内定を頂きました。そこの写真部長が西宮正明さんのお弟子さんだったんですね。「君はやる気はあるか?」とその人に聞かれて「あります!」って答えたら、手を握られて...。硬い握手かと思ったら、そのまま手を引かれて六本木スタジオへ連れていかれました(苦笑)。
「うちに来なさい」という意味ではなかったのですね。
「レンタルスタジオで1〜2年修行をして、それからうちに来なさい」という...。
土屋さん、話が面白すぎます。
当時の六本木スタジオは教育が厳しいところで有名でしたが、まさかそこへ行くことになるとは(笑)。見学に行くような気分で入ったら、1日もって、1週間もって、3ヵ月もって、気づいたら1年経っていました。その間、レンズの選び方、ライティングをすごく勉強しました。仕事が終わり、スタッフが帰った後、夜中の12時に、昼間と同じセッティングをして自分で撮っていました。
寮があって住みこみだから、それができちゃう。ライトを組んで撮影して、片付けて、朝になれば何事もなかったように仕事をするわけです。自宅にはなかなか帰れなかったけれど、それはメリットですね。
例えば篠山紀信さん、立木義浩さん、浅井慎平さん、加納典明さんがスタジオで撮影される。ありとあらゆる人が六本木スタジオに来られて、その最先端の撮影のお手伝いができるわけです。
「CAPA」より。Model:塩地美澄(フリーアナウンサー)
土屋さんの作品を拝見する中で、ロケ、自然光のイメージがありましたが、スタジオ撮影でよい経験をされているのですね。
「光」を作ることに関しては、すごく経験も積んだし、勉強もしたので、肌で覚えていった感じです。
六本木スタジオで経験した2年半はすごく濃密な時間でした。
篠山さんのもとで学ばれたことはなんですか。
技術的なことではなく、撮影、仕事に対する姿勢、考え方ですね。篠山さんを乗せて運転手をしていて、そこに長友(健二)さんがいたり、見城(徹)さん、田中(一光)さんがいて、そういう方々の会話を聞けるわけでしょ。吉永小百合さんがいて、家庭画報の編集長がいてとか...。そんな現場に居合わせられることはほぼないわけです。一流の方々のもとで「ものを創る」という姿勢を学べたことが、何物にも変え難い経験でした。
「CAPA」2017年12月号 http://capacamera.net/capa/
独立後は、どのように仕事のオファーを取っていかれたのですか。
篠山事務所を卒業ということで、様々な出版社からご祝儀がてら仕事をオファーしていただきました。もちろん表紙やグラビアは撮れないですよ(笑)。後ろの方の地味なページから始まって、作家や女優の取材、インタビューページと実績を積んでいきました。
デジタルカメラを導入されたのはいつ頃ですか。
2000年です。JALの機内誌の撮影でスイスに行ったとき、偶然写真家の吉田繁さんと出会いました。デジタルが大好きな方で、たまたま同じコースになり、何日か同行するような形でした。彼に進められて、キヤノンEOS D30を最初に試したのがきっかけです。
まだ300万画素時代でしたから、大きな媒体には使えなかったのでフィルムと併用していました。その後、D60で約600万画素と、画素数が増えて少しずつデジタル撮影に置き換わっていきました。
記録メディアは当時、マイクロドライブを使っていました。形はCFカードですが、中身はハードディスクなので、落としたら故障するとか、落としたつもりはないけれど、何かのショックでデータが飛んでしまったり...。36枚撮りフィルムの感覚でまめに交換しながら使っていました。リスクも考えてフィルムでも撮っていたりとか、今考えると本末転倒みたいな話だよね(笑)。
「CAPA」2017年10月号
「CAPA」の表紙撮影も、長年担当されていますよね。
「CAPA」の表紙を撮り始めて12年目です。表紙の撮影をデジタル化したのは、キヤノンのEOS 5D(2005年発売)が出てからですね。
その頃、デジタルとフィルムの両方で撮って、色校を出して比べました。そうしたら編集部も僕も見分けがつかなかった。「もうデジタルカメラでいけるよね」と。そこから切り替えました。
表紙と表4の東芝の広告との連動が始まったのが約7年前です。月刊誌とはいえ、編集部セレクト、事務所チェック、レタッチを考えるとあまり時間がないので、ダブルスロットに同じ画像(JPEG+RAW)を記録して、1枚は現場で担当者に渡すようにしています。
土屋さんの現在のメインカメラはキヤノンEOS-1D X Mark II、
メモリカードはEXCERIA PROの64GBを使用。
普段はどのくらいの容量のカードを使われていますか。
僕の場合、長期のロケはそれほどないので、32GBか64GBが多いです。でもEXCERIA PROで128GBが出てからは、そちらも使うようになりました。
カードを交換することによって、どこかに置いちゃったとか、頻繁に抜き差しすることにより物理的なリスクとか、何かしら起こる可能性が少しでもあるなら、大きな容量のカードの方が撮影枚数の心配もなくなるのでいいですね。RAWで撮っても余裕があります。
フィルムの時は、36枚撮りを100本持っていっていたわけでしょ。それが今は、128GBのカード1枚に全部入っちゃう。夢のようです。大きな容量のカードを使うと、後戻りはできないですね。
CAPA表紙撮影のセッティング。バック飛ばし用にアンブレラ2灯を左右に設置。
モデルの両サイドは白ボードで光を回していく。
トップからプロフォトのソフトBOXオクタ(8角形)をハレ切りしながら照射。
カメラ側下からは、ソフトBOXにブルーフィルターを貼って色温度を少し変えている。
昨年秋からEXCERIA Ambassadorとしても活動されています。
実際には「CAPA」表4の広告コラボレーションを東芝とスタートしはじめてから、ずっと東芝のメモリカードを使っています。その間、メモリカードでトラブルは一度もないです。とにかく「安心して使える」「安定して使えている」ということは素晴らしい。「EXCERIA」はちゃんとしている。ちゃんとした製品を買えば、間違いないですよ。
自分が使い続けていられることが実績だと思うけれど、「安定している」ということをどうやって言葉で説明すればいいのかな? 僕たちがずっと使っていて「他に変える必要はないよ」というのが本音。記録スピードも十分速い。
「今どのように撮られているのか」「どのようにしてほしいか」を
モデルやスタッフと会話をしながら撮影を進める。
「CAPA」菅原編集長(右)、福田副編集長と画像を見ながら打ち合わせる。
今日の撮影では、1秒間に2カットくらいのテンポでシャッターを切られていました。
そうですね。現在、メインカメラとしてキヤノンのEOS-1D X Mark II(約2020万画素)を使っています。ストロボのチャージタイムも考慮しながら、それくらいのペースで切っていってもカード記録はまったく滞りません。
土屋さんはEOS学園で一般の方にも教えられていますね。
キヤノンのEOS学園東京校でポートレートの講座を担当しています。生徒さんだけでなくアマチュアの方の中には、安いカードを買われる方もいます。でもシャッターを切っていて途中で固まっているから「どうしたの?」って聞くと、シャッターが押せないと...。後でメモリカードを見たら、どことは言いませんが、安価な製品を使っていました。でもカメラは、デジタル一眼レフのいい機種を使っているんです(笑)。
「RAWで撮ると書き込みに時間がかかるので、(やむを得ず)JPEGで撮っている」という人もいます。つまり、安価なカードを使うことで、撮影に制約が出てしまっている、ということなんです。
高級なデジタルカメラや、20万円のレンズを買っている人にとっては、メモリカードへの投資はいくらのものでもありません。そこは投資を惜しまず良いものを買ったほうがいい。「僕はEXCERIA PROを使っているよ」と、よく会話しています。
これだけ安定して使えていることが実績だし、毎日のように仕事で使っている僕たちプロが伝えていくべきことだと思う。いい写真が撮れるかどうかは、個人の腕次第なんだけど(笑)、撮影したものを記録する土台(メモリカード)がしっかりしてくれていることが重要なんです。
「CAPA」表紙撮影より。Model:塩地美澄(フリーアナウンサー)
衣装チェンジの際にモデルの両サイドを黒ボードに変更。
バック4灯も発光させないで手前とトップの光だけで撮影し、やわらかい影を落としている。
ポートレートを撮る機会が多いと思いますが、撮影で心がけていることはありますか。モデルやスタッフにカメラのモニターを見せながら、まめに会話をされているのが印象的でした。
「今、どのように撮っているのか」「撮られているのか」を説明します。「両サイドのボードを白から黒にするだけで、こんなに変わるよ」とか、「そういうことをプロはわかってやっているから、任せてね」と。そうすることで、安心感、信頼感が生まれますよね。それによって生まれる場の雰囲気、空気をすごく大切にしています。
例えば、「篠山紀信に撮られる」なんていったら、前日の夜から女優でも眠れなくなるでしょ(笑)。スタジオにきても「もう篠山先生は入っていらっしゃいますか」「はい準備しています」という会話があります。女優がスタジオに入ってきた時から、ある意味撮影は始まっているんです。シャッターを押す前に、ほとんどのことが決まっているんだと思います。
CAPAの表紙も、篠山さん、立木さん、山岸さんと僕の4人で35年間続いてきました。篠山さんが表紙を撮っている頃に、ちょうど自分がアシスタントをしていました。そして僕が撮るようになって12年。ようやく土屋の名前も、覚えていただけるようになってきたかなと思います。
モデルとのコミュケーションを大事に、現場の空気を和ませる土屋さん。
「どうしたらいい写真を撮れますか」と質問された時にどう応えられていますか。
一般の方も昔に比べてすごく上手くなっていると思います。例えば人数の多いモデル撮影会では、よいアングルを探せるか、というのも重要です。僕が伝えていることは、「光をみる」「タイミングをみる」「相手との距離を見る」「呼吸を合わせているか」そのことくらいです。
皆さん礼儀正しいので、よく頭を下げられます。と思ったら、頭を下げてカメラのモニターを見ているんですよ。撮ったら下を向いて確認して、そしてまた撮り始める。それがダメ(笑)。
それだと相手との関係性がプツっと切れちゃうんです。頻繁に下を向かれると、被写体側が不安になってしまう。「私、大丈夫かな?って」。撮影中にモニターを見るのはチラ見でいい(笑)。むしろ技術以上に、コミュニケーションが大事なんです。
「CAPA」表紙撮影より。Model:塩地美澄(フリーアナウンサー)
ストッキングを流用した手作りソフトフィルターも使用(右上写真)。
プロフォトグラファーを目指している人へアドバイスをお願いします。
夢を持てばいいと思う。写真学校で学ぶ時期は長くて4年、独立した後のルーキーイヤーは1年でしょ。長い人生の中ではあっという間。わからないことは勉強して、人に聞いて、何でもトライすればいいと思う。恥もかけばいい。
「ここで挨拶したら怒られるかな」ではなく、挨拶すればいい。よほど空気が読めないならともかく、挨拶されて嫌な人はいないからね。挨拶してタイミング悪ければ怒られた方が、何も言わない人よりも数倍いいです。
やってみたいことをやればいい。人に聞いて「それはまだ早いよ」とか「やらない方がいい」とか、言う人がいても気にしなくていいし、「先生、やった方がいいですかね」って、僕に聞く前に「やれよ」って思う(笑)。
土屋さんの作品より。
若手のポートフォリオ(BOOK)を見ていても、作品が均質化していると感じます。
明るいレンズで撮った美しいボケ味のポートレートとかは、先人が発表してきたわけじゃないですか。それが一通りできて、いまはストロボ1灯使って、雨の日に逆光で撮るのも、クリップオンでいくらでもできちゃうでしょ。昔は大変だったけど。
今は、機材の進化でそういうものがお手軽にできるけれど、みんな答えを先に知ろうとしている人が多いね。「あの撮り方はどうやればいいのですか?」と、やり方を聞いてきます。
またそういう先生たちは、撮影方法だけを教えるでしょ。撮り方だけ知識として入っていたり、ポーズのためのポージング本だったりとか、「コンテストに入賞できる写真の撮り方」とか。受けるポーズをさせようとして、返ってギクシャクしちゃうわけです。
「これどうやって撮ったのですか」と聞くって、どういうことなのか(笑)。最短距離で答えだけ聞いても、よい写真は撮れないと思う。そこはスピードを求め過ぎている気がする。その手前までにどれだけの経験値を積み重ねてきたか、というのがバックボーンとしてあるわけで、それが引き出しの多さと決断力につながっているんです。
土屋さんの作品より。
決断能力がないから決められないんだと思う。だから「こうしてこう撮りなさい」って、教えてもらいたいのかも。「135mm/F2のレンズはこう撮りなさい」とか。
事前準備、決断能力、記憶力(経験値)はすごく大事です。あとは発想力。これはその人次第ですね。「写真」はそれらを総合して作るもので、僕はそれをEXCERIA PROに記録し続けていきます。
東芝「EXCERIA PRO」シリーズ
高速連写・4K動画撮影対応のプロ仕様メモリカード
SDメモリカード:製品情報
http://www.toshiba-personalstorage.net/product/sd/sdxuc/index_j.htm
CompactFlash®メモリカード:製品情報
http://www.toshiba-personalstorage.net/product/cf/cfax/index_j.htm
「The Professional Voice」vol.6 土屋勝義 Photographer
1963年東京都築地生まれ。
1983年東京工芸大学短期大学卒業。六本木スタジオを経て、1986年より篠山紀信氏に師事。
1989年独立。
2000年「勇き光の戦士たち~つかこうへいの世界~」(ミノルタフォトスペース)他、以降も写真展を開催。2004年「AND ENDLESSの世界 ~FANTASISTA」にて開催。2006年デジタル侍 写真展「風林火山絵巻」 キヤノンSタワー2Fオープンギャラリー。2008年 日中文化交流写真展開催。JCCIIにて「花の舞」出展。2009年「瞳の中の少女 滝沢カレン 17才」ルデコ。2011年「瞳の中の天使 滝沢カレン」キヤノンギャラリー。2017年「築地ラビリンス」。
写真雑誌や広告、舞台写真などで活躍中。キヤノン・EOS学園、CAPA表紙撮影2006年~現在。
日本写真家協会会員
http://www004.upp.so-net.ne.jp/tsuchiya/
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