- 2013.11.15
Photographer八木 規仁
サンスターストロボから発売された、新型ジェネレーター「Complete One(コンプリート ワン)」。
コンパクトな筐体の中に、1200Ws・3回路独立調光、閃光速度優先、色温度優先モードを備え、これ1台でおおよその事は出来てしまうと言う正にコンプリートな製品。
今回は、フォトグラファーの八木規仁さんが「Complete One」を使い、ビューティを撮り下ろし。
NYで活動し、様々な照明機材を使われてきた八木さんに、新型ジェネレーターのファースト・インプレッションを聞いた。
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Hair : SHIMMA (surge) Make-up:栢木進 Retouch : 森田昌宏 Model : Mariana (white model management)
カメラ:Phase OneP45 レンズ:120mm 絞りf22 ISO100
八木さんは普段、どういうストロボを使われているのですか。
僕は2000〜2008年まで、NYで仕事をしていました。アメリカ人のメンバーとアライアンスを組んでスタジオを構えていましたが、その時はプロフォトとノーマンを使っていました。「ノーマンって、何?」って言われそうですが(笑)。あとスピードトロンとか。
4人でスタジオを共有していたので、各個人が持っている機材を寄せ集めた感じでした。スティルライフがメインだった僕は、そこにブロンカラーを持ち込みました。
恥ずかしながら、この企画の話を頂くまでは、日本製のストロボって使ったことがなかったんです。レンタルスタジオを使うような時は、ブロンカラーかプロフォトがあるところでしたら、どこのスタジオでも問題なく撮影できますし、あえて他を使う必要性を感じていませんでした。
開発途中ではありましたが、初めて「Complete One」を使われてどうでしたか。
実は今回のビューティ撮影の前に、あるアサイメントで「Complete One」をハウススタジオで使わせてもらいました。普段の撮影では自分の照明機材は持っていかないのですが、ハウススタジオということもあり、機材がほとんど用意されていないので、現場での使い勝手を試してみる意味もあって「Complete One」を持ち込みました。
初めて「Complete One」を扱うアシスタントにも、なかなか好評でしたね。オペレーションがシンプルなので、最初に少しだけ説明したら、そのあと僕は一切ストロボに触らなくてもいいくらい、スムースに使っていました。マニュアルを熟読しなくてもそれなりに使えるシンプルなオペレーション・デザインだということでしょう。
あと、ボディサイズが小さいこと。「パワーパック+ヘッド」を2セットお借りしていましたが、非常にコンパクト。車の積載スペースは限られているのでありがたいです。アメリカにいる時は、サイズの事を考えたことはあまりなかったのですが(笑)、日本に帰ってきて、普段 "機材をどこに仕舞っておくのか"と考えた時、コンパクトな方が置き場所にも困りません。
ハウススタジオならまだいいのですが、ホテルやレストラン等で撮影するような場合、備え付けの撮影設備はまったくないですよね。でも広告的なクオリティは求められるわけで、そうするとストロボ2パック、もしくはパワーパック3台とヘッドを予備も含めて9~10個持っていきます。
それだけで車のトランクが一杯一杯になります。そういった場合にもサンスターはヘッドも小さいので、助かりますね。いつもいつも機材車を出してもらえるわけではないですから。
ビューティの撮影ではどんな印象を持たれましたか。
今回、2カットを撮り下ろしたわけですが、ビューティ・ショットの方は1灯で撮影しています。オパ型のビューティ・ディッシュをつけて、1200Wsで発光しています。カメラはフェーズワンP45にISO100、f22での撮影です。
もう一つのヘア・ビューティ・ショットは、ハイスピードでストップ・アクションを撮るという目的だったので、ヘッドを3灯にして、出力を絞って閃光速度優先で撮影しています。見事に髪の毛先まで止まっています。
このコンパクトなボディで1チャンネル・フルパワーと3チャンネル・インディビデュアル・コントロール、どちらも対応できるのはとてもステキです。
用途別に何種類かのストロボを揃えて、しかも置き場所に困らない人はいいですが(笑)、3灯を個別に調光できて、カラーとスピードモード、どちらも対応できるというのは、さすが新製品というか、フレキシビリティが高いです。
そういう意味では、Complete One1台とヘッドが3つあれば、通常の撮影はほぼカバーできますね。
そういう事ですね。
今回、モデルを撮っていて言うのもなんですが、仕事ではスティルライフも多く撮っていて、最近は135タイプのディジタルカメラでの撮影も増えてきて、3灯インディビデュアルにパワーを絞りつつ細かくコントロールしたいなあと思うのですが、海外製品も含めて、それができるストロボってそう多くはないですよね。しかもどれもボディがそれなりに大きい。そう考えたら、「Complete One」は非常にハンドリングがよくてトータル・パフォーマンスが高いと思います。
3チャンネル独立ですが、できれば4チャンネル欲しい(笑)。
何故かと言うと、以前NYで使っていたノーマンのパワーパックで、「Complete One」より少しだけ大きいサイズで4灯使えるものがあったんです。ただ2チャンネル独立調光でしたが、それも使いやすかったです。いまから考えると色温度は怪しかったですが(笑)。
「Complete One」は、どういう人にオススメかと聞かれれば、人物でもスティルライフにも使えるので、色々なものを撮らないといけない若いフォトグラファーですね。
フレキシビリティが高く、1台で何でもこなせるのでいいと思います。将来的に撮る方向性が決まってきても、わざわざ買い替える必要がないでしょうから、長く使えるんじゃないでしょうか。ファッションやビューティ、スティルライフなど、用途を限定しません。
サンスターさんにお願いしたいことがあるとすれば、リフレクターやライト・アクセサリィの種類がもっと増えるとさらにいいですね。ビューティ・ディッシュのグリッドとか、ライトをもっとシェイプしていくツールがあれば嬉しいです。そしてなにより日本製のプロダクトとしてきめ細かく、長くサポートしていただけると、フォトグラファーは助かると思います。
抽象的な質問ですが、「光を作る」事にどのような意味があるのでしょうか。
この仕事って、特殊な機材ってあまりありませんよね。カメラは一眼レフ、お金を出せばデジタルバックも買えます。そこでの差は基本的にないわけです。
ではその差は何かと言うと、結局「対象物をどうとらえるか」なんじゃないかと思うんです。
それを"センス"っていうのかもしれませんが。
写真を構築するエレメントっていろいろありますが、大きく分けて3つに整理できるんじゃないかと思います。
1つはカメラサイド。絞り、シャッター速度、それといわゆるレンズワーク。何ミリのレンズを使うのかとか。あとはアングルでしょうか。
2つめに対象物サイドでは、モデル(人物)だったらどう動かすか。表情の作り方、ポーズの付け方という人物ならではのもの。プロダクトだったらどう設置するかセットの作り方等のファクターがあります。
3つ目に、どういう光、ムードを作るのか、というライティングのファクター。おおまかに分けるとそういう感じだと思うんです。
その3つのコンビネィション、すなわち知識、技術、センス(感覚)で写真が創られるわけですが、商業写真である以上、もちろんいろいろな制約があります。
そういった制約のなかで、自分の嗜好も含めて、コンセプトに合ったカメラやレンズの選択があるように、そのコンセプトに合わせて求められるライティング(光)があります。もちろん好みもあるし、アサイメントに応じた、光の作り方というのもあるでしょう。
そういった写真を構成するいくつかのエレメントの中で、大きなファクターが意志のあるライティングだとすると、それをシチュエーションに応じて思い通りにコントロールする、創ることができるというのは、大きなアドヴァンテージになります。
それにきちんと応えることができるエクイップメントが日本製でリリースされた。それをちゃんと使いこなすのが、プロフェッショナルなフォトグラファーだと思います。
- モデルをメイク中の栢木さん(左)と、ウィッグを制作中のヘアーのSHIMMAさん。
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今回は「Complete One」を2台準備。ライティングは色々試行錯誤した上で、
最終的には標準リフレクターにグリッドを装着してメインライトにした。 - ピンクのウィッグを付けた左サイドから風を送りながら撮影。
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ヘアーカットの撮影。八木さんの合図に合わせ、SHIMMAさんがリグで髪をなびかせタイミングを合わせながらの撮影。
閃光速度は、1/10000秒に設定。カメラはCanon EOS 5D MarkIII。
山本芳大
日常の撮影領域をカバーする
コストパフォーマンスに優れた「オールイン1」ストロボ
「Complete One」の最大の特長は、ボタン1つで「Color Mode」と「Speed Mode」を切り替えられる点です。
いきなり専門的な話になってしまいますが、シリーズカット調光のみのストロボにしてしまうと、1/11000秒というすごく早い閃光速度が出せる反面、普段使いでは青みが出てしまいます。
そのため、人物撮影、商品撮影を含め一般的な撮影を網羅するため、色温度を重視した「Color Mode」も搭載しました。「Color Mode」にすると、上下の色温度差が200ケルビン以内に抑えられます。発光管の劣化による色の誤差でも300~400ケルビン出る事はありますので、それよりも少ない誤差の中で、フル発光(1200Ws)から1/64調光が可能です。それを「Speed Mode」に切り替えると、1/11000秒まで閃光速度を速めることができます。
速い閃光速度が必要な撮影で他メーカーをレンタルされていた方にとっても、普段の撮影にも使いながら、いざとなれば「Speed Mode」が使える、この1台で両方をカバーできるという意味で、「Complete One」という製品名にしています。
「E043」「f043」で、弊社がいち早く「400Ws~最少」まで個別調光できるという製品を発売しましたが、最大の弱点は、1灯で800Ws、1200Wsが出せない事でした。
「Complete One」では1灯使いで最大1200Wsが出せ、3回路個別に調光できることで、日常使いではほとんどの撮影領域をカバーできる製品になっています。
操作性、ユーザーインターフェースも重視しています。個人所有を考えた場合、「わかりやすい」というのは重要です。説明書を見なくても操作できるような、例えばツマミを1度押すと、1/11000秒であれば「110H」と表示されます。ダイヤルは、「カチカチ」と適度な負荷と節度のあるものを特注で製作しました。手に触れる部分にもこだわっていますので、ぜひプロショップ等で、実際に触れて頂きたいです。
- Complete One
- ●主な仕様
- 使用灯数:3灯式
- 調光:1~3回路調光
- Full~1/64調光(1/10step):Color Mode(色温度優先)時
- Full~1/128調光(1/10step):Speed Mode(閃光速度優先)時
- 色温度変化:200k以内(Color Mode時)
- 調光方式:シリーズカット調光+電圧調光
- 最速閃光速度:1/11000秒 Speed Mode(閃光速度優先)時
- チャージタイム(60Hz):Quick:0.01~1.8秒 Slow:0.04~6.4秒
- 2or3回路調光時各チャンネル光量決定後、比を固定したままUP,DOWNが可能。
- 大きさ:153(縦)×209(横)×210(高)mm
- 重さ:4.7Kg
- 価格:448,000円(税別)
- 発売:2013年10月21日
- 株式会社サンスターストロボ
http://sunstarstrobo.jp/
八木 規仁 Photographer
1988年 渡米。Art Institude of Fort Lauderdale写真学科卒業。
2000年 NewYorkへ移りキャリアをスタート。
2003年 SOHOにスタジオを構える。
2008年 帰国。東京をベースに広告写真を中心に活動。
http://www.norihitoyagi.com/
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- 2018.03.16 Art Potluck(アートポトラック)緊急座談会
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- 2018.02.18Timelapse / Hyperlapse Photographer 「The Professional Voice」vol.8 清水大輔
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