- 2018.06.25
「脳よだれ展2018」制作メンバー座談会
博報堂プロダクツのフォトグラファーと博報堂のアートディレクターがタッグを組んだ写真展「脳よだれ展2018」が6月28日より東京・表参道のスパイラルガーデンで開催される。
2015年より開催し、第3回目となるこの写真展は、博報堂プロダクツのフォトグラファー23名と博報堂のアートディレクター23名がそれぞれ1対1でペアを組み、
「クライアントもオリエンもない中で自由に考え、自由に創り、普段の仕事とは違ったプロセスを思う存分楽しんだ成果」を展示するという企画展。
今回は人間の根底にあって人間の感情や行動を支配する「23の欲求」を23チームがビジュアル化。「脳よだれ」とは何なのか。企画・制作に携わったフォトグラファー、アートディレクター、プロデューサーに集まって頂き、テーマ作りから具体的なビジュアル制作の苦労と面白さ、見る人の脳内にその欲求を掻き立てる「脳よだれ展2018」の見どころを訊いた。
座談会参加メンバー:
橋本 暦(博報堂 アートディレクター)
亀井友吉(博報堂プロダクツ フォトグラファー)
後藤 塁(博報堂プロダクツ プロデューサー)
百々 新(博報堂プロダクツ フォトグラファー)
高橋秀行(博報堂プロダクツ 執行役員・フォトクリエイティブ事業本部 本部長・フォトグラファー)
Interview:坂田大作(SHOOTING編集長)
まず「脳よだれ展」を知らない読者もいると思うので、こちらの企画概要を教えてください。
高橋 「脳よだれ展2018」と呼んでいますが、広告会社の博報堂と博報堂プロダクツがタッグを組んで、広告ビジュアルの本来の力を見直そう、言葉や理屈を超えて、人間の生理に強く働きかけるビジュアルを極めてみようという企画です。今回で3度目となります。
1回目は4年前に「VOICES展」という名前で開催しました。その時は「脳よだれ」というテーマとは関係なくスタートしています。そもそもは博報堂のアートディレクター(以下AD)と博報堂プロダクツのフォトグラファーの関係性が希薄になってきているのではないか、そんな危機感や、普段とは違ったビジュアル制作のプロセスを楽しみ、自由に考え、自由に創るとどうなるのか?という試みから「VOICES展」を企画しました。
それが、観て頂いた方々にすごく好評だったため、「これは、継続することに意味がある」となり「じゃあ2回目もやりましょう」と。
高橋秀行さん。
「VOICES展」は名前から想像される通り「よく喋る写真たち」的な意味がありましたが、裏を返せば「何でもあり」だったので(笑)、自由すぎて観る人も混乱した部分はあったかも知れません。
実施することに意味があったのですが、「何が言いたいのか」という部分については課題も生まれていたので、2回目は「広告クリエイティブの専門集団に何ができるのか」という点をブレストする中で、「やっぱりシズルだよね」という話になった。「シズル展」という名前はベタすぎるということで議論を重ね、「脳からよだれが出るくらいのシズル感」ということで、最終的に「脳よだれ展」に決まりました。
百々 「脳よだれ」という言葉が出てきた時に、みんな初めて聞く言葉だけど合点がいったというか。そこからビジュアルが予兆されるようなワードでしたね。
百々 新さん。
高橋 2016 年に開催した「脳よだれ展」では、好評な結果も得ており、その企画展と写真集を「アドフェスト*」に持っていったんです。
*ADFEST(アジア太平洋広告祭)
2016年「アドフェスト」会場で展示された「Brain Drool」展。
そこで海外の方々の意見も伺いつつ「次は何をやろうか」と社内で話していました。半年後くらいに博報堂の北風取締役常務執行役員から、アドフェストで「Brain Drool(脳よだれ)」という考え方、博報堂のクリエイティブに対する姿勢が海外からも高く評価された」ということで、これを博報堂の武器として発信していこうという流れになっていきました。
*北風 勝(博報堂 ワールドワイドチーフクリエイティブオフィサー)
博報堂グループとして「世界に発信していこう」と始まった企画が「脳よだれ展2018」です。
企画は、2017年12月からスタートしました。
橋本 最近まで「脳よだれ2」でしたよね。
後藤 「脳よだれ2」にしようか「脳よだれ展2018」にするか、関係各所と真剣に議論を積み重ねた結果、「脳よだれ展2018」になりました。
後藤 塁さん。
百々 でも次は「脳よだれ3」に戻っているかも(笑)。今まで行ってきたことが積み重なって、次に進んでいることがわかるから。
後藤 「2018」にした段階で、1年おきの開催ではダメなんだなというプレッシャーも感じました。
百々 今回は、最初に「人間の23の欲求」というテーマを設けることで、前回よりも「どういう目的の写真展か」ということがより明確になったと思います。
今、お話が出ましたが「人間の23の欲求」というのは、どのようにして出てきたテーマなんでしょうか。
高橋 実は、「基本的な生理的欲求」「自己の気持ちや能力に関する欲求」「群居生活に関する欲求」の3カテゴリーに分類されています。実際には23以上の欲求がありますが、在籍フォトグラファーが23名なので、その数に合わせています。
百々 あと「この欲はビジュアル化するのは難しい」「説明的にならざるを得ない」ものは省いています。同義語的なものもありますが、議論をする中で「これは残そう」と選ばれた精鋭の「23欲」です。
「脳よだれ展2018」フライヤー
世の中に写真展は数多く開催されていますが、この規模感で「フォトグラファーとADが組んで自由にビジュアルをつくる」というのは他にないですね。
百々 仕事の発注というのは、ADからの指名という流れが多いですが、今回のような企画展ではADとフォトグラファーがペアで方向性を詰めていくので、仕事とは違った化学反応から生まれてくることが面白いんじゃないかと思います。
亀井 この企画は、仕事以上に緊張します。仕事の撮影は、失敗する可能性はほとんどないんです。というのは、事前に大勢のスタッフで煮詰めていて、様々な状況を想定して撮影当日を迎えるからです。でもこの「脳よだれ」に関しては、ADと二人だけで悩みながら進めていくので、本番までの準備や当日どういう感じで撮るのか、撮影が終わるまでずっとドキドキしますね。
亀井友吉さん。
百々 「このままいくとマズイ」「もう少し練りこまないと面白くならないぞ」とか、あるよね(笑)。
橋本 仕事では最終的にクライアントの意向で「先方の希望はこっち」的な話はよくあります。でも「脳よだれ」に関しては、自分とフォトグラファー、私の場合は亀井さんと組んだわけですが、お互いの好みも含めてかなり言い合いましたよね。
カットに関して、最後の最後まで決めかねていたとき、今回は1点の「写真」をつくるということで、フォトグラファーである亀井さんを信じて、最終的には亀井さんが選んだカットに決めました。
橋本 暦さん。
亀井 仕事では「良い写真」よりも「効果的な写真」が求められますが「脳よだれ」に関しては二人で話して決めていけばよいので、面白かったですね。
「23の欲求」は、どのように割り振られるのでしょうか。
百々 くじ引きです。フォトグラファーとADの組み合わせは、若手から組み合わせを決めていくのですが、そのあとのテーマについてはくじを引いて決めています。
高橋さんが「俺は食欲だ」的な感じでは決めていないのですね(笑)。
百々 平等なんです。でもこれが不思議なもので、ハマっていくんですよね。「性欲」を引きそうな人が「性欲」の担当になっちゃう(笑)。物欲、食欲も引きそうな人に当たるんですね。
橋本 ちょっと占いっぽくて、ドキドキしますね。
そこから二人三脚で話し合っていくのですね。
百々 各欲求に沿って練られたプランを実行委員会にプレゼンをします。その案が「果たして欲求に直結しているのか」「説明的なビジュアルにならないか」等を判断してもらい、そこをクリアする必要があります。
亀井・橋本 大変でしたね(笑)。
後藤 最初は全チーム3回のプレゼンで予定していましたが、それでは回数が足らなかったですね。
審査や実行委員会へのプレゼンを通さないといけないのですね。ADとフォトグラファーが自由に作っていると思っていました。
高橋 過去3回ともその作業はしていますが、今回が一番厳しかったですね。そもそもは、チームで勝手に動いて「蓋を開けてみるとビジュアルやアイデアの方向性が似ていた」とならないようにすることが理由です。加えて「23チームのクオリティを担保する」意味もあります。
百々 それぞれのチームが与えられた「欲求」をどう解釈しているか、というのが最大の面白さであり、難関でしたね。そう簡単にOKがでなかった(笑)。
橋本 大変ではあったけれど、それは普通の仕事と同じですね。普段の業務のオリエンというほど堅くはないですが、私と亀井さんチームだと「物欲」というオーダーをどう解釈するのか。それを言語化してプレゼンするというプロセスは広告制作と似ています。
百々 ものづくりをして発信するからこそ、反応があるわけで、多くの方にフィードバックをもらいながら続けていきたいですね。
高橋 本来クリエイターって、曖昧で、何を表現していくのかも自由な中で、でもそこに思想やスピリッツも持って発信していかないといけない。
カメラやソフト、様々なものが進化していくと、プロと素人との差がつきにくくなってきてしまう。機械を使うことはプロセスの一部であって、あくまで思想とかアイデアを具現化するツールでしかない、という強い意識を持って、クリエイターひとりひとりが、考え、悩んで、絞り出していく、こういうチャレンジに意味があると考えています。
物欲『queue』
橋本 暦(AD)・亀井友吉(Photo)チーム
橋本さん亀井さんペアの「物欲」について教えてください。
橋本 「欲しいもの」を描くのではなく、行列と螺旋階段で「尽きることのない物欲」を表しています。
亀井 これは合成やCGではなく、リアルな9階建の建物で撮影しています。橋本さんが探してきてくれたものです。
橋本 実際にある螺旋階段を色々リサーチした中でこの階段を選びました。
亀井 この建物の中に同じような階段が3つあって、青色と黄色は、普段使用されていますが、赤色は非常階段なので半日だけお借りできました。けっこうな高さで、カメラを覗いて初めて自分が高所恐怖症だと気づきました(笑)。
消灯できないダウンライトが2mおきに配置されていて、それを残すと濃い影が重なり、汚くなってしまうので、LEDライトを使っています。普段僕は主に、ストロボを使っているのですが、LEDの光量を少しずつ調整して、複雑な影がスーッと消えた時は、ちょっと感動しましたね。その後モデルが入った時に、橋本さんが「キター!イイネー!」って(笑)。
橋本 「イイネ〜」ってずっと言っていました。
LEDで照明されているのですね。
亀井 電源が一切ない所なので、バッテリータイプのLEDを使っています。定常光にしたため、モデルの配置もリアルに確認できてよかった。
当初は1カットの予定でしたが、ロケハンの際、下から見上げたカットもいいね、という話になり、見上げるアングルも撮っています。
橋本 展示では下から見上げたカットも入れて組写真にしています。それは会場で見ていただきたいですね。
亀井 らせん階段の径が4~5mほどで、狭くて急なのでけっこう怖かったですよ。16mmのワイドレンズで撮っています。
高橋 衣装や人の向きも、この作品においては重要だよね。
橋本 「物欲」としたとき、亀井さんは「下から見上げる派」だったのですが、私は「上から見おろす派」でした。上がっていくのは上昇志向な感じがしてとてもポジティブ。でも物欲の渦にのめり込んでいくのは潜っていく方なんじゃないかと(笑)。
百々 フォトグラファーとADの視点の違いが面白い。
橋本 他の階段も数カ所ロケハンに行っていますが、色々な要素が入っていたのに対して、ここは丸い螺旋が人間のDNAのようでもあり、潔さがよかったです。赤の絨毯も熱量があっていいですね。
あと亀井さんと、カラーにするかモノクロにするかも話しました。最初はモノクロで出力してくれたんです。
亀井 絵画的になるのと、人と天井の色が一緒になって面白いかなと思ったんです。
橋本 私は最初からカラーでいきたかったのでそれを話しました。欲望には「熱」があるものだから...。こういう話は普段の仕事ではなかなか出来ないんですね。1枚の絵を作ることに対して、フォトグラファーとADがじっくり話し合えるのが、この企画展のいいところだと思います。
ペアで議論しながら進めるのは面白いですね。
百々 そもそも「欲」に対する解釈や考え方が個々人で違うので、そこの相違をどう埋めていきながら定着させるのかが、面白いですね。
食欲『Fried Boys』
鈴木克彦(AD)・高橋秀行(Photo)チーム
「食欲」はインパクトがすごいです。ここで紹介しているのは1点ですが、最終的に「フライ」になるまでのシリーズ写真ですね。
橋本 これすごくかわいい!
百々 最後まで方向性で悩んでいましたよね。
橋本「食欲」って、アプローチが広すぎて難しそう。
高橋 僕と鈴木さんの年輩チームなんだけど(笑)、考える時間を目一杯使おうと思っていました。
こちらがやりたいことがあっても、見に来られた方があまり「食欲」を感じないと意図から外れちゃうよね、という流れの中で、4月から撮影が始まるなら12月末から3月まで集まれる限り時間を作って話し合いました。
決めごととしては、「食欲を掻き立てられる時は"暗く"はない」「原色」「笑顔」とか「炎」とか。色々な食欲の科学本まで買って勉強したんです(笑)。
最終的には笑顔があって、子ども達を出しました。何度もブレストした中で一番多く出たキーワードを結びあわせたのがこのビジュアルです。
亀井 「パンパン」とか「ジュ〜」とか、音が感じられそうな写真です。
高橋 「世界共通の食べ物って何だろう?」とか。「揚げ物はあるよね」とか。色々考えました。
雑誌や料理本のシズル写真は、それだけで美味しそうに感じますよね。
高橋 普通に「食欲」を考えれば、何でもないラーメンの写真でも強いんですよ。そこに負けないように「食欲の"エネルギー"」を擬人化したんです。
亀井 「ラーメンの写真を超えるぞ」と(笑)。
百々 簡素化していくって大事ですよね。理屈よりも、これは見た瞬間に「ジュワッ」という音を感じるから。
高橋 あとポイントとして「食べ物を出さないで挑戦する」ことも決めていましたね。
今は、広告としては色々表現しづらい時代になっています。
百々 「脳よだれ展」に関しては、自分たちでレギュレーションを作りながら、その枠を表現でどう超えていくか、ですね。
達成欲『LONGING』
村越陽平(AD)・百々 新(Photo)チーム
これは百々さんと村越さんチームの作品ですね。
亀井 絵が濃いねえ。すごい(笑)。
百々 そもそも「達成欲」とは何かと。何かに到達している人なのか。定義づけが難しい。人類はどこを目指しているのかとか。達成とは何を基準にして「達成」なのかを考えました。
「山頂まであと一息」というのも達成に向かう世界。欲求を感じるよりも「欲求の様」を切り取るアイデアが多かったのですが、その中で達成欲として「人間はなぜ肉体を鍛えるのか」というものを取り上げました。
生命を維持、進化させるために肉体があるわけで「なぜ人は走るのか」「肉体を鍛えるのか」そこをテーマに筋肉をフィーチャーしました。単純にボディビルダーを撮っても説明写真になってしまうので、「どう見せるか」というところで、大型の鏡を使って肉体を抽象的に捉えました。会場では数点展示しますが、上の写真は「脳よだれ」を一番意識したビジュアルです。
肉体だけど、未知の生命体に見えるとか、大きく言うと「人類が次の進化を遂げることが達成じゃないか」と。
橋本 まずどうやって撮っているのかがわからない(笑)。
百々 裸の男女とか、肉体が絡み合っている写真って、世の中にたくさんあるじゃないですか。それを見た時の感覚を大事にしながら、肉体を反射させたり、映り込ませることで視覚を混乱させて、抽象的なところまで持っていきました。
万華鏡のようなカットもありましたね。
百々 そうですね。ポージングもどのようにしたら、どこの筋肉が浮き上がるとか、色々考えました。ボディビルダーの方々には1回しか来てもらえないため、シミュレーションは体育系大学の学生に協力してもらいました。
亀井 これは女性も入れるという発想はなかったの?
百々 ありましたよ。でも女性を入れると別の目線で見てしまうとか、組み合わせると意味が複雑になるのではと思って、最終的には男性だけにしています。ある著名なボディービル団体に協力して頂いています。
世界一のマッチョの方はすごくて、それを見ただけでよだれが出てくる。でもボディビルダーのポートレートではなく、プラスしていく発想ですね。
百々 会場では大きくプリントするので、等身大近くになります。それを間近で見ることができるので、楽しんで頂けると思います。
橋本 楽しみですね。
「脳よだれ展」は特大プリントで展示されるので迫力があります。写真展というよりはコンテンポラリーアートのような楽しみ方ができそうです。
亀井 僕たちの「物欲」の写真は、2枚で1200mmx3500mmくらいになります。
2016年「脳よだれ展」会場風景。
高橋 ミュージシャンは、「ライブ」という体感があって「アルバム」も生き生きとしてくる。僕たちも「展示」をしっかりと体感してもらうことで、写真集を見て、さらに楽しんでもらえると思います。
橋本 「脳よだれ」に関してはクライアントはいませんが、世の中にメッセージを発信していくという意味では広告と同じ感覚です。作品ではありますが、「物欲」というシズルをどう表現していくかも、広告と同じですね。
ただ、私たちのチームは、今回ビジュアルに「答え(正解)はなくて良い」としました。作品を見た方が、それぞれの中で感じてもらう、考えてもらうきっかけになればよくて、答え合わせの場ではないなと思いながら作りました。
亀井 僕たちが話し合った中で、一度「物欲」を満たす案が出ています。それは「通信販売のダンボール」(笑)。
届いたダンボールの中には何が入っているか、自分だけがわかっていて「あっ来た!」という瞬間が「物欲」そのものではないかと。今回の「23の欲求」も、見に来て頂いた方々が「まさに!」と思って楽しんで頂けると思います。
橋本 単純に「物欲」と言っても、人それぞれ欲しいものが違いますよね。ダイヤモンドかもしれないし、お菓子のおまけかもしれない。ただ、物の写真を撮っても、共感性が乏しい、もしくは検索して出てくるものに近いだけになります。そのため、先ほど高橋さんが「リアルな食べ物は使わない」と言われたのと同じで、物を描かずに、「物欲」を感じている脳内を表現しようとした結果が、このビジュアルになっています。「欲しいもの」は見た方の自由で良いと思っています。
高橋 男性は入れてないよね?
橋本 男性を入れるとか、国籍もバラバラにするとか、人間として捉えれば裸の方がよいのかとか、色々考えましたが、そこは最終的にシンプルにしました。
橋本 全ての企画の流れを見ている後藤さんはどう思いました?
後藤 皆さんのプレゼンを聞いていく中で、「頭の中にある企画をこうやって変換させていくんだ」というプロセスが見られて、とても面白かったですね。
1回目に出した案ですんなり通ったチームは一つもないんです。そこから、出して出して進化させていく、というのがすごいと思いました。
僕の解釈だと「脳よだれ」は「気づき」だと思っています。やさしいコンテンツが溢れている中で、少し突き放した「気づき、発見」のできる提案ではないかと。そこがどんどん広がっていけばいいなと思いました。
高橋 前回までは「写真展」でした。今回からは「ビジュアル・クリエイティブ」というか、写真のクオリティ、インパクト重視から、普段の広告制作という仕事のプロセスに寄った感じがします。
高橋 フォトグラファーって、作品となると、どうしても言葉(言語化)は後付けになる傾向が強いんです。コンセプトを立てて言語化したものをさらに視覚化して、それが本能を直撃しなければならない。その点が、前回との大きな違いで、重要なポイントです。
僕たちの強みの一つに「課題解決」があります。その課題を超えていくことで、能力を発揮する人が多いから。その壁や課題をどのように与えるかという議論もしましたね。
百々 やはり3回目というのが大きくて、過去2回で積み上げてきたものがあったから、今回は「博報堂グループが行う企画」ということで進化できたんだと思う。それが、北風さんが言われるように「Brain Drool(脳よだれ)」という考え方で広告でも世の中に新しい風を吹かせられるのではないか、今回はそれが濃縮された形で展示できるんじゃないかと。
亀井 単純に「他のチームには負けたくない」という気持ちもあります。そこでお互いに切磋琢磨するのはいいと思う。
百々 勝ち負けではありませんが、会場で一同に並べられるので、そこでいい写真かどうか、いいクリエイティブか、そういう批評にはさらされるでしょうね。でもそれは博報堂グループの組織力、環境だから実現できること。そこは唯一無二を目指していきたいですね。
■「脳よだれ展2018」
会期:2018年6月28日~7月8日
場所:スパイラルガーデン(表参道)
時間:11:00~20:00(入場無料)
http://www.spiral.co.jp/
トークイベント
日時:6月28日(木)18:30〜19:30
メンバー:永瀬正敏(SPゲスト)
鈴木克彦(博報堂)、百々新(博報堂プロダクツ)
日時:7月7日(土)14:30〜15:30
メンバー:落合陽一(SPゲスト)
矢後直規(博報堂SIX)、古川泰子(博報堂プロダクツ)
■写真集「脳よだれ2018」
判型:H297mm×W228mm
頁数:200P
発売:2018年6月28日
税込価格:2,000円(予価)
※会期中会場にて販売。
■人間の23の欲求 制作チーム
(博報堂プロダクツ フォトグラファー×博報堂 アートディレクター)※敬称略
食欲(高橋秀行×鈴木克彦)
達成欲(百々 新×村越陽平)
依存欲(平田正和×矢後直規)
性欲(児島孝宏×野田紗代)
悲観欲(青野千紘×杉山ユキ)
同調欲(平松真帆×関谷奈々)
物欲(亀井友吉×橋本 暦)
秩序欲(高橋 潤×川嶋ななえ)
顕示欲(鈴木康平×小栗卓巳)
防衛欲(辻 徹也×一倉 徹)
刺激欲(廣瀬達郎×長島 慎)
承認欲(池田献児×遠藤礼奈)
逃避欲(大谷麻葵×中谷亜未)
冒険欲(石川清以子×原野賢太郎)
攻撃欲(本村 仁×波戸祐輔)
闘争欲(政近 遼×柿﨑裕生)
遊戯欲(大津 央×後藤 大)
支配欲(島村朋子×永松りょうこ)
保持欲(長野柊太郎×伊藤裕平)
愉快欲(大木謙一×中谷佳保里)
服従欲(岡 祐介×髙乃彩乃)
不可侵欲(岩切浩三郎×山下隼太郎)
浄化欲(古川泰子×榮良太)
「脳よだれ展2018」制作メンバー座談会
博報堂プロダクツのフォトグラファーと博報堂のアートディレクターがタッグを組んだ写真展「脳よだれ展2018」が6月28日より東京・表参道のスパイラルガーデンで開催される。
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テーマ作りから具体的なビジュアル制作の苦労と面白さ、見る人の脳内にその欲求を掻き立てる「脳よだれ展2018」の見どころを訊いた。
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Photographer / Image Director
shuntaro「ドローン・ライティング」は 選択肢の一つとして当たり前になっていくと思う