ISSPのサマースクールは応募制で、事前にポートフォリオ、CVなどを提出し、選ばれた人たちのみ参加することができる。6つのワークショップの中から一つ選択し、期間中は住居と食事が提供され、インテンシブに作業できる。

参加費は750ユーロ、その他、飛行機代などが実費でかかるが、東川町(北海道)が派遣員を募集しているため、選ばれれば東川町派遣員として参加することができ、参加費、交通費を負担してくれる。

ワークショップの講師は世界中から様々な職種の人(写真家、キュレーター、製本家、グラフィックデザイナーなど)が選ばれる。参加者もヨーロッパ、南米、アジア、各国から多種多様な人たちが参加している。


ワークショップ中の作品ディスカッション。

私はレジデンスコースを選択した。レジデンスコースでは、未完成のプロジェクトを持参し、サマースクール中は基本的に自分のプロジェクトの作業を自由にできる。

このコースには講師が3人(写真家、グラッフィクデザイナー)、参加者は13名で構成。もちろん期間中に各自のプロジェクトを完成させることは到底無理だが、講師から今後に向けてのアドバイスを受けたり、クラスメイトとブックを見せ合い、ディスカッションなどを行なった。


講師陣によるトークショー。

日中は各々作業をし、夜は講師によるアーティストトークが開催され、参加者も希望すれば自分の作品をプレゼンテーションすることができる。また、ポートフォリオレビューの日もあり、キュレーターやラトビア写真美術館の館長に自分の作品を見てもらうことができる。

講師もポートフォリオレビューに参加するため、自分が受けていないワークショップの講師にも写真を見てもらえる、とてもいい機会だ。また、ゲストアーティストとして日本でも有名なエストニア出身の写真家、アレキサンダー・グロンスキー氏もポートフォリオレビューに参加した(ちなみに私は彼にポートフォリオを見てもらったが、とても気さくな温かい人だった)。


屋外でのポートフォリオレビューの様子。
自分が受けていないコースの講師にもアドバイスが受けられる。


レジデンスコースの講師陣。

さらに、最終日にはクルディーガ内でISSP final Exhibitionが開催され、グループ展に参加することができる。ワークショップによって展示内容はさまざまだ。レジデンスコースは任意参加だったため、私を含めて8名が参加した。キュレーターワークショップを受けている参加者が展示のキュレーションをするという、とてもユニークな内容だ。


final Exhibitionの準備風景。

海外のインターナショナルサマースクールのため、もちろん英語が必須だ。拠点としているベルリンではドイツ語で日常会話をしているため(「Excuse me」という単語すら忘れていた)英語だけの環境に最初の数日間は正直苦労したが、講師や参加者の中でドイツ語が話せる人や、日本人の参加者がいたため、数日間は彼らの力を借りながら、プレゼンテーションなどをした。環境や英語に慣れてくると、クラスメイトと楽しく会話ができるようになり、友達と呼べる人もたくさんできた。


中島さんの展示風景。自然の風景写真を天井から吊り下げた。


日本で撮影した自然風景の写真を背景に、ベルリンで撮影したポートレートを展示した。

私はいま「ドイツと日本」をテーマに自分のプロジェクトを制作している。ISSPを通して、今後さらにいい作品、いい展示ができることを実感した。

日本で生活していた時は、日本大学芸術学部 写真学科で写真を学んだが、日本の写真教育はコンサバティブな傾向がある、とISSPを通して感じた。もちろんファインプリントや写真史など、基本はとても大切だし、そこから学んだことは多い。しかし、ISSPの参加者の作品は、日本では見たことがないような作品を制作している人が多かった。


ISSPのJulija氏と(左)。レジデンスコースのメンバー。


夜はナイトクラブになることも。世界中の参加者と交流できることもメリット。

アーカイブを利用し作品を制作している人や、動画作品(動画を撮影、制作したのではなく、すでにある動画を使って作品を制作している)、など多種多様な"写真""作品"を制作していた。日本で学んだコンサバティブな写真とは全く違い、彼らはとてもコンテンポラリーな発想と考えて作品を制作している。彼らからもらった意見、講師のアドバイスは、大きな発見と今後に繋がる大切なヒントとなり、その成果をグループ展で展示した。

たった9日間のサマースクールでも、得たものはとても多い。海外で写真を学びたい人にとって、このサマースクールはとてもいい機会だと思う。

ISSP
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