- 2017.11.10
Photographer星野耕作
今やドローンにカメラを積んだ空撮は、当たり前のように取り入れられている。
今回、フォトグラファーの星野耕作さんがトライしたのは、ドローンにバッテリーストロボを搭載した空からのライティング。
大型クレーンや建て込みの必要がなく、自由な位置から光を当てられる「ドローン・ライティング」は、カメラを搭載するのとは真逆の発想と言える。
九十九里浜で撮り下ろしたビジュアルとともに、星野さんにドローン・ライティングの魅力を訊いた。
M:ORIENTARHYTHM(オリエンタリズム)
協力:SkyLink Japan(ドローン)・PhaseOne Japan(機材)・自由が丘スタジオ
Interview:坂田大作(SHOOTING編集長)
照明にドローンを活用しようと思った理由を教えてください。
はい。今回まず、「ORIENTARHYTHM」というサカクラカツミさんが主宰する、沖縄空手とダンスを融合させたパフォーマーのグループと、ご縁があって知り合いました。ORIENTARHYTHMの皆さんと「一緒に作品撮りをしましょう」という話になり、どのような表現にするか検討していたのですが、彼らの希望として、炎を使ったり、墨や水を拡散させながらパフォーマンスをしたいという意向がありました。
炎や水を使うことを考えれば、スタジオ撮影は難しいので、海や外のロケーションの方が適しているなと思っていました。「ドローン・ライティング」に関しては、以前から構想として考えていました。またDJI等を取り扱うドローン専門店SkyLink Japanや、各方面からも協力してくださる方々がいたので「是非やってみたい」という思いでチャレンジしました。
ムービーキャメラ、アクションカメラを積んで撮影するというのは、かなり見慣れてきましたが、照明機材を搭載して使うという発想は、新しいと思います。
あと積載重量の関係とか、小さなドローンだと重い機材は積めないですね。
そうですね。ここではプロフォトのバッテリーストロボ「B1」を使っています。クリップオンなどの小型ストロボは軽いですが、光量が足りません。
例えばこの場所でセットを建てて、ライトを組もうとすると、すごい経費と時間がかかるじゃないですか。それがドローンだと、天候さえ問題なければ、当日にシミュレーションから本番撮影まで出来てしまうんです。
海上とか、崖の奥とか、セットが組みにくいロケーションでは、ドローン・ライティングは有効だと感じました。
左はDJI「Matrice 600 Pro」にプロフォトB1を搭載し、標準のズームリフレクターとレッドフィルターを装着している。�
ここでは両サイドからプロフォトD2を1灯ずつ配置し、海上のB1から背面に向かって照射しています。大事なのは「どの角度からあてるか」ということです。飛行中はストロボの角度の変更ができない為です。
ワークフローとしては、撮影しながら横にいるドローンのディレクターに僕の方から「こういう感じに」と指示を出します。ディレクターは、少し離れた所でドローンを操縦しているオペレーターにこちらの指示を的確に伝えます。チームワークが必要ですね。
ドローンのディレクターに指事を出す星野さん。それを受けてオペレーターがドローンを操縦する。
プロフォトのストロボだと、Air リモートがついているので、光量も手元で調整できるので便利です。一々ドローンを戻して露出を変えるのは、時間とバッテリーがもったいないですから。
「ORIENTARHYTHM」の皆さんの衣装も独特ですね。
衣装や小道具などオリジナルで製作していらっしゃいます。日本以上に海外で人気のあるグループで「和」を感じますね。
ポージングはどうされているのですか。
どのような動きをどう撮るのかは、事前に室内でテストをしています。デジタルカメラはその場で見られるので、ポージングやライティングは、最終的には現場で試しながら詰めていっています。
この写真に関しては、両サイドからはテグスで吊っていて、シャッターを切るタイミングで放しています。センターは自身で振り上げて頂いていますが、きれいな形になりましたね。天候にもよりますが、自然光のみで撮影するとフラットな感じになります。またストロボを発光させないとこのような写真になります。
九十九里での早朝撮影ということですが、夜明け後の逆光ですね。
逆光でストロボ撮影すると被写体が映えますよね、九十九里浜は夕方だと順光になってしまうので早朝から撮影しました。写真は水風船に墨が入ったものを割った瞬間を捉えています。
ドローン・ライティングのメリットと、気をつけないといけない点はありますか。
メリットは、セットを組むことに比べて圧倒的に「自由な位置に光を持ってこられること」ですね。現場で調整しつつ思い通りのライティングが作れます。
デメリットとしては、ドローンに装着して飛ばしている分、アクセサリーがあまり使えないことです。小型のリフレクターなら問題ないですが、傘とかソフトBOXはドローンと接触したり、空気抵抗など、色々問題が出てきます。
着地する時に地面に当たって壊れる可能性もあるので、傘が一番難しいかもしれませんね。あとは天候に左右されてしまいますが、それは普通のロケでも同じですね(笑)。
PhaseOneのWifi機能で画像をタブレットに転送することで、イメージを共有しながら撮影が進められる。
LEDライトなど、様々な照明機材が使えそうですね。
バッテリータイプのLEDライトもケースによっては使えます。その場合は、小型のドローンでもいけそうです。ただ定常光で出力が弱いと日中では使えないのと、光量を稼ぐために被写体に近づきすぎると、フレームに入って絵柄に影響することも考えられます。この撮影では、B1を500Wsでフル発光しています。
カメラは何を使われていますか。
フェーズワンXF IQ3 100MP(1億画素)で撮っています。ドローンを扱っているスカイリンクは、フェーズワン社と業務提携しているのでやりやすかったです。
これから「ドローン・ライティング」は伸びそうですか。
予算のある広告案件なら、敢えて使う必要はないかもしれませんが、それ以外ではコストパフォーマンスも高いですし、MV等では、あえてドローンを映し込ませる撮り方も出てくるかもしれませんね。 2~3台使うとか、俯瞰に近いスポット光を外でもやってみるとか、色々表現の可能性は広がると思います。
このような撮影をしてみたいという人はどうすればよいですか。
大前提ですが、ドローン撮影で気をつけないといけないのは、航空法の順守と許可取りですね。ドローンを操縦するオペレーターも必要になってきます。近くに詳しい人がいない方は、SkyLink Japanに問い合わせてみるとよいと思います。
Model:ORIENTARHYTHM http://orientarhythm.com/
ドローンオペレーティング:SkyLink Japan http://www.skylinkjapan.com/
機材協力:Phase One Japan https://www.phaseone.com/ja-JP.aspx
自由が丘スタジオ http://www.jiyugaoka-studio.com/
星野耕作 Photographer
1979年 東京生まれ。
日本大学生産工学部卒 元メーカー子会社勤務 デジタルカメラの開発に携わる。
テラウチマサト氏に師事後フリー。
現在、ポートレートを中心に撮影、雑誌、CDジャケット、カタログ等で活動中。
http://kousakuhoshino.com/
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