HM:Mai Ozeki
Model:Melisse(INFRAMINCE)

企画をスタートするにあたり、人物や建築物、ロケや屋内など、様々なシチュエーションでフェーズワンIQシリーズを使って頂きました。

はい。モデルを使っての作品撮りと、仕事では建築、インテリアを撮影しました。
この海辺の作品は、すごくシビアな条件での撮影でした。真冬のもう雨が降るギリギリ直前みたいな状況です。モデル手前のシャドウ部から、ボケていく遠景までのトーンが、おそらく35デジタルだとこんなにキレイに出ないと思います。「さすがフェーズだな」と思いました。

35デジタルでは、フィルムのようななだらかなグラデーションって、あまり手に入らないのですが、このカメラなら撮った時に、すでにそういう空気感を内包しているようなグラデーションなので、レタッチもすごくしやすかったです。

IQ2シリーズでの撮影ですが、画素数が多い分ピントはシビアですよね。この時はIQ2のWi-Fi機能でiPadに画像を飛ばして、そちらで絵をチェックしました。こういった海辺では、砂や潮風などカメラやパソコンにはナーバスな状況なので、ワイヤレスでタブレットに画像を転送できて、それをある程度大きな画像で確認できるのは便利ですね。

あとスタジオでも何度か撮影しました。もともとIQシリーズは解像感が高くて精細なので、こういうノーマルなコンポジでも、服の質感や肌や髪のディテールも出てきて、素直な描写を感じられる写真になっています。

シンプルな絵柄の方が、機材の性能の差がわかりやすく出るのかもしれません。白の中の白、黒の中の黒い部分が良く粘るというか、グラデーションの中にある色の豊富さが素晴らしいです。




shuntaro氏。

今の時代、35ミリデジタル一眼レフカメラで、仕事も作品撮りもこなすという人が多いですが、中判デジタルを使う理由はずばり何でしょうか。

初めて使った時に、「絵の奥行き感が全然違う」と思いました。外国のフォトグラファーの作品だったり、4×5や8×10のフィルムで撮影された少し前の作品を見ると、「高密度な奥行き」を感じる写真があるんです。
この奥行き感が、35デジタルだと薄っぺらいというか、それが中判のカメラを使うと、撮った瞬間に違いが出るんです。

日本の写真は被写体に注目させることが主流で、その手前や奥の空間はあまり重視されていない気がします。特に仕事でライティングする場合は、表面的な写真になりがちですよね。写真の奥行きが広がりを意識した場合、このカメラなら濃密な絵を出してくれます。


HM:SHINYA KUMAZAKI(http://www.shinyakumazaki.com
ST:mayuco tomimoto
Model:Dasha Z.(axelle)

フィルム時代、雑誌や広告写真の世界では、プロは中判(645〜)カメラが主流でした。

そうですね。(プロが使う)デジタル一眼レフカメラは選択肢がほとんどないので、中判デジタルで自分の選択肢が増えると、フィルムサイズで感じていた違いよりも、今の35デジタルとデジタルバックの方が「全然違うな」という印象があります。

人間の眼って繊細だなと思いますね。上手く言えませんが、ちょっとした情報量の差、深みの差を、何かわからないけれど感じ取ってしまうんですよね。


HM:SHINYA KUMAZAKI(http://www.shinyakumazaki.com
ST:mayuco tomimoto
Model:Dasha Z.(axelle)

この「colours in white」(上写真)はかなり難しいことをしていますね(笑)。

白バックで服も白、肌もメイクさんに白く塗ってもらいました。カメラの性能がよくわかる写真ですね(笑)。

色域を限定した世界では、質感を出すのが難しそうです。

そうですね。35デジタルだと、洋服のディテールをここまで出すのは難しいかもしれませんね。



HM:北川香菜実
ST:Kumi Sano
Model:Eugenia Ksenofontova(d'Xim)

逆にこちらのシリーズは、かなり暗い感じで撮っています。ライトもストロボではなく、タングステンとLEDの2灯だけ。あと地明かりの蛍光灯を活かして撮影しています。めちゃめちゃ暗い状態です(笑)。

左サイドがLEDで、右サイドがタングステン。ヘアのフラワーアートは、スタジオ天井の蛍光灯の光を受けています。

シャッタースピードもかなり遅いのですが、三脚を使って、逆に少しブレ感が出ているのも面白いかなと思います。ここではAFは使わなくて、マニュアルでピントを合わせています。

ヘッドピースは、ヘアメイクのKANAMI KITAGAWAさんが作られたものを使用しています。

暗めのトーンですが、しっとりしていますね。

絞れないので、f5くらいに開けて撮っています。でもちょっとボケたりしても、ボケに粘りがあるので、ややボケた感じのところがキレイだったり...。35デジタルとかだと、粘りがあまりないので、ボケた部分は、ただボケただけになってしまうのかなと。



「銀色の宝石箱」
Architect:水谷意匠一級建築士事務所

空のグラデーションがキレイですね。建物はライトアップしているのですか。

そうですね。これは夕方の5時頃撮っています。これは、実は35デジタルでもおさえているのですが、まったくレベルが違う感じがしました。まずグラデーションの滑らかさが素晴らしいし、自然光とアンバーな照明だけですが、建物の素材がきっちり表現されていました。
この撮影条件だと、どこかでトーンジャンプしそうですが、かなり無茶なことをしても大丈夫そうです。




「Spontaneous - 自然発生的 -」(DIESEL ART GALLERY)
Architect:chop archi建築設計事務所

この時はシュナイダーの28mmレンズで撮影していますので、手前から切り取れました。しかもIQ280(8000万画素)をお借りしていたので、もう密度が半端なくすごかったです。たださすがに一発撮りではパンフォーカスにはなりませんでしたが(笑)。

不思議な空間ですね。ショールームですか。

これは、渋谷のDIESELの中のアートギャラリーです。建築家の大久保博夫さんによる一年間のインスタレーションで、DIESEL LIVINGの家具を配置して販売しています。手前は店舗なので洋服を売っています。

このレンズは凄いです。本当にゆがみが少なくて。
全然ヘンなゆがみが出ないですよ。35デジタルでも評判のよいレンズはあるんですが、さすがに収差がちょっと出るんです。でもこのシュナイダー(AF 28mm f/4.5 D Aspherical)は、ほとんど収差がなかった。
それだけ後処理にも時間をかけずにフィニッシュできるので、スピードアップも計れます。

35mmデジタル一眼レフカメラでも5000万画素クラスの製品が出ています。今回、様々なシチュエーションで、フェーズワンを使う中で、コストとパフォーマンスについてどう感じられましたか?

そうですね。このカメラで撮ると、特に後処理(レタッチ)の方向性が早く定まります。元から「良いデータ」で上がってくるので、そんなに大げさにいじったり、変な修正をすることがないんです。その分、結局はスピードアップが計れ、クオリティ含め、「良い写真」に仕上げられます。

撮るときは、35デジタルの方がもちろん機動力はあるんですけど、そこでじっくりちゃんと撮っておけば、ワークフロー的にはかなり楽になります。
デジタルは、へんな色で出てくると後処理が大変ですし、撮影時にキャプチャーした以上の質感は出せませんから。

フィルムで言うと、カラーネガみたいなものでしょうか。最大限いいカメラで、豊富な情報量を取り込んで置くことで、自分の意思に近い表現に持っていける。このレベルを知ってしまうと、もう後戻りできない感じです。

コストパフォーマンスで言うと、悪いとは思わないです。もちろん35からすると、何倍もするわけですが...。でも車を買い替えることを考えれば、カメラを買った方がいいですよ(笑)。仮にボディとレンズで600万円だとして、それを購入して仕事の質を上げて1200万円売り上げれば、元はとれますからね。若い人やスタジオを持っている人は、グループでの共同購入もありだと思います。

中判デジタルバックは、35mmカメラとはボディの感じとか、操作感が少し違いますが、ハード面での印象はどうですか。

慣れればグリップも持ちやすし、シャッターの「カシャン」、という感じもいいですね。ただ不安要素はAFだったんですが、今回新しくAFシステム(XFカメラシステム)が発表されましたよね。

合焦スピードが速く、暗い所でもAF精度が上がっているということで、かなり撮影時の操作性の向上が期待できますね。早く使ってみたいです。





メイキング


白系のメイクをベースに、白い衣装、白バックと白さの中の素材感の違いや色の濃淡を狙った。


北川香菜実さんが制作されたヘッドピースを付けたシリーズ。
右サイドのアイランプ、左からLED1灯、天井の蛍光灯と、かなり暗いシチュエーションで、動き(ブレ)を意識した作品。
photo:金子友美





PHASE ONE「XFカメラシステム」


新しいオートフォーカスプラットフォームを採用したPHASE ONE「XFカメラシステム」
問い合わせ先:株式会社DNPフォトイメージングジャパン
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