- 2014.03.25
Photographer魚住誠一
プロフォトから発売された、新型ストロボ Profoto B1 500 Air TTL(以下B1)。
モノブロック型の筐体に、バッテリーを搭載し、最大500Wsで220発のフル発光が可能。Airリモートで、出力やレリーズを制御できる話題の製品だ。
B1インプレッションの第4弾は、魚住誠一さん。
魚住さんは「ポートレート専科」を主宰。メルマガ「週刊ポートレート図鑑」の発行や、写真集や雑誌での撮り下ろしなど、ポートレート撮影を中心に活動している。
普段「自然光での撮影も多い」と言う魚住さんと、B1でのロケを敢行。
「自由に持ち出せるストロボを使うことで表現がどう変わるのか」、「ポートレート撮影で光を当てる意味とは...」撮影後、魚住さんにインタビューした。
衣装協力:Siste"s(システス)/クールカレアン(株)03-5740-2734
魚住さんは普段、自然光で撮影される事も多いと思いますが、どのようなシチュエーションの時にストロボを使われますか。
ストロボを使うのは、基本的にはメイクの質感を出したい時とか、洋服の素材感を見せたい時。自然光に光を加えて撮るにしても、絞りを開けてポワンとやわらかい感じで撮るのではなく、しっかり絵を見せたい時に使います。
「逆光だから」「暗いから」という状況で、内臓フラッシュやクリップオンを使われる方は多いですね。
一般的には、それがいちばん主要な使い方だと思います。ただ「光」が足りているところで、輝度差を計算した上でさらに強い光を当てて、「肉眼では見えていない世界観」を作るとか、そういう「ストロボじゃないとできない面白さ」はあります。
僕が20年位前にアメリカへ行っていた頃、そう言った絵を見て、「何だ、この世界は!」って、思ったわけです。それはファッションフォトからではなく、洋楽CDのアー写だったり、ジャケ写だったり。
Photoshopもない時代、何がどうなっているかわからない写真に対して、「これ、どうやったら撮れるんだろう?」と、不思議に思った事が多々ありました。
その後フォトグラファーの仕事をし始めて、スタジオ撮影もする中、「ああ、そういうことね」って、徐々にわかってきました。
その後くらいから、僕の頭の中では、ストロボで撮りたくてしょうがなかったわけです(笑)。ただ当時は、自分の撮影料の中で、まず「カメラ」を買いました、「レンズ」を買いました、「中判カメラ」を買いました。その後に「ストロボ」という順序にならざるを得ませんでした。
しかも外に持ち出せるかと言うと、難しいですよね。今はバッテリーストロボも色々あって、AC電源がないところでも、そういう撮影が楽しめるいい時代になったと思います。
B1を使ってみた印象を教えてください。
B1は、すごく直感的に使えるバッテリーモノブロックストロボですね。説明書を見なくても、ストロボを触った事がある人ならば、表示を見ていればほぼ100%、間違いなくコントロールできるし、細かい調光も可能です。
でも僕が一番いいなと思ったのは、「デザイン」なんです。
今まで「持っていてかっこいいストロボ」って、あまりなかった。しかもバッテリー付きなのに軽くて持ち運びに便利。
僕たちが使っていたストロボで、あそこまでスタイリッシュでかっこいいストロボはないし、実用性の面でも、今回初めて使ってみて、B1がもし3灯くらいあれば、かなり自分の世界観が変わるだろうなって、感じました。
そのくらい想像力を掻き立てられるストロボでしたね。
ロケ場所は羽田空港近くで、午前中はかなりピーカンでした。現場での「B1」のハンドリングはいかがでしたか。
すごくいいですよ。ストロボは瞬間光なので、どうしても難しいというイメージがあると思うんです。僕はライティングの基本をストロボで学んできたので、怖いというイメージはまったくないし、今はデジカメだから撮ってすぐ確認できる環境があり、「発光した光が写真にどう影響しているか」すぐにわかります。
特に今回使ったB1は、TTL調光できると言うメリットがあるので、ストロボに関して苦手意識がある方も、カメラまかせのオートで意外と「当たる」んです。
これは「大きな事」です。僕たちが普段使っているクリップオンストロボで(マニュアルも使いますが)、条件の悪い時にTTLで撮っていて「ドンピシャで来るよね」っていう現場が多いんですよ。それと同じような感覚で、本格的なストロボが使える。
B1の500Wsの出力で、しかもソフトBOX等を付けた状態で露出を気にせずクリップオンと同じ操作性で撮れる。「本当にいい時代になったなあ」という気がします(笑)。
なぎさ公園に着いた後、セッティングから本番撮影まですごくスピーディでした。
「どういうライティングにするか」は、自分の中である程度先にイメージを作っていましたから。
この公園での撮影は、ソフトBOXでモデルを両サイドから挟み打ち、手前からメインを少し足す、というライティングにしています。その挟み打ちにした時の「テカッ」「とした質感は、ストロボならではです。
15年位前にEKファッションで流行った、「両サイドにエッジを出す」という撮り方を、時代を経て、またそういう組み方が簡単にできるのはすごく面白いです。
ただ「最終イメージ」をしっかり持っていないと、単にTTLまかせで撮っても、「ストロボが光ってますね〜」で終わってしまいます。ストロボを使ったかっこいい写真をたくさん見て、「こういう風にしたい」という落とし所を持っておく事が重要です。
右は自然光のみで撮影したカット。B1を使うことで、被写体がよりクローズアップされる。
ロケでも光を当てることで自然光とはまったく違った作品が撮れる。
公園の撮影では、スリットBOXと、ビューティディッシュ(オパライト)を使いました。
いやもう画期的ですよ。これだけでB1をチョイスする意味があると思います。
普段、僕達が仕事で使うレンタルスタジオに、プロフォトのジェネタイプのストロボが置いている確率は高いわけです。
そういう機材やアタッチメントをもう10年以上使っていて、体が覚えているじゃないですか。それと同じものを外に持ち出してライトを組めるのは、僕にとっては夢のようなシステムですよ。
今回は日中の撮影でしたが、LEDのモデリングはどうでしょうか。
必要ですね。逆光の時にAFとかで撮っていると、AFも迷う時があります。LEDは直線性が強い光質なので、そういう時の補助光としても役立ちます。
モデルさんには眩しい時もあるでしょうから、その辺はうまくケアしてあげて欲しいです。
衣装協力:KAMISHIMA CHINAMI/カミシマチナミ 03-3406-9210
午後は太陽が出たり陰ったりという天候の中、雲間から陽が射した瞬間に集中して撮影されていました。
最初はフル発光していましたが、途中から70%くらいで光らせていました。
だいたい秒3〜4コマでシャッターを切っていましたが、余裕でついてくるんですよね。
時間とか機動力を考えた場合、また今回のように、真冬なのに春物ファッションのような薄着での撮影とか、こういう時にフォトグラファーにとってもモデルにとっても、チャージでのストレスがなく、集中して撮れるのはありがたいです。
B1に関して、さらなる希望はありますか。
500Wsのフル発光で220発飛ばせるわけですが、僕が次に望むとしたら、あの形のままバッテリーが大きくなってもいいので、人物撮影用にさらに容量の大きなバッテリーが付くといいですね。
それとは別に、800〜1200Wsのラインナップがあれば。メインは1200Wsを一つ持っていて、サブで500Ws 2台とか、そうすれば最高のシステムが組めます。
カメラを買う人は多いですが、照明機材を買う人はまだ少ないです。
バッテリーストロボを所有する事は、「24時間、どんな場所でも撮影できる」と言う事なんです。ライティングは一度覚えてしまえば、あとは繰り返しなので、アレンジすればいい。でも自然光で撮る場合は、良い時も悪い時も「天候に合わせる」しかないんです。でもストロボならそこが安定する。
そして最も大切なのは、「色温度に関して自分で責任を持ち、常にコントロールできる」と言う事なんです。シャドー部に変な色がかかって来る事も少ないですし、RAW現像からでも仕上がりがスムーズです。
自然光だけで、めちゃめちゃ感度を上げて撮影し、後で現像の際に色が被って四苦八苦するよりも、ゴールへの到達も早いです(笑)。
その場の光だけよりも、「鮮度のいい光を与えた上で撮影する」という発想に切り替えていかなければ、フォトグラファーとしてのスキルも上がらない気がします。
カメラを新しいものに変えた所で写真はうまくなりませんが、ストロボを一つ買って、直射、ディフューズ、バウンスを勉強すれば、世界観が「ガラッ」と変わります。
写真は「光」です。その光を操れるのがフォトグラファーの最大の魅力です。女性の機嫌をとるのがポートレートじゃないんですよ(笑)。
まだストロボを持っていない若い方へオススメできますか。
買ってほしいですね。最初の海抜けカットは3灯使っていますが、後半のカットは、1灯+ソフトBOXで撮っているわけです。それならアシスタントがいなくても、スタンドがあればライトは組めますから。是非トライしてみてほしいです。
それと今回のB1セットなら車も要りません。「カメラとレンズ、B1、スタンド、折りたたみのソフトBOX」なら、一人で電車移動できる容量なんです。若い人にとっては、そこのメリットもすごく大きいと思います。
意図的に背景を落とす事で、雲のニュアンスが出てドラマチックな写真に仕上がる。
「B1+ソフトBOX」を使うだけでキャッチライトが入れられ、リップのツヤ感が引き立つ。
メイキング
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最初の撮影場所は「京浜島つばさ公園」。
羽田空港に面した海岸線にある公園で、離着陸する飛行機を眺められる。
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午前中は無風でピーカンの天候。モデルの両サイドをソフトBOXで挟み込み、正面からオパライトを照射。
コードレスなのでライト位置が調整しやすく、セッティングも早い。フル発光でも1〜2秒でチャージするので、撮影のリズムが崩れない。
- 午後は空港近くのヌケのいい場所で撮影。陽が出たり陰ったりと、光の状況は刻々と変化していく。
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ソフトBOXを付けたB1をアシスタントが手持ちで照射。
フロントや右サイドなど、魚住さんの指示でライトの位置を自由に動かしながら変えていく。こういう撮影はB1ならでは。
B1 500 Air TTL
●主な特長
・特許申請中の新機能AirTTLにより自動調光可能。
・1回のフル充電で、フル出力での最大220フラッシュの発光可能である、着脱可能、内蔵型バッテリー。
・コードレスでワイヤレスAirシステム搭載によって、ケーブルの長さに制約されず撮影可能。
・最大20フラッシュ/秒の連続発光可能であるQuick Burstモード。
・9 f-stop (2-500Ws)の出力レンジ間で、0.1 f-stopステップでのファインチューニング可能。
・プロフォトの幅広いラインアップのライトシェーピングツールを取付け可能。
魚住誠一 Photographer
1963年愛知県生まれ。高校時代はインディーズ・ロック・バンドで活動。
その後、ロサンゼルスでアンセル・アダムスの写真に出合い、風景写真を撮り始める。
渡米を繰り返し、スタジオ・アシスタントを経て94年よりフリーとして活動。1998年より拠点を東京に移す。
2002年、デジタルカメラ「キヤノンEOS 1Ds」導入。撮影の90%をデジタルで行なうスタイルを提案。
2007年~現在、渋谷ルデコギャラリーにて自身主催の合同写真展「ポートレート専科」を開催。その他現在まで数々の書籍や写真専門誌、ファッション誌、音楽誌などで活躍中。
http://www.zoomic.jp/
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