- 2014.03.10
Photographer安澤剛直
プロフォトから発売された、新型ストロボ Profoto B1(以下B1)。
モノブロック型の筐体に、バッテリーを搭載し、最大500Wsで220発のフル発光が可能。Airリモートで、露出やレリーズを制御できる話題の製品だ。
B1インプレッションの第3弾は、安澤剛直さん。
安澤さんはウエディングフォトを中心に活動されているフォトグラファー。元々博報堂フォトクリエィティブ(現博報堂プロダクツ)に在籍していた事もあり、ライティング技術が必要とされるコマーシャルの撮影も継続して行なっている。
ロケ撮影の経験も豊富で、フォーマットにとらわれないウエディングフォトを望まれる際に、指名される機会の多い安澤さんにB1を使用してもらった。
和装とドレス、屋外と室内というそれぞれのシチェーションでの使用感、またウエディングフォトにおけるB1での「表現の可能性」について訊いた。
ウエディングフォトは、ある意味特別なシチュエーションでの撮影ですね。
そうでうね。面白い点と難しい点があります。
撮影する被写体が素人の方なので「はい、じゃあ撮りましょう」って言っても、最初からポージングができるわけではないですし、いい表情が作れるわけでもありません。
そのため撮影を始める前に、打ち合わせ等で最初にお会いした段階からコミュニケーションを意識します。
当日は、緊張しないような撮影から始めます。ロケだったら、人がいないような場所から撮り始めて、街中に入っていくとか。
撮られる事に慣れて頂くための準備運動のような、捨てカットではないですが、2人で座っておしゃべりしている所から撮り始めたりします。
モデルではない一般の方々なので、キレイに撮れた写真を花嫁に見せた時に「私じゃないみたい!」って、言ってもらえる時が一番嬉しいです。
少し撮り進んだ後に、「いい感じで写ってますよ」ってモニタを見せてあげると、「こんな風に撮れているんですね。すごい!」って喜んでもらえますし、テンションが上がってきて撮影がスムーズに進みます(笑)。言葉で話しても想像がつかないので、見せるのが一番早いですね。
- 一般の方々は撮影に慣れていないため、現場ではリラックスしたムード作りを心がけている。
日常とは違う状況で写真を撮られる事は、喜びも大きいですね。
そうですね。豪華な衣装を着て、(特に女性はヘアメイクもして)撮影される事自体が、「非日常」じゃないですか。そこで今回のように、ストロボを何灯も使って撮影すると、かなり喜んで頂けます。
ウエディングの場合、限られた時間の中でカット数(バリエーション)を撮らないといけないのと、色々なシチュエーションを作っていかないといけないんですね。事前にロケハンをしていても、当日の光の具合で状況が変わる中で「フレーミング決め」は難しい部分です。
安澤さんの場合、室内とロケの比率はどのくらいですか。
半々くらい。結婚式当日はほとんど室内撮りですが、前撮りの場合は、ロケが多いです。ただし天候の事も考えて、外がメインでも、室内もおさえておける場所を選ぶ事が多いです。
最近は「外で撮りたい」というお客さんが増えました。特に僕の所に話を頂くお客さんは、写真にこだわる方が多いです。ヘアメイクが終わって、挙式までの2時間の間に、ロケ撮影したいとか(笑)。
照明機材は何を使われますか。
普段は国産のジェネタイプが2灯、モノブロックを2灯使っています。アイランプやクリップオンも使います。
以前は、エディトリアルや機動力が求められる撮影では、モノブロックを使っていましたが、結局AC電源からコードを引かないといけないので、徐々にクリップオンへ移行しました。ただ結婚式場での広告撮影の時には、ジェネタイプを持っていきます。最近はタングステン(アイランプ)を使うケースもあります。
昨年末、B1の発売直後にいきなり使って頂きましたが、いかがでしたか。
Airリモートを使って手元で色々コントロールできるとか、知識は先に入れていましたが、「大きなメリットがあるのかなあ」と、撮影する前までは思っていました(笑)。
いざ撮影が始まって慣れてくると、絞りとシャッター速度の関係のように、直感的に出力が調整できるので「予想以上にいい!」と思いましたね。複数のストロボを、手元でコントロールできるのは本当に便利です。
和装の際は、広い敷地内を移動しながらの撮影でした。場所を決めた後に本番を撮るまでのセッティングがスピーディでした。
時間をかけずに素早くライティングできますね。コードレスな分、「ここだ」っていう所に、遠慮なくライトを持っていけるので早いし、撮影している僕自身が楽しかったですね(笑)。
外と言っても、完全にオープンな場所もあれば、屋根の下、水辺の橋の上、両サイドを茂みにはさまれた道等、色々ありました。状況が変わっても、調光しながら全体のバランスが見られるので、ベストなポイントや光が探りやすいです。
- 樹に囲まれた場所での撮影。被写体のバックから1灯直射、右サイドの茂みからグリッド付きのオパで当てている。
クリップオンとは光量がまるで違うし、光の拡散度合いも違います。アタッチメントで光質も変えられるので、すごく使いやすい。
屋外であっても、オパを使ってビューティっぽく撮ってあげる事もできますよね。B1が1灯あるだけで、アタッチメントのアレンジによって色々な撮り方ができる。ソフトBOXと傘、オパ、グリッドがあれば、それだけでかなり応用が利きます。
B1はフル出力が500Wsですが、その辺りはどうですか。
1灯でメイン光源にするような大光量では使わないので、これで充分だと思います。
太陽の代わりにするという発想ではなく、「アクセントとしての補助光」、「美しく見せるための隠し味」としての使い方ですね。
TTL機能についてはどうですか。
TTLは多用しました。露出は「けっこういい所にきてる」と思いました。
バック(背景)の光量は意図的に調整していますが、被写体に対して「えっ」って言う光の当たり方は一度もなかったです。モニタを見ながら微調整で済みました。
夕方にかけて、太陽の光が弱くなっていくわけですが、それに伴ってストロボの光がうまくついてきている感じでした。
新郎新婦と浜辺まで移動して、地灯りのない場所でも撮影しました。
何もないところまで行きましたね(笑)。今回は曇り空でしたが、もう少し晴れていれば、さらにドラマチックな写真になったと思います。
被写体とバックライトとのバランスもうまくいきました。B1 はスタンドさえあれば砂浜でも立てられますし、まさにバッテリーモノブロックならではの写真に仕上がったと思います。
- 日没後の砂浜で撮影。実際にはかなり暗いが、モデリングを付けながら素早くライトを組んで撮影。ダイナミックなシチュエーションはB1ならでは。
今後、B1は積極的に使っていきたい照明機材になりますか。
そうですね。2灯、できれば3灯欲しいですね(笑)。
前撮りで、ロケが多いフォトグラファーには絶対にオススメです。カメラにクリップオンを付けてもできる事が限られるじゃないですか。B1とアシスタントが一人いるだけでも、持たせて動かしながら撮影すれば絶対写真が変わってきます。
「ウエディングを撮っているプロって、やっぱり違うよね」と言ってもらえるための、"必須アイテム"になっていくのではないでしょうか。
ウエディングフォトにおいて、ライティングの魅力とはなんでしょうか。
ウエディングフォトには2つの要素があります。一つは「一期一会の機会で、絶対的にいい写真を撮らなければいけない」という事。もう一つは「撮影している時間、空間を楽しんで頂く」という事です。
以前撮影した花嫁が、何年か後に遊びに来てくれた際に、「またライトを浴びたい」みたいな、そういう事を話される方がいらっしゃいます。ライティングでの表現云々という以前に、特に花嫁にとっては、ライトを浴びて撮影される行為自体が"心地よい時間"なんです。
ライティングに関して言えば、一つのキーになるライトを作ってあげることで、写真が変わってきます。「メイン光源ではないライトの使い方」がうまく出来るかどうか、ちょっとしたニュアンスの違いを作れるか、作れないかで、個人の力量の差が明確になってくる気がします。
ウエディングフォトグラファーもたくさんいて、正直な話、レベルにも差があります。コミュニケーション能力を磨く事と、B1のような機材を上手く使いこなす事で、写真のクオリティも、撮影単価も上げていけるのだろうと思います。
メイキング
- 和装は、幕張公園内の日本庭園「見浜園」で撮影。撮り始めは新郎新婦の緊張をほぐすため、安澤さんは話しかけながらどんどんシャッターを切っていく。
- 新郎新婦にはソフトBOXで光を補いつつ、暗く落ちてしまう屋根裏部分にも下から光を当てている。
- 大型アンブレラで全体を照らしながら、紅葉が暗くならないよう2灯直射している。
-
離れた場所から望遠での撮影。ライトはビューティディッシュのホワイトにグリッド付き。
離れた場所でもストロボ出力を手元で調整できるのはかなり便利。 -
洋装は「ルシェルブラン表参道」で撮影。昼間は自然光が入る結婚式場。
大型ソフトBOXで直接光を当てながら、もう1灯はアンバー系のフィルターを付けて窓側からバウンス。
暖かみのある色合いにしている。 - 式場の照明を消して撮影。ソフトBOXで被写体の肌や衣装の色を出しつつ、もう1灯で夜の雰囲気を演出をしている。
- フル出力で500Wsあるので、メインライトとしても普通に使える。
B1 500 Air TTL
●主な特長
・特許申請中の新機能AirTTLにより自動調光可能。
・1回のフル充電で、フル出力での最大220フラッシュの発光可能である、着脱可能、内蔵型バッテリー。
・コードレスでワイヤレスAirシステム搭載によって、ケーブルの長さに制約されず撮影可能。
・最大20フラッシュ/秒の連続発光可能であるQuick Burstモード。
・9 f-stop (2-500Ws)の出力レンジ間で、0.1 f-stopステップでのファインチューニング可能。
・プロフォトの幅広いラインアップのライトシェーピングツールを取付け可能。
安澤剛直 Photographer
1975年東京生まれ。家業が写真館だったため、幼い頃から写真家の父を見て育つ。
大学中退後、日本写真専門学校を卒業。
博報堂フォトクリエィティブ(現博報堂プロダクツ)入退社後、婚礼、雑誌等を経て、実家のスタジオアイで学校写真、葬儀写真、広告撮影、記念撮影と幅広く経験し、独立。
その後渡米し、丸山晋一氏に師事。帰国後、株式会社アンズフォト設立。
広告とウエディング撮影を中心に活躍中。
http://www.anz-photo.com/
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