ファッションフォトに興味を持たれたきっかけは何ですか。

10代の頃からずっとファッションに興味を持っていました。でも田舎育ちで、ファッションフォトグラファーという仕事を全然知らなくて。大学ではファッションとは関係ない経済学部で学んでいたのですが、偶然にもブルータス編集部の学生アシスタントになることができたんですよ。

『BRUTUS』ではどんな経験をされましたか。

特集主義の媒体なので、号ごとに特集内容ががらりと変わります。それこそ風俗嬢からハイエンドなファッション、車、時計など、ジャンルの振り幅がすごく広い。様々な被写体の撮影を経験したことで、すごく勉強になりましたね。

多彩な撮影現場を見ることができたのもすごくよかった。当時の『BRUTUS』はいろんなフォトグラファーが撮影を担当していて、操上和美さんや冨永民生さん、三好和義さんなど、そうそうたる方たちの現場を体験することができました。タイプの違うフォトグラファーの撮影を見たことで、興味の範囲が広がりましたね。

様々な経験を重ねた中で、やはりファッションを選ばれたのですね。

ファッションへの思いはぶれませんでしたね。ブルータス編集部を辞めた後は、安部英知さんのアシスタントとして、みっちりとファッションフォトを学びました。


笹口悦民さん。

フィルムの頃は、4×5in判でファッションを撮られていましたよね。

そんなときもありましたね! 4×5in判で撮るときはフィルムの枚数が限られているので、10枚しか撮らなかったんですよ。撮影前にライティングもモデルの動作もある程度決めてしまうので、撮影中の偶然性というのはまったくなかった。演出するというか、「舞台をつくって、そこでどうするか」ということを重視していました。

その考え方はいまでも一緒で、偶然を求めて撮ることはほとんどなくて、セットアップした状態で撮ることのほうが好きですね。セットアップした中で、モデルの表情を引き出していく。その集中力や緊張感を大切にしたい。だから風景写真を撮るときも、最初から撮りたい画があって、ひたすら良い光がくるのを待つという感じなんですよ。スナッピーな撮り方をすることってほとんどないですね。

MOOK本『女優美学』では、数多くの若手女優を撮られていますね。

ファッション撮影と女優さんの撮影では、「女性を撮る」という点では同じですが、「気持ち」の部分はまったく違います。ファッションの場合、自分の世界の中で完結できますが、女優さんの場合は相手が主体になるので、「相手がどうやって動くか」とか「どう演出するか」ということを考えながら撮っています。女優さんとセッションする感じといえばわかりやすいかな。

「この人はこう撮りたい」というのはあまりなくて、どちらかというと引いていたいタイプ。相手の演技を記録したいんです。でも自分の撮りたい世界はあるので、彼女たちに自由に動いてもらいながら、どうやってそこに導いていくかということを常に考えながら撮っています。そこが撮れないと、自分の写真ではないですから。


Untitled 27 / Musashigawabeya(「笹口悦民写真展 無言の恍惚」より)

作家活動をするようになったきっかけを教えてください。

作家になろうと思って作家活動をしているわけではなくて、「良いものを撮りたい」という思いでやり続けてきたことで、「笹口悦民写真展 無言の恍惚」の開催につながりました。仕事でも作品撮りでもテーマ性やメッセージ性を大事にしているので、被写体が何になろうと見え方はフラットなんですよ。

今回の写真展は組写真での展示でした。

一見、関係がないように思われる写真を組写真にしていますが、僕にとっては美的感覚のラインが同じ作品を並べています。たとえば、女性がペディキュアを塗っている作品は『VOGUE』のビューティー特集号の表紙ですが、組み合わせた相撲の作品と感動したポイントが一緒でした。手法も被写体もまったく違う作品ですが、琴線に触れる部分が同じだったから、この2つを組写真として見せたいと思ったんです。

被写体ではなく、メンタルな部分が同じ作品を並べているということですね。

昔の写真家も被写体で区別してないですよね。僕はアーヴィング・ペンやリチャード・アヴェドンが好きなのですが、彼らはドキュメンタリーも撮れば、スティルライフも撮るし、『VOGUE』などでファッションフォトも撮っていた。彼らのような感覚でいたいというか、彼らの感覚のほうがよくわかります。

トリッキーな展示方法ですが、「なぜ、この2点がセットになっているんだろう」などと面白がって、ゆっくりと鑑賞してもらえるとうれしいですね。


Untitled 18 / Untitled 17(「笹口悦民写真展 無言の恍惚」より)

この写真展のコンセプトはどのように決められましたか。

開催する1年以上前から何度もミーティングを重ねました。生い立ちからインタビューしてもらい、僕がやりたいことを客観的に掘り下げてもらったんです。

"客観的"というのがポイントなんですね。

自分の考えだけで決めると主観的になって人には伝わりにくい。これがギャラリーくらいの広さであれば、個人の思いだけでもいいと思います。でも彫刻の森美術館くらいの広大な会場では、展示数も200点近くになりますし、入場料も取ります。

第三者の人に噛み砕いて分析してもらい、誰が観ても「美しい」とか「わかりやすい」とか「居心地が良い」などと思ってもらえる、客観視された内容にしたかったんですよ。

今回は、写真だけでなく「言葉」で伝えることにも重きを置かれていますね。

観る人にとっては「言葉」も大事な要素だと思ったからです。日常的に写真に関わる人なら、ある程度、客観的に観ることができますが、一般の人はそういうわけにはいかない。だから、作品に"取扱説明書"のような言葉をつけたらどうかなと思ったんです。"取扱説明書"がついた写真展なんて、珍しくて面白いかなって。

写真展では〈気配〉〈距離〉〈質量〉〈透明〉〈輪郭〉と5カテゴリーに分けて展示していますが、普段はそんなことを考えながら撮っているわけではありません。でも言葉で説明することで、より鑑賞が深くなり、楽しんでもらえたらうれしいですね。

一つひとつの作品に対して、想像を一歩先に進めることができそうですね。

美術館は公共の場なので、アートに対する理解を深めるとか、新しい面白さを提供するといった、文化的な側面を持たせたかったというのもあります。

何回か来場客に混ざって会場をまわってみたのですが、みなさん、ちゃんと楽しんでくれていてすごくうれしかったですね。写真展に来ているのに、花の作品を観て「これ、CG?」なんて面白い反応をしてくれて(笑)。プリンティングの精度が良くて、あまりにもディテールの密度が高いから、CGのように見えたのかもしれませんね。


EXCERIA PRO のCF(左)とSDメモリカード。

デジタルカメラを使い始めたのはいつ頃ですか?

けっこう早い時期から使い始めましたが、仕事で使えると思えたのはリーフのデジタルバックからです。それまではフィルムカメラで撮ってスキャンしていました。自分でネガプリントをしていたので、階調表現に対する強いこだわりがあったんですよ。

いまは仕事ではハッセルブラッドを使うことが多いですが、ロケなどフットワークを軽くしたいときには35mmのデジタルカメラを使っています。撮影方法としてはテザー撮影が多く、PCとメモリカードに同時にバックアップしていますね。

メモリカードのみでスタンドアップで撮ることもありますか。

風景を撮るときは全部そうですし、個人の作品など自由に撮っていい場合は、スタンドアップで撮ることが多いです。人に見せる必要がないのでテザー撮影もしません。

メモリカードに求めることは何ですか。

一番は安定性です。最初はプロショップの薦めで購入したメモリカードを使っていましたが、1年程前から東芝の「EXCERIA PRO」を愛用しています。

「EXCERIA PRO」の印象を教えてください。

基幹部品のメモリが、東芝の自社工場で生産されているので安心感がありますね。フォトグラファーにとってメモリカードは非常に使用頻度が高いものだし、撮影ごとに必ずフォーマットするので安心して使えるのが一番です。


Untitled 37 / Untitled 38(「笹口悦民写真展 無言の恍惚」より)

メモリカードにまつわるトラブル経験はありますか。

海外ロケ時に盗難に遭ったことがあります。ロケバスが車上荒らしに遭って、すべての機材を盗まれてしまいました......。幸い、撮影したすべてのデータのバックアップを手元に持っていたので、なんとかなりましたが。

バックアップは大事ですね。

すごく大事! 二重、三重にバックアップをとっておく必要性を改めて感じました。だからロケのときも、なるべくすぐにバックアップをとるようにしています。撮影の合間や休憩のときは必ずバックアップ作業をしますよ。

「EXCERIA PRO」を使ってみて、PCにバックアップするときの転送速度の速さには驚きました。大量のデータを転送してもストレスを感じなかった。バックアップの待ち時間って他の作業ができないので、時間短縮になっていいなと思いました。

撮影前に毎回フォーマットを行うということですが?

撮影のパフォーマンスを上げるために、撮影前には必ずフォーマットしますね。ただ、フォーマットを繰り返すことでメモリカードの耐久性も徐々に落ちていきます。メーカーの保証期間を買い替えの目安にして、必ずバックアップをとっておくのをお薦めします。


Yuri Ebihara with Graff Diamonds / Krabi, Thailand 01(「笹口悦民写真展 無言の恍惚」より)

今後の活動予定を教えてください。

もっとアートな方向をやりたいと思っていて、写真でも映像でも僕の持ち味を活かせるものを撮っていきたいです。今度、映画で撮影監督を務める予定なんですよ。あと、花が枯れていく様子を動画と静止画で見せる作品プロジェクトも動き出したところです。

これからもクオリティを大事にしていきたいということですね。

僕が撮る意味はそこにしかありませんから。だから、クオリティのためなら最新機材やテクノロジーを積極的に取り入れてきました。機材やテクノロジーで表現がよくなるのであれば、これからもどんどん取り入れていきたいと思っています。

メモリカードは、クオリティを追求する姿勢を陰で支えてくれるもの。いくら書き込み速度が速くても、信頼して使えないメモリカードでは意味がないんです。ジャパン・クオリティの「EXCERIA PRO」の安定性なら、撮影に集中することができる。これからも支えてもらいながら、クオリティにこだわっていきたいです。



「笹口悦民写真展 無言の恍惚」
日時:2015年11月21日(土)〜2016年2月14日(日)
場所:彫刻の森美術館 緑陰ギャラリー
開館時間:9:00〜17:00(年中無休・入館は閉館の30分前まで)
入館料:大人1,600円/大学・高校生1,200円/中学・小学生800円
http://www.hakone-oam.or.jp/specials/2015/silentenchantment/




東芝「EXCERIA PRO」シリーズ
高速連写・4K動画撮影対応のプロ仕様メモリカード。





SDカード:製品情報
http://www.toshiba-personalstorage.net/product/sd/e2pxc/index_j.htm
CFカード:製品情報
http://www.toshiba-personalstorage.net/product/cf/ex/index_j.htm