- 2017.09.15
Photographer「The Professional Voice」vol.3 勅使河原城一
東芝の高性能なメモリカード「EXCERIA PRO」。
その魅力を様々なジャンルのフォトグラファーが伝える「EXCERIA Ambassador」へのインタビューシリーズです。
華道家と写真家という2つの肩書きを持つ勅使河原城一さん。
2016年、渋谷ヒカリエで『Flowers ~わたしを咲かせなさい~』を開催。
一緒に作品制作されている資生堂トップヘア&メイクアップアーティストの計良宏文さん、そしてスタイリストのTAKAOさんも加わり、新作を撮り下ろした。
最高の機材を使い「美しいと思えるものを発信したい」という勅使河原さんに、その表現方法やEXCERIA PROを含めた撮影機材へのこだわりを訊いた。
HM:計良宏文(SHISEIDO Beauty Creation Center)ST:TAKAO(D-CORD)Model: Yuki Hayami(BARK IN STYLE)
Interview:坂田大作(SHOOTING編集長)
左からスタイリストのTAKAOさん、勅使河原さん、メイクアップアーティストの計良さん。
撮り下ろした作品のビジュアルテーマ、ポイントを教えてください。
勅使河原 ベースのコンセプトは「花」です。僕と計良さんが花を使って、長年作品を作っていた背景もあり、また2016年に作品展を行った流れもあり、それを一つのモチーフにしました。
ただいつもと違うのは「花(生花)を使わないで花を表現する」というのをテーマにしています。
計良 生花を使わない中で、どこで「花感」を出していくか、ということを考えました。メイクやヘアーで表現していく方法もあれば、洋服やアクセサリーで出していく方法もあります。
打ち合わせをしながら、撮影途中でもヘアメイクやスタイリングを変化させていく。
TAKAO 1カット目はレースの素材で、花が散りばめられているシースルーのドレスになります。そこに強さを加えるために、クラシカルな襟のようなアクセサリーを付けています。
撮影に使用したアクセサリー。
勅使河原 裏テーマが「中世のナイト」ですね。
編み込まれたヘアーも、なんとなく甲冑に見えてきます。
計良 「髪の編み込みでアート的な表現ができないか」と勅使河原さんに言われたので、挑戦してみました。
勅使河原 2カット目は、計良さんが制作された赤い花のモチーフを使いました。TAKAOさんに用意して頂いた赤い衣装と合わせています。
「EXCERIA PRO」64GBを使用。中判デジタルカメラ「フェーズワン」を手持ちで撮影する勅使河原さん。
スタンドアローンだと、ケーブルがないので寄り引きの動きもスムーズ。
計良 メーキャップも赤色だけのワントーンにすることで、花に包まれているような、花と一体化しているようなイメージに仕上げています。造花なのですが、それをペインティングして髪に付けられるようにアレンジしたコサージュです。
TAKAO このカットは、花のモチーフが入ったジュエリーを使っています。
計良 メーキャップもそれに合わせて、ドットで表現していて、それが花びらに見えるように作っています。
夜空に咲く「打ち上げ花火」も意識しています。
スタイリングをチェックするTAKAOさん。
TAKAO 衣装は今回の中ではソフトな印象ですが、シースルーのパステルトーンでヌーディな感じですね。首のチョーカーは実はリボンタイプのベルトなんです。
計良 リップは花びらのような桜ピンクにしています。肌もヌーディに仕上げて、風を入れてナチュラルな感じにしています。
勅使河原 4カット目が一番シンプルな表現ですね。
花と人を絡めた作品はいつからスタートしているのでしょうか。
勅使河原 最初は2009年あたりです。雑誌の企画で「お花を使ったファッション」というのがあって、それがきっかけです。
計良 そこからスタートして、「二人で展覧会をやりたいね」という話になってからは集中的に撮りましたが、かれこれ6年以上撮り続けています。
勅使河原 このシリーズでPart2の展覧会も考えています。ただ最近、お花を使った表現が世の中に増えている中で、今まで以上に驚いてもらえるような作品にしたいですねと、計良さんとも話をしています。そのため、表現方法も変わってはきています。
計良 「お花を髪につけました」だけでは、つまらないかなと思っていて、それをアートに昇華するにはどういう使い方をすればよいのか、話し合いながら進めています。勅使河原さんとはお互いの領域を超えるような、例えば僕が華道のように生けることもあれば、勅使河原さんがヘアメイクのように花を作ることもあります。
勅使河原 お互いの領域を超えてやっているので、ある意味境界がない感じですね。まったく僕が花を触っていない作品もあって、お互いの信頼関係がないとできないことですね。
このシリーズに関しては、撮影前に絵がきっちり決まっているわけではないですよね。
計良 割と即興で作っていますね。
勅使河原 撮影当日の朝に、仕入れにいって花をスタジオに運んでいる間に色々決まってきて、スタジオに着いて計良さんと打ち合わせをしながら、無茶振りするという(笑)。
花は、季節も影響しますよね。
勅使河原 そうですね。それもあって撮影期間を長くして、様々な花を取り入れるようにしています。展覧会のコンセプトは今、熟成中なのでまた時期がきたらお話しさせて頂きます。
三菱地所プロパティマネジメント「大名古屋ビルヂング」 シーズンビジュアル 秋
A&P=電通 CD=都築徹 AD=大山よしたか C=椿遊 AE=稲垣秀樹、澤原信之、伊神崇 ST=間山雄紀 HM=計良宏文(SHISEIDO) Ret=春本正和 Crd=D-CORD Model=Arina Levchenko,Barbora Bruskova(DONNA)
勅使河原さんは華道家としての活動が先ですが、写真に携わるきっかけから教えてください。
僕自身、華道の家に育ったこともあり、幼少からお花には携わっていました。「お花」って放っておけば枯れますよね。生けたものを記録するには写真か映像しかないわけです。僕が写真を始めた頃は、映像は今ほど身近な存在ではなかったので写真として記録するために、触り始めました。
最初は見よう見まねで、自分の生けた作品を撮るようになりました。もう一つ大きなきっかけは、大学を卒業して2年ほど経った時に、自分の作品のポートフォリオを作らないといけなくなりまして、その時は父の知り合いのフォトグラファーにお願いしていましたが、フレーミングは決めさせてもらえたんですね。そのフォトグラファーに「何だったら自分で撮影もすればいいんじゃないの」と、そそのかされたのがきっかけです(笑)。
お花を生ける人自身の「見て欲しいポイントや角度」があるわけですね。
そうですね。生け手が一番わかっています。お花って、肉眼で見ている時は、両目なので立体的に見ていますよね。でもカメラは単眼なので、写真を撮るようになってから「写真映えする花の生け方」というのを習得していきました。簡単にいうと、一般的に飾るものよりもシンプルにしないと、写真としてキレイに見えないんです。
ファッションや広告等、撮影ジャンルは広いですが、当初はスチルライフというか花の記録が目的だったのですね。
写真を本格的に始めたのが26歳頃で、遅い方ですよね。当然女性を撮りたくなるわけです。でも小心者の僕は、ストレートに女性を撮るグラビアとかポートレートにはいかず、ファッションというジャンルに活路を見出しました(笑)。
学習院大学卒業後に、日本大学芸術学部の写真学科に2年ほど在籍して、基本的なことはそこで学びました。ライティングは独学です。毎週機材を借りては、ライトを組んでテスト撮影して、ということを数年続けて身につけました。
三菱地所プロパティマネジメント「大名古屋ビルヂング」 シーズンビジュアル 夏
写真の活動を行う中で華道はどのように活かされていますか。
写真を撮る上で「お花の何が役に立ったか」というと「構図」なんです。生ける空間の中にどう花を入れていくか、なんです。写真でいうフレーミングとよく似ていたのですごく役立ちました。そういう意味では、動きの中から捉えるのではなく、見せ方を構築して撮るほうが好きですね。
お花に関しては、先ほど単眼と複眼の話をしましたが、奥行き感の出方の違いがわかったので、撮影用にお花を生ける時は、アプローチが早くなりましたね。
花と人が一体化したような作品は、勅使河原さんの中では必然性がありますね。
草月流の創始、勅使河原蒼風が書いた文章の中で「花は人になる」という一文があります。自分の中では座右の銘なんです。「花が人になるのであれば、自分はそれを写真で表現したい」と思ったのも写真家を目指す大きなきっかけです。
ビューティースリー/シースリー「わたしの肌には、華がある。」
撮影をデジタル化したのはいつ頃ですか。
2000年に発売されたキヤノンのEOS D30からです。でもその前からPhotoshopは使っていました。当時はネガフィルムで撮影後、スキャンしてデジタル化。レタッチしてピクトロに出力というワークフローでした。
翌年、コダックからプロバック(1600万画素)というデジタルバックが出ました。価格が約220万円くらいでしたが、当時、作品制作の感材費(フィルム、現像、印画紙代等)だけで月に30万円位使っていたので、「だったら、買おうかな」と思って本格導入しました。カメラボディはマミヤの645AFです。
現在のメイン機種はなんですか。
中判デジタルバックはフェーズワン、35mmはニコンD800を使っています。「そろそろ35mmも買っておこうかな」と考えてテストしましたが、ニコンの色の出方が気に入りました。
勅使河原さんは64GBのCFカードを主に使用している。
EXCERIA PROの使い心地や印象を教えてください。
普段、テザー撮影もしますが、EXCERIA PROに記録することのメリットは、機動性と撮影がスムーズなことです。ケーブルの長さも気にせず、アングルを探せます。
それ以上に大きなことは「モニターで見せなくていい」ということですね(笑)。1カットずつチェックすることもない(できない)ですし、フィルム時代の「本番撮ります!」という緊張感が生まれる。モニターに表示されないので、みんなが撮っている現場に集中できるのがいいです。
雑誌の撮影では、35mmカメラ+EXCERIA PROで、カード記録することが増えました。フェーズワンを使う時も、海ロケとか場所や条件が心配な時は、テザーではなくEXCERIA PROを使います。
テザー撮影で、ビジュアルをモニターで確認してから、本番はカード記録というフローでしょうか。
いえ、カード記録の場合は、カメラの背面モニターで確認してそのままガンガン撮ります。
記録スピード等、EXCERIA PROの使用感はどうですか。
D800が約3600万画素、フェーズワンは5000万画素以上のものを使います。今僕が使っているのが、64GBのCFカードですが、書き込み速度についてはノーストレスです。一度の撮影で、カードを交換することはないですね。
連写しているとカメラのバッファーメモリを使いますが、フェーズワンだと元々シャッターを切る感覚が長いので、ほぼエンドレスでシャッターを切っていける感覚があります。EXCERIA PROに関しては、ノートラブルです。
メモリカードを使う時のワークフローを教えてください。
EXCERIA PROを使う時は、カットごと、メイクや衣装チェンジごとに、PCにバックアップをとります。そのため、そのカットを撮り終えたら、PCのモニターでプレビューするようにしています。
そしてその日のすべての撮影が終わったら、外付けのHDDにバックアップをとります。厳密に言うと外付けのHDDからメインPCの外部HDDに移した後にはCFカードのデータは消去します。
衣装やメイクチェンジの間にPCに画像データをコピーする。
今後、メモリカードに求めるものは何ですか。
僕の使い方だと耐久性はほぼ問題ないと思っています。書き込み速度も問題ないです。ただ現状のカメラはCFカードとSDメモリカードが混在していますよね。それがどうなるんだろうと...。
SDメモリカードの方がスピードは速いのですが、仕事で使う前提だと見た目の堅牢性や管理の部分で、CFカードの方が安心感はあります。できればあのサイズで容量と書き込み速度が上がるといいかな。でもムービーキャメラでは、SDメモリカードが主流になってきているので慣れの問題だけかもしれません。本当は、単純に自分の体も手も大きいのでSDメモリカードだと折ってしまいそう、というだけです(笑)。
あとフェーズワンがCFカードしか使えないので、そこがSDメモリカードに変わるといいですね。それならSDメモリカードの256GBを入れておけば最強です!
メモリカードからPCにコピー後、モニターで画像を確認する。
EXCERIA PROのイメージを一言で表すと何でしょうか。
「信頼感」ですね。
今は、SNSも含めて制作側も横の繋がりが増えていますよね。現在でも他メーカーでのトラブルの話を耳にすることはありますが、EXCERIA PROに関しては何かあったと言う話は聞きません。それだけ安定しているということだと思います。
「プロ向け」と謳っていることが重要なんです。日々大量に撮影する僕らからすると、それが安心感に繋がります。個人的にはゴールドの配色とシンプルなデザインも好きですよ。
今後やってみたいことを教えてください。
先ほど登場して頂いた計良さんとのコラボ作品「Flowers 2」を進めていきたいです。
あと「植物画」ってあるじゃないですか。写真バージョンもあるのですが、あれを華道家もしている自分が撮るとまた違ったものができると思っていて、「植物図鑑/勅使河原城一篇」を撮ってみたい。それは切り花だけでなく、観葉植物や木も含めて。
「写真がうまくなりたい」と思っている人へメッセージをお願いします。
最近はフィルムが流行りだしたり、デジタルカメラも進化して、写真がどんどん身近になっています。誰でも写真が撮れるし、有名じゃなくてもお金をかけなくても、発表できる「場」が増えています。
そんな状況の中で何が大事かというと「自分の好き」を追求していくことじゃないでしょうか。今は、Instagramで発表して世界中から反応がもらえる時代です。〇〇風ではなく、自分の好きなものを撮り続ける方が、幸せになれる気がします。
大型のアンブレラは右をシルバー、左を傘トレにして光の硬さ(柔らかさ)に強弱をつけている。
ジェネレーターは世界最速機種の「Pro-10」を使用。
今日の撮影機材は、フェーズワンXFにシュナイダーのレンズ、ストロボはPro-10、そしてメモリカードはEXCERIA PROです。スマホでも写真が撮れる時代に最高峰の機材を使う意味はなんですか。
過去に遡って振り返ってみても、機材への投資は惜しまなかったですね。いくら使ったか(笑)。
僕自身の求めているものは解像度や質感描写力だったりするので、「いかに美しく残すか」というのはベースにあります。そうなるとハイスペックなものを使わないとダメなんです。市場では1億画素は要らないという人もいますが、僕は「1億画素アリ派」です。例えば、3000万画素の画像だとレタッチしたくなるけれど、1億画素の絵を見ると「このままでいいじゃん!」となる面もあるんです。
ハイスペックな製品はいち早く使いたくなるタイプかも。EXCERIA PROを使うことで「1億画素が手持ちで撮れる」という信じられない時代になっています。この技術の進化を享受しています。「いいものが大好き」だから、EXCERIA PROも使い続けます。
東芝「EXCERIA PRO」シリーズ
高速連写・4K動画撮影対応のプロ仕様メモリカード
SDメモリカード:製品情報
http://www.toshiba-personalstorage.net/product/sd/sdxuc/index_j.htm
CompactFlash®メモリカード:製品情報
http://www.toshiba-personalstorage.net/product/cf/cfax/index_j.htm
「The Professional Voice」vol.3 勅使河原城一 Photographer
1973年東京生まれ。1996年学習院大学法学部政治学科卒。
華道家(草月流)の家系に生まれ育ち、幼少より花に囲まれ親しむ生活を送る。
15歳より本格的にいけばなを学び始め、1996年より華道家としての活動を始める。
1996年にはマイクロソフト株式会社の本社における装花プロデュースを担当。
1998年にはビルゲイツ氏来日時のウエルカムパーティーの会場装花をプロデュース、
1999年には外務省の要請を受けアラブ3カ国を訪問し、いけばなの歴史に関する講演およびデモンストレーションを行う。
その後、自分の作品を自分の手で残したいという想いから、2000年より独学で写真を始め、2004年より写真家としての活動をはじめる。ファッション、ビューティーを中心に広告や雑誌など幅広い分野で活動中。
http://teshigahara.net/
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