- 2015.08.03
Photographershuntaro
「デジタルカメラバックシステム」の最高峰であるフェーズワン。
そのフェーズワンやIQシリーズのユーザーであり、第一線で活躍中のフォトグラファー5名に焦点を当てた「フェーズワン5」がスタートする。
35ミリデジタル一眼レフカメラが高画素化、高感度化する中で、プロも35フルサイズのデジタルカメラを多用し、カメラの選択肢という点でのバラエティが、フィルム時代に比べなくなっている。
依然として35サイズとミディアムフォーマットでは、センサーサイズやレンズの描写力の点で開きがあるが、その魅力を多くの人に知ってもらいたいと思い企画した。
第1回目は、今、若手で期待されているフォトグラファー shuntaroさん。
フォトグラファーであり、映像作家でもあり、自らレタッチもこなすshuntaroさんは、仕事でも作品撮りでも精力的に中判デジタルを使用している。
今回、最新型 IQ250(5000万画素)などをテストシュートして頂き、フェーズワン・中判デジタルの魅力を語ってもらった。
HM:Mai Ozeki
Model:Melisse(INFRAMINCE)
企画をスタートするにあたり、人物や建築物、ロケや屋内など、様々なシチュエーションでフェーズワンIQシリーズを使って頂きました。
はい。モデルを使っての作品撮りと、仕事では建築、インテリアを撮影しました。
この海辺の作品は、すごくシビアな条件での撮影でした。真冬のもう雨が降るギリギリ直前みたいな状況です。モデル手前のシャドウ部から、ボケていく遠景までのトーンが、おそらく35デジタルだとこんなにキレイに出ないと思います。「さすがフェーズだな」と思いました。
35デジタルでは、フィルムのようななだらかなグラデーションって、あまり手に入らないのですが、このカメラなら撮った時に、すでにそういう空気感を内包しているようなグラデーションなので、レタッチもすごくしやすかったです。
IQ2シリーズでの撮影ですが、画素数が多い分ピントはシビアですよね。この時はIQ2のWi-Fi機能でiPadに画像を飛ばして、そちらで絵をチェックしました。こういった海辺では、砂や潮風などカメラやパソコンにはナーバスな状況なので、ワイヤレスでタブレットに画像を転送できて、それをある程度大きな画像で確認できるのは便利ですね。
あとスタジオでも何度か撮影しました。もともとIQシリーズは解像感が高くて精細なので、こういうノーマルなコンポジでも、服の質感や肌や髪のディテールも出てきて、素直な描写を感じられる写真になっています。
シンプルな絵柄の方が、機材の性能の差がわかりやすく出るのかもしれません。白の中の白、黒の中の黒い部分が良く粘るというか、グラデーションの中にある色の豊富さが素晴らしいです。
shuntaro氏。
今の時代、35ミリデジタル一眼レフカメラで、仕事も作品撮りもこなすという人が多いですが、中判デジタルを使う理由はずばり何でしょうか。
初めて使った時に、「絵の奥行き感が全然違う」と思いました。外国のフォトグラファーの作品だったり、4×5や8×10のフィルムで撮影された少し前の作品を見ると、「高密度な奥行き」を感じる写真があるんです。
この奥行き感が、35デジタルだと薄っぺらいというか、それが中判のカメラを使うと、撮った瞬間に違いが出るんです。
日本の写真は被写体に注目させることが主流で、その手前や奥の空間はあまり重視されていない気がします。特に仕事でライティングする場合は、表面的な写真になりがちですよね。写真の奥行きが広がりを意識した場合、このカメラなら濃密な絵を出してくれます。
HM:SHINYA KUMAZAKI(http://www.shinyakumazaki.com)
ST:mayuco tomimoto
Model:Dasha Z.(axelle)
フィルム時代、雑誌や広告写真の世界では、プロは中判(645〜)カメラが主流でした。
そうですね。(プロが使う)デジタル一眼レフカメラは選択肢がほとんどないので、中判デジタルで自分の選択肢が増えると、フィルムサイズで感じていた違いよりも、今の35デジタルとデジタルバックの方が「全然違うな」という印象があります。
人間の眼って繊細だなと思いますね。上手く言えませんが、ちょっとした情報量の差、深みの差を、何かわからないけれど感じ取ってしまうんですよね。
HM:SHINYA KUMAZAKI(http://www.shinyakumazaki.com)
ST:mayuco tomimoto
Model:Dasha Z.(axelle)
この「colours in white」(上写真)はかなり難しいことをしていますね(笑)。
白バックで服も白、肌もメイクさんに白く塗ってもらいました。カメラの性能がよくわかる写真ですね(笑)。
色域を限定した世界では、質感を出すのが難しそうです。
そうですね。35デジタルだと、洋服のディテールをここまで出すのは難しいかもしれませんね。
HM:北川香菜実
ST:Kumi Sano
Model:Eugenia Ksenofontova(d'Xim)
逆にこちらのシリーズは、かなり暗い感じで撮っています。ライトもストロボではなく、タングステンとLEDの2灯だけ。あと地明かりの蛍光灯を活かして撮影しています。めちゃめちゃ暗い状態です(笑)。
左サイドがLEDで、右サイドがタングステン。ヘアのフラワーアートは、スタジオ天井の蛍光灯の光を受けています。
シャッタースピードもかなり遅いのですが、三脚を使って、逆に少しブレ感が出ているのも面白いかなと思います。ここではAFは使わなくて、マニュアルでピントを合わせています。
ヘッドピースは、ヘアメイクのKANAMI KITAGAWAさんが作られたものを使用しています。
暗めのトーンですが、しっとりしていますね。
絞れないので、f5くらいに開けて撮っています。でもちょっとボケたりしても、ボケに粘りがあるので、ややボケた感じのところがキレイだったり...。35デジタルとかだと、粘りがあまりないので、ボケた部分は、ただボケただけになってしまうのかなと。
「銀色の宝石箱」
Architect:水谷意匠一級建築士事務所
空のグラデーションがキレイですね。建物はライトアップしているのですか。
そうですね。これは夕方の5時頃撮っています。これは、実は35デジタルでもおさえているのですが、まったくレベルが違う感じがしました。まずグラデーションの滑らかさが素晴らしいし、自然光とアンバーな照明だけですが、建物の素材がきっちり表現されていました。
この撮影条件だと、どこかでトーンジャンプしそうですが、かなり無茶なことをしても大丈夫そうです。
「Spontaneous - 自然発生的 -」(DIESEL ART GALLERY)
Architect:chop archi建築設計事務所
この時はシュナイダーの28mmレンズで撮影していますので、手前から切り取れました。しかもIQ280(8000万画素)をお借りしていたので、もう密度が半端なくすごかったです。たださすがに一発撮りではパンフォーカスにはなりませんでしたが(笑)。
不思議な空間ですね。ショールームですか。
これは、渋谷のDIESELの中のアートギャラリーです。建築家の大久保博夫さんによる一年間のインスタレーションで、DIESEL LIVINGの家具を配置して販売しています。手前は店舗なので洋服を売っています。
このレンズは凄いです。本当にゆがみが少なくて。
全然ヘンなゆがみが出ないですよ。35デジタルでも評判のよいレンズはあるんですが、さすがに収差がちょっと出るんです。でもこのシュナイダー(AF 28mm f/4.5 D Aspherical)は、ほとんど収差がなかった。
それだけ後処理にも時間をかけずにフィニッシュできるので、スピードアップも計れます。
35mmデジタル一眼レフカメラでも5000万画素クラスの製品が出ています。今回、様々なシチュエーションで、フェーズワンを使う中で、コストとパフォーマンスについてどう感じられましたか?
そうですね。このカメラで撮ると、特に後処理(レタッチ)の方向性が早く定まります。元から「良いデータ」で上がってくるので、そんなに大げさにいじったり、変な修正をすることがないんです。その分、結局はスピードアップが計れ、クオリティ含め、「良い写真」に仕上げられます。
撮るときは、35デジタルの方がもちろん機動力はあるんですけど、そこでじっくりちゃんと撮っておけば、ワークフロー的にはかなり楽になります。
デジタルは、へんな色で出てくると後処理が大変ですし、撮影時にキャプチャーした以上の質感は出せませんから。
フィルムで言うと、カラーネガみたいなものでしょうか。最大限いいカメラで、豊富な情報量を取り込んで置くことで、自分の意思に近い表現に持っていける。このレベルを知ってしまうと、もう後戻りできない感じです。
コストパフォーマンスで言うと、悪いとは思わないです。もちろん35からすると、何倍もするわけですが...。でも車を買い替えることを考えれば、カメラを買った方がいいですよ(笑)。仮にボディとレンズで600万円だとして、それを購入して仕事の質を上げて1200万円売り上げれば、元はとれますからね。若い人やスタジオを持っている人は、グループでの共同購入もありだと思います。
中判デジタルバックは、35mmカメラとはボディの感じとか、操作感が少し違いますが、ハード面での印象はどうですか。
慣れればグリップも持ちやすし、シャッターの「カシャン」、という感じもいいですね。ただ不安要素はAFだったんですが、今回新しくAFシステム(XFカメラシステム)が発表されましたよね。
合焦スピードが速く、暗い所でもAF精度が上がっているということで、かなり撮影時の操作性の向上が期待できますね。早く使ってみたいです。
メイキング
白系のメイクをベースに、白い衣装、白バックと白さの中の素材感の違いや色の濃淡を狙った。
北川香菜実さんが制作されたヘッドピースを付けたシリーズ。
右サイドのアイランプ、左からLED1灯、天井の蛍光灯と、かなり暗いシチュエーションで、動き(ブレ)を意識した作品。
photo:金子友美
PHASE ONE「XFカメラシステム」
新しいオートフォーカスプラットフォームを採用したPHASE ONE「XFカメラシステム」
問い合わせ先:株式会社DNPフォトイメージングジャパン
http://www.dnpphoto.jp/products/phaseone/
shuntaro Photographer
フォトグラファー/映像作家
東京生まれ、東京育ち。京都工芸繊維大学で、建築・デザインを学び、卒業後、都内広告系制作会社を経て、フリーランス。
その後、イギリスのUniversity for the Creative Arts で写真の修士号を取得、現在はイギリスと日本でフリーランスのフォトグラファーとして活動しながら、アートとしての写真・映像制作を行なう。
ポートレート、ファッション、建築に主に取り組み、その中でも、日本文化と現在の西洋主導のビジュアルの融合、デジタルとリアルの中間にあるもの、そして人間や社会においてのアイデンティティーの表出に興味を持って、制作を行なっている。
http://www.shuntaro.co/
- 2018.06.29 「SHOOTING PHOTOGRAPHER + RETOUCHER FILE」連動企画 レタッチ、CG表現の現在とこれから
- 2018.06.25 「脳よだれ展2018」制作メンバー座談会
- 2018.04.18Photographer / Image Director shuntaro
- 2018.03.17Photographer 宇佐美雅浩 「Manda-la in Cyprus」
- 2018.03.16 Art Potluck(アートポトラック)緊急座談会
- 2018.03.11Photographer 「The Professional Voice」vol.9 井上浩輝
- 2018.02.18Timelapse / Hyperlapse Photographer 「The Professional Voice」vol.8 清水大輔
- 2018.01.24Photographer 皆川 聡
- 2017.12.26Photographer 「The Professional Voice」vol.7 小川晃代
- 2017.11.27Photographer 「The Professional Voice」vol.6 土屋勝義
- 2017.11.10Photographer 星野耕作
- 2017.11.07Photographer 「The Professional Voice」vol.5 島田敏次
- 2017.10.13Photographer 瀧本幹也
- 2017.09.22Photographer 「The Professional Voice」vol.4 桃井一至
- 2017.09.15Photographer 「The Professional Voice」vol.3 勅使河原城一
- 2017.09.11Photographer 「The Professional Voice」vol.2 安澤剛直
- 2017.08.28Photographer 「The Professional Voice」vol.1 池之平昌信
- 2017.08.10Photographer 酒井貢
- 2017.07.27Photographer 中野敬久
- 2017.06.25Photographer 橋本英之
- 2017.03.16Photographer 奥 彩花
- 2017.02.17 EXCERIA Ambassador Member's Talk
- 2017.01.25写真家/ビジュアルアーティスト Nozomi Teranishi
- 2017.01.17Photographer 富取正明 _
- 2016.12.26Photographer 富取正明
- 2016.10.31メイキング 堀内誠 × 佐藤豪
- 2016.10.15特集 堀内誠 × 佐藤豪
- 2016.07.04映像作家 柘植泰人
- 2016.04.15Photographer 舞山秀一
- 2016.03.14Photographer 伊藤彰紀
- 2016.02.19Photographer 青木倫紀
- 2016.01.29Photographer 笹口悦民
- 2015.12.16Photographer 大浦タケシ
- 2015.11.19Photographer 山本彩乃
- 2015.11.06Photographer ND CHOW
- 2015.10.14Photographer Fumito Shibasaki
- 2015.09.30Photographer 谷口 京
- 2015.09.13Photographer 角田みどり
- 2015.08.03Photographer shuntaro
- 2015.07.22Photographer Hasselblad × 西村一光
- 2015.05.14Photographer 上田義彦 / A Life with Camera
- 2015.03.20 LUX STYLING SERIES
- 2015.03.01Photographer 広川泰士
- 2015.02.26Photographer 宇佐美雅浩
- 2015.01.14Photographer HAYATO
- 2014.09.18Photographer 三戸建秀
- 2014.07.24 iino mediapro「Shooting in English」BOOK
- 2014.06.09Photographer 佐藤倫子
- 2014.05.27 映像作品「Natto Beauty × cutters」座談会
- 2014.03.25Photographer 魚住誠一
- 2014.03.12Photographer 近藤泰夫
- 2014.03.10Photographer 安澤剛直
- 2014.02.26Photographer 薄井一議
- 2014.02.05Event 『INFINITY VS. ~僕らとたった一人のモナ~』展
- 2014.01.30Photographer 太田好治
- 2014.01.16Photographer 小林伸幸
- 2014.01.09Photographer 蓮井幹生
- 2013.12.03photographer 栗林成城
- 2013.11.15Photographer 八木 規仁
- 2013.10.21photographer 秦 義之
- 2013.09.18Photographer 青木健二
- 2013.09.01Photographer 伊藤 之一
- 2013.08.30Photographer 伊藤 之一
- 2013.08.27Photographer 薄井一議
- 2013.08.09Photographer 伊藤 之一
- 2013.08.07 DZ-TOP
- 2013.06.28代表取締役/マネージャー・プロデューサー インタースタジオ 園江 淳
- 2013.06.20Photographer 渡邉 肇
- 2013.05.28 10TH ANNIVERSARY SPECIAL EXHIBITION「VISION」
- 2013.05.21Photographer 太田好治
- 2013.05.08Photographer 舞山 秀一
- 2013.05.07Photographer 舞山秀一
- 2013.05.01株式会社ピクトリコ 清藤禎樹
- 2013.03.27Photographer 大和田良
- 2013.02.08Photographer TAKAKI_KUMADA
- 2012.12.13photographer 鶴田直樹
- 2012.10.23 株式会社テール 千々松 政昭
- 2012.10.16photographer Alejandro Chaskielberg
- 2012.10.09photographer ND CHOW(アンディ・チャオ)
- 2012.07.08株式会社ライトアップ 横川哲哉
- 2012.06.22アートディレクター 梅沢篤
- 2012.06.06アートディレクター 千原徹也
- 2012.05.10特集 JAPANESE HAIR BEAUTY SHOOTING
- 2012.03.19Photographer 勅使河原城一
- 2012.01.10photographer 伊藤之一
- 2011.12.22DNPフォトルシオ 川口和之
- 2011.12.14特集 3D Hair Beauty Shooting
- 2011.12.05Photographer MICHAEL THOMPSON
- 2011.10.21特集 Love4 Skin Beauty
- 2011.10.03Photographer 宮地岩根
- 2011.09.20株式会社館岡事務所 佐藤佐江子
- 2011.09.07Creator Weiden+Kennedy Tokyo & DYSK
- 2011.08.26デジタルカメラマガジン編集長 川上義哉
- 2011.08.09イイノ・メディアプロ 増田昌大
- 2011.07.13photographer 上田義彦
- 2011.07.11株式会社スタジオD21 中田輝昭
- 2011.06.21Photographer 佐分利尚規
- 2011.06.21Photographer 富田眞光
-
「SHOOTING PHOTOGRAPHER + RETOUCHER FILE」連動企画 レタッチ、CG表現の現在とこれからビジュアル・コミュニケーションがどうのようになっていくのか、レタッチ、CG表現の「現状と未来」を語ってもらった。
-
テーマ作りから具体的なビジュアル制作の苦労と面白さ、見る人の脳内にその欲求を掻き立てる「脳よだれ展2018」の見どころを訊いた。
-
Photographer / Image Director
shuntaro「ドローン・ライティング」は 選択肢の一つとして当たり前になっていくと思う